「夏の昼の姉」
夏休み某日。
俺ははると協力して夏休みの宿題を効率的に進める為にはるの家に来ていた。
「そういや桜ちゃんは?」
「と、友達の家に遊びに行ってる。」
「そっか……えっと……「いんを踏む」の「いん」ってどんな漢字だっけ……」
「音って字の右に「委員会」とか「役員」の「員」で「韻」だよ。」
「そうだった。ありがとな。」
はるは俺の分からない所を教えてくれるけど……正直教わっているのは基本的に俺の方だ……俺が楽したいが為にはるの手を借りてると思われたらどうしよう……。
「なぁはる、後でコンビニにアイス買いに行かね?俺奢るよ。」
「い、いいよ。どうして急にそんな事……?」
「だって、協力して夏休みの宿題を効率的に進めていこうって話だったのに、俺がはるに教えてもらってばかりだし……お礼ぐらいしなくちゃだろ?」
「そっか……なら、お、お言葉に甘え、ます……。」
「おう。」
それから俺とはるは昼の3時頃まで宿題を進め、3時に近くのコンビニに行って2人分のアイスを買いに行き、近くの公園でアイスを食べる事にした。
「安いアイスで良かったのか?」
「さ、流石に遠慮する、でしょ……。」
「別に高いやつでも良かったのに。」
「ううん、高いやつよりも慣れ親しんだアイスの方が好きというか……。」
「それは同意だわ。」
はるに奢ったのはテラビッグコーンのキャラメルバニラ、俺が買ったのはチョコモナカデラックスで、夏の暑さでアイスの部分が僅かに溶けかけてるのが舌触りが良くて最高だ。
「あ、おねーちゃん!」
俺達がアイスを食べ終えたタイミングで、公園で友達と遊んでた桜ちゃんが俺達の存在に気づいて友達を連れて俺達の目の前に駆け寄ってくる。
こっちも桜ちゃんが声をかけてきてはじめてその存在に気づいたのだけど……桜ちゃんと女の子が2人、男の子が1人の計4人だ。
「あ、桜……。」
「桜ちゃんこの公園で遊んでたのか。」
「えー!?さくらのねーちゃん彼氏いんのー!?」
「そーだよ!!ラブラブだもん!!」
「うそー!!大人だねー!!」
突如友達に対して堂々と宣言する桜と、それに盛り上がる桜の友達、そしてそれを否定しようとするもちびっ子4人で盛り上がってる所に上手く入れずにいるはる。
「いや、ちが、あの、この人は……」
「皆、俺ははるの彼氏じゃないぞ。」
「えー!?違うのー!?」
「違うのー!?」
いや、友達3人はともかく桜ちゃんも驚くのか……何故そんな勘違いを……まさか、この前はるが風邪引いた時に俺が看病に行ったからなのか……?
「ち、違うよ……あお君はただの友達だもん。」
「なーんだ。」
「じゃーさー!!これから付き合うって可能性はあるのー!?」
「えぇ?」
「つきっ……!?」
ちびっ子達は食い下がる事無く、今度は付き合う可能性の話を持ち出してきた……その質問に俺はもちろんはるも戸惑ってる様子だ。
俺はなんとか適当な答えを言おうとする。
「うーん、ど、どうかなー?まだ分からないなー!ね?はる?」
「う、うん、そそそそうだねー。」
「結婚はー!?」
さらにちびっ子が追い討ちをかける。
「けっ!?」
「(はるの声にならない声)」
そこではるが限界だったらしく、顔を真っ赤にして恥ずか死してしまった……は、はるーっ!!
「桜のおねーちゃんどーしたの?」
「たまにこうなるんだよ。」
「じゃあなちびっ子達!」
俺はちびっ子達に別れを告げ、急いではるを背負ってはるの家へと戻る事にした……
◇
はるの部屋に戻ってきた俺へはるをベッドに寝かせ、クーラーをつける。
これで目覚めてくれるといいんだけど……。
ガチャッ
「ん?」
トッ、トッ、トッ、トッ、……
その時、玄関の方から物音がしたので、俺は桜ちゃんが帰ってきたのか?と思ったけど、それからこっちに向かってくる足音は子供にしては凄く落ち着いてるというか……もしかしてゆかりおばさんか?
そしてその足音の主が部屋の扉を開けて現れた。
「……。」
「……。」
俺も相手も見知らぬ相手が現れて一瞬固まってしまったが……お、女の人だ……見た目はなんというか、ゆかりおばさんを20代後半ぐらいの見た目にした感じの……。
「も、もしかして……はるちゃんのカレシ!?」
「え?」
「そっかー、はるちゃんにもカレシが……お姉ちゃん嬉しいような寂しいような……あ、私ははるちゃんの従姉妹の立花夏芽と言います。よろしく!」
「は、はい……俺は大堂青司、です。はるの友達です。」
「友達?カレシじゃなくて?」
「友達、です。」
「そっかー。違うのか。所ではるちゃんはなんで寝てるの?もしかしてはるちゃんの寝込みを襲おうと……そんなのお姉ちゃんが許しませんよ!覚悟ー!」
「いや違くて!」
◇
焦る夏芽さんに、先程かくかくしかじかあった事を俺は説明した。
「あー、はるちゃん昔っからそういう所あってさー。」
「昔って、あの、はるは小学生の頃はなんというか、天真爛漫というか……そういう性格だったんですけど、その時から?」
「うん。皆には隠し通してみたいだ けどね。」
そうか、はるは昔からこうなのか……ただ性格というか、趣向が変わっただけで……。
「はるちゃんのお姉ちゃんとして昔からはるちゃんを見てきたけど……はるちゃんは良い子だよ。聞き分けが良いし、気遣いもできる。そんなはるちゃんだから友達の輪の中でも学校でも皆のまとめ役を買って出ようとする子だったんだ。」
「なるほど……。」
この人は従姉妹ってだけあってはるとは交流が深いはず……だからの事をよく分かってるんだろうな……。
「ちょっと色々あって今は違うみたいだけどね。でもはるちゃんは昔から変わってないと私は思う……あ、これ実家で取れたみかん。これお裾分けしに来たんだけど。君も食べていいよ。私公認のはるちゃんの友達だからね!」
「あ、ありがとうございます……。」
「私公認のはるちゃんの友達だから、はるちゃんの事よろしくね。身体が弱くて、心も見栄を張ってるだけで本当は弱い……そんなはるちゃんを支えてあげてね。守らなかったら死刑!」
「し、死刑!?」
凄いマイペースな人だけど、良い人である事は分かった。
「じゃあね。機会があったらまた会おう!結婚式とか。」
「けっ……!?」
「冗談冗談!じゃあまた!」
夏芽さんはそう言ってはるが目覚める前に帰っていった。
俺がはるを支える、か……
「あ、あくまで友達として、な……。」
「ん……あお君?」
「え!?あ、いや、なんでもないぞ!?」
「え……何の事?」
「いや、その……」
夏芽さんが出ていった後ではるは目覚め、その時の時間がもう17時だったので俺ははるの家を後にした。
夏だから夕方でも暑い……クーラーをガンガンに効かせたマイルームが待ち遠しいな……。




