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15話「友の為」

私のパパの時代には既に「不良なんて時代遅れだよ」って風潮ができあがっていたらしい。

少年少女だろうと悪さをすれば名前を晒される上にネットで叩かれる……そんなんだから不良が減少するのも無理ないって事だ。


そして、この現代において私は中学の頃まで不良をやっていた。

他校の奴らと喧嘩をし、酒を飲むわタバコを吸うわ……学生生活において悪とされる事は一通りやったと思う。


西中の狂獣なんてダサい名前を付けられてイキって調子に乗って……そしたらママが「こんなの私の娘じゃない」って言って家を出て言った。


それでようやく目が覚めて、馬鹿な自分を呪って……もう何かを失うのはごめんだから、矯正はしたいけど、それはそうと私はありのままの私でいたい……その2つの意思が自分の中でせめぎあった結果、「ギャルになる」というところに行き着いた。


「久瀬さん、この仕事任せてもいいかな?」


「おけまる!」


「久瀬さん!3組の佐藤君ってどんな女子が好きなのかな……?」


「う〜ん、美人系が好きらしいよ〜。」


「ふゆっち!放課後買い食いしね〜?」


「いいねぇ〜!銅だこ行くし!」


私はいつの間にか、それまで自分が不良だった事も忘れて青春を満喫していた。

私が矯正したのを見た周りの大人達は私のこれまでの行いを水に流してくれたけど……でも、ママが帰ってくる事は無かった。


でも、いつか帰ってくると信じて、私は明るい性格で誰にでも優しい久瀬冬子をこれからも演じ続けるつもりだ。

その行いが報われると信じて……もう何も無くさない為に……でも、今日だけは……!



「ウチの友達に……手を出すなァァァァァ!!」


人を殴ったのは2年ぶり位かもしれない。

私の拳は気持ちいい程に大男の顔面にクリーンヒットし、そいつの身体は宙を舞い壁に打ち付けられた。


「火野!!」


火野、とやらの彼女かなんかの女は顔面蒼白で火野の元に駆け寄りそいつを起こそうと身体を揺する。


「大堂君、大丈夫?」


「あ……あぁ……全身痛いが……。」


大堂君の怪我は大したこと無いみたいだけど、今日はろくに歩けそうにないかもしれない……せっかくの文化祭なのに……幼なじみとしてはるっちと一緒に文化祭を見回りたいって思ってたかもしれないのに……!


「オイ……!」


その場から立ち上がり火野の元に近づくと、女は火野を守ろうと両手を広げて立ち塞がる。


「退け。」


「う……うるせぇ!私が火野を守るんだよ!」


「俺がピンチになったらお前が俺を守れ……とでもソイツに言われたのか?」


「そ……それは……!」


「はっ、ご立派な絆だなぁ。退け!!」


私が女に凄むと、女は尻もちをついて怯えながらその場から立ち退いた。


「ぐっ……かは……っ!」


「オイ、火野とやら。」


私は火野の髪を掴んで面を睨みつけ、「約束」を申し付けようとする。


「お前その制服、隣町の高校の制服だろ。」


「……そう、だが……?」


「2つ約束しろ。二度とこの街に来るな。二度とはるっちと大堂君に関わるな。」


「い__」


「嫌だと言ったら殺す。私1人人の道を外れて2人を守れるんだったら安いくらいだ。」


私はなんとかして火野をはるっちと大堂君から遠ざける為にその2つの約束を火野に突きつける。

不良を辞めてから今日までの2日間、人として真っ当な人生を生きてきたけど……多分、その約束をコイツが守らなければ私はもうはるっちと大堂君の友達ではなくなるだろう……。


「ふ、ふふ、ふははは……!」


「何が可笑しい?」


「俺は……立花を……立花という人間を、完全に……壊してやりたいんだ!そこの塩山や、何人もの友達を……げほっ……使って……立花の心を壊した……中学に入学した時、クラスを纏めていいクラスにしようと、息巻いていた……真面目で清廉な……強い立花を見て……壊してやりたいと思った……!」


なんてイカレ思考だ……コイツを生かしてたらはるっちが危ない!やはりコイツは殺さねぇと……!


「てめぇ、覚悟決めろよ……!」


「だが、何だ……今日の、あの立花は……メイド服なんか着て……生き生きとしやがって……余計壊したくなったじゃないか!俺は美しいものが壊れるのを見たいんだよ!」


「死ね……ッ!」


意を決した私は、火野が死ぬまで拳を振るい続け、確実にコイツを殺そうと決意する。

手の骨が砕けるぐらいの勢いでやれば……殺れる__


「やめて!」


「!?」


「ダメ、だよ……そ、そんな事しちゃ……!」


その時、その場にはるっちが現れた。

涙を流しながら私を止めようとうったえている。

その泣き顔を、私の前から姿を消したママが最後に見せた表情と重ねてしまい……不意に拳が止まってしまった。


「わ、私は……久瀬さんともっと一緒にいたい!久瀬さん、と!仲良くしたいの……!だからそんな事やめて!今年はこんな事になったけど、来年の文化祭は……思いっきり楽しみたい……久瀬さんと!」


「はるっち……。」


「そうだ!そんな奴の為に人生棒に振るんじゃねぇ!まだ高一の6月だぞ?高校生活まだまだこれからじゃねぇか!」


はるっちに続いて、大堂君もそううったえて私を止めようとする。

私はもう何も無くさない為に火野を殺そうとしたのに、それが最も最悪の決断だったんだとその時初めて気づいた。


「はるっち……大堂君……ごめん……!」


私は涙を流しながら2人に謝る、そしてその後表情を笑顔に切り替えて


「ありがとう……!」


私を止めてくれた2人に感謝の言葉を返す。

2人のお陰で私は大切な物を無くさないで済んだ……。


「立花……!」


その時、火野が身体を起き上がらせ、ゾンビのように歩きながら橘に近づこうとする。


「はるっち……!」


「立ば__」


「わ、私は貴方を……否定します。もう私の前に姿を現さ……現すな!クソ野郎!」


「なんて事を……俺たちの、絆__」


「そんなもんねぇん、だよ!」


ガッ!


「ゔっ……!」


はるっちは声が裏返る勢いでそう言い火野の金的にキックをお見舞いした。

それによって呻き声を上げてその場に倒れ込む火野。


「……で、どうするよこれ……?」


「あっ……やっちゃった……!」


大堂君は冷静に火野や塩山をこれからどうするかと呟き、我に返ったはるっちは動揺してしまう。

こうなったら……。


「私にいい考えがあるよ。」


私はこの案で火野と塩山に裁きを……いや、はるっちと大堂君を守る事を決めた。




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