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17話「俺たちの夏はこれからだ」

6月下旬。

夏休みを目前にした学生達に立ちはだかる一学期最後の関門と言えば……そうだね、期末テストだね。


「べ、勉強を教えて欲しい……?」


「あぁ。期末に備えてな。」


「い、良いよ。私で良ければ……。」


俺ははるに期末テストに向けての勉強を教えてくれないかと申し出るが、それをはるは快く受け入れてくれた。


それから期末テストまで、俺とはるは放課後5時まで学校に残り2人で勉強をする事にしたのだった。


「えっと……律令ができたのは何年だっけな……。」


「ヒントは、教科書の22ページに乗ってるよ。」


「ありがとな……22ページね……って、答えがまんま乗ってるじゃねーか……。」


「ご、ごめん……人に教えるの苦手で……。」


「い、いいよいいよ。」


何故俺ははるに教えを乞うたのか、それは中間テストの成績が俺よりもはるの方が圧倒的に良かったからだ。

いや、俺より良かったどころかクラス全体で見ても高い方だった。


「ごめん、せっかくあお君が教えてくれないかってお願いしてきたのに……。」


「いやいや、そのお願いする立場であんま偉い事言えないよ。」


「うん……私、教えるの頑張る!」


はるはそう言うと真剣な眼差しで俺を見つめてくる。

やる気に満ちたかわい……ゲフンゲフン、真剣な顔だ。


「じゃあ、頑張ってくれるとありがたい、かな。」


「う、うん!」


「なら早速……風土記が作られたのは……」


「ヒントは、大隈国が誕生のと同じ年だよ。」


「そこかー……えっとー……」


はるとの勉強は楽しかった。

何が1番良いかって言ったら……そりゃあ好きな女子と一緒に放課後にいられる事だよな、なんつってムフフ。


「はるは頭いいな。俺なんか推し活に夢中で勉強が疎かになっちゃってるしさ……。」


「そうなんだ……私は何かを頑張る時は、目標を作ってるんだ。このテストでいい点取ったらあのゲームを買おう、とかね。中間テストの時は自分へのご褒美として好きなアニメのフィギュアを買ったの。」


「なるほど……それ良いかもな。なら俺は……期末の五教科のテストで80点以上を2つ取ったら来月発売する仮面ファイターの最終フォームの変身アイテム買うぞ!」


「うん、いいねそれ。」


俺ははるからやる気の出し方を教えてもらい、目標を作る事で自分の尻に火をつけた。

それから期末テストまでの2週間、はると共に勉強を頑張り……いよいよ期末テストを前日に控えた7月上旬。


「大堂氏。調子はどうでござるか?」


「なんか今回はいける気がするんだよな。はるに勉強教えてもらったし。」


「良いじゃん、教えてくれる人がいて。」


中守、小倉とそう話す俺だったが、そこに1人の女子が現れる。


「小倉くん。昨日お父さんがお店の新しいメニュー発案したから、ウチに来て試食してくれないかな。」


「うん。楽しみだな。」


その女子……吉沢さんと楽しそうに話をする小倉。

もしかして、文化祭を経ていい感じの関係になったとかだろうか……?


「小倉氏、彼女ができたのでござるね。おめでたいでござるな。」


「うん。ありがとう。」


「え、え、彼女とか、堂々と言われると照れると言うか……あへへ」


見せつけてくれるねぇ、リア充め。

文化祭を経て交際を始めるとか、ばりばり陽キャじゃねぇか……。


「ていうか、付き合ってすぐに自分の家に呼ぶとか大胆だな。」


「あ、それは、ちょっと恥ずかしいけど……もうママとパパは認めてくれてるし……ね。」


「おい大堂、吉沢さんを照れさせるなよ。」


「わ、悪い悪い……。」


こんなにも堂々と惚気けている小倉と吉沢さんだが、きっと中坊の時の俺が見てたら眩しさで目を焼き尽くされていたかもしれん。

だが今は違う……これが大人になるという事か……事か……事か……。


「大堂氏何黄昏ているのでござるか?」


「ほっとけ。」



その日の夜は、明日の期末テストに備えての最終確認をしていた。

今まで覚えてきた事は間違いでないかとしっかりと確認し、その後……俺はなんだかはると話がしたくて、はるに電話をかけた。


ポロロロン、ポロロロン(待機音)


「な、何?」


はるはすぐに電話に出てくれた。

しかし、しまった……なんとなく話したいな、ぐらいの考えで電話をしてしまったので何を話せばいいか……そうだ!


「な、なぁはる?」


「何?」


「もうすぐ夏休みだしさ、俺とはると、あと中守と小倉と、久瀬で市民プールか海のどっちかに行こうと思ってるんだけど……はるならどっちがいい?」


「え、えーっと……。」


「ていうか出かける事自体嫌、かな?」


俺はなんとかグッドコミュニケーションをしたい、という思いが先行してつい早口で話してしまう。

そんな俺の質問に対するはるの答えは……。


「……プールがいいかな。」


「プールかー。海は砂で足が汚れるもんな。クラゲとかいるかもしれないし。」


「うん。あと、それに備えて水着も買いにいきたいんだけど……1人じゃ恥ずかしいから、あお君と行きたい、な……。」


な、何ぃーーーっ!?

は、はるが水着買うのに俺が付き合う!?それって、はるの水着を俺が選ぶって事!?ま、マジか……。


「あお君?」


「え、あ、ゴホン、俺で良ければ付き合ってやるぞ。(印象良くする為のイケボのつもり)」


「あ、ありがとう……じゃあ、思いっきり夏を楽しむ為に期末テスト頑張ろうね。」


「おう。」


「……」


「……」


「……」


あ、この間もしかしてどっちかが電話切るの待つ間なのか。


「き、切って……良い?」


「あ、そうだな!うん!切っていいよ。」


「じゃあ、お、おやすみなさい、あお君。」


「おやすみ、はる。」


こうして俺ははるとの電話を終えた……くぅ〜、我ながらオタクの癖に甘酸っぱい青春送りやがって!






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