「夏、プール、水着」
夏休み某日。
俺、はる、中守、小倉、久瀬、そして小倉に誘われメンバーに追加された吉沢さん、以上の6名はこの日市民プールに来ていた。
「ひゅ〜!プール開きだね!」
夏休みになったのでようやく羽を伸ばせると、一学期末の間停学していた久瀬はとても嬉しそうだ。
そんな久瀬はピンク色という派手な色の水着を着てらっしゃる……流石ギャル。
「俺このプール、中学の時友達とよく来てたんだよ。オススメはやっぱりウォータースライダーかな。」
「わたくしは男1人なのですぞ?男1人で滑っても楽しくないでござる。」
「まーまーそう言うなって。」
「小倉氏は彼女ができたからか随分と余裕の態度でございまするねー!所詮わたくしは非モテでござるよ!」
中守は小倉に妬みの感情を隠す事無くぶつけているが、そんな中守に久瀬が近づき……
ぷにぷにぷにぷに
「うわー、中守くん着痩せするタイプなんだ。お腹ぷにぷにじゃん笑」
「や、やめるでござる……!」
「すげーぷにぷにしてておもしろ〜。」
久瀬は中守の腹を楽しそうに指でつっつきだした。
まぁ誰にも興味を持たれないよりはそういういじられ方をされる方がマシだと思うぞ中守よ……。
「お、小倉君。私の水着、どうかな?お店で1時間ぐらいかけて選んだ水着なんだよ?」
こっち(小倉と吉沢さん)では吉沢さんが照れくさそうにしつつも自分の水着姿を小倉にアピールしており、小倉は
「めっちゃ似合ってるよ。凄くかわいい!」
と、キザな態度で吉沢さんを褒め(多分素でこれなんだろうな、ナチュラルボーンイケメンめ)、吉沢さんは嬉しそうな態度を示す。
「〜〜っ!ありがとう!」
「うん。大堂、お前も立花さんの水着姿褒めてやれよ。」
「は、はぁ?」
小倉に突然指摘され、はっとした俺は隣に立っているはるに目をやる。
いやなんて言うか、はるの水着は可愛いんだ。可愛いんだけど、水着という装備も可愛いんだけど……はる本体がなんというかその……セクシー過ぎる……!
「っ……!」
「ど、どうしたのあお君?」
「いや、それは……」
「む、無理に褒めようとしなくて……良いんだよ?」
はるは不安げな様子でそう言うが……違う、そうじゃない!くそ、俺が童貞なばかりに……勇気を出すんだ俺!ただの水着だろ!
俺は自分にそう言い聞かせてなんとかはるの方を振り向き、そして意を決してはるの水着姿を褒めようとする。
「はる、その……水着、似合ってる、ぞ……。」
「ほ、本当?良かった……。」
「あ……あぁ。凄く似合ってる!」
「えへへ……。」
俺はなんとかはるの水着姿を褒める事ができた。
その様子を見てニヤニヤしてる小倉……やめろそんな顔するんじゃねぇ!
「じゃあまず小倉くんイチオシのウォータースライダー行こう!」
「うん!」
「う、うん!」
そうして俺達はウォータースライダーへと向かった。
やっぱり夏休みってだけあって人は多いな……色んな人がいる……大人のお姉さんとか……っていかんいかん!ちらちら見てたら変態だと思われるし、何より俺には好きな人が……!
そんな事を考えつつ階段を登っていき、ようやく俺達は1番上にたどり着いた。
「お2人はカップルさんですか?」
「は、はい!」
「そうです。」
「ではご一緒に滑られますね。彼氏さんが彼女さんを支えてあげてください!」
プールの職員さんとそうやりとりをして、小倉の前に吉沢さんが座る形で2人は滑る準備をする。
「なんか恥ずかしいね。」
「そう?でも危ないから俺が掴んでおくよ。」
「ゔ……もっと恥ずかしい。」
「ではいってらっしゃーい!」
小倉と吉沢さんはそんなあまーいやりとりをしつつ滑る準備を整え、そして職員さんの合図でウォータースライダーを滑り落ちていく。
「うわぁぁぁぁぁ__」
「きゃぁぁぁぁぁ__」
小倉と吉沢さんの楽しそうな叫びが遠ざかっていく。
そして次は中守の番、その次が久瀬の版、その次がはるの番、そして最後に俺の番、って事だと俺は思ってたのだけど……
「お2人はカップルさんですか?」
「いえ、1人でござる。」
「そんな事言うなし〜!せっかくなんだから2人で滑ろうよ!楽しそうだし!」
「は、はぁ?いや、そんな付き合ってもない男女がウォータースライダーで一緒に滑るなんて認められないでござるよ!年頃の女の子が軽々と気のない男にそんな事言わないで欲しいでござる!勘違いしたらどうす__」
◇
「うっひょぉぉぉぉぉ__」
「ひぃぃぃぃぃ__」
なんやかんやあって中守は久瀬と共に滑り降りていった。
そんで次ははるの番か。
もしも俺がはるの彼氏だったら、一緒に滑ってたりしたのかな__
「この人っ、か……彼氏、です!」
「は?」
「ではご一緒に滑りますね!」
なんかはるが唐突に俺の事を彼氏だと言い出したぞ!?
俺は違うと言おうとしたが、なんかそういう流れになってるし……仕方ないので俺は自分が先に座り、はるを目の前に座らせた。
ど、どうしてこんな事に……!
「は、はる……良いのか?俺なんかと……?」
「付き合って、なくても……一緒に滑っていい……久瀬さんが、そうやってたでしょ?」
「あ、あれはギャル特有の距離感バグってるやつというか……。」
「ではいってらっしゃーい!」
俺が困惑してるのをよそに職員さんは俺達の背中を押し、俺達はウォータースライダーを滑り降りていく。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
「ゔ……あ"……い"……!」
なんか普段大人しいはるの方が叫んでて、俺の方が静かになってるのだが……俺、ウォータースライダーとか初めてで凄い勢いあって叫びたい気分なんだけど、逆に声が出ないというか……どういう状況だこれ?
そう考えている内に俺とはるは共に下のプールへとたどり着き、激しい水しぶきをあげて俺達はプールに着水する。
ザバーン!
「あぁ〜、ウォータースライダーってこんな感じなのか……まぁ悪くないかもな。はる?」
俺がはるの方を見ると、はるは水面から顔だけ出して、身体はまるで水中から出したくないかのようにしている。
一体どうし……(何かを閃く音)……はっ!?ま、ま、まさかそんな事がリアルに有り得てしまうのか!?いや、そんなまさか……!
「はる、一体どうしたんだ……?」
「……うぅ……水着が、取れちゃった……!」
ぽ、ポロリかよ〜っ!