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13話「因縁」

文化祭当日。

皆この日まで頑張ってきた……その成果を発揮する時だ!……なんてオタクの俺が考えちゃったりして……。


接客をする女子達が更衣室でメイド服に着替えて教室にやってきて、最終確認をしている俺達男子にその姿を見せつけてきた。

はるも気恥ずかしそうに俺にメイド服姿を見せてきたのだけど……


「ど、どうかな?あお君。」


「い、いいんじゃねぇかな?」


めちゃくちゃ可愛い!

流石に学生なので露出度多めのメイド服にする訳にはいかなかったのだろうが、可愛い子ってのは露出に頼らずとも自分の良さを十二分に発揮できるものなのだな。


「……たい。」


「え?」


「い、い、今すぐこの場から消えたい……凄くっ恥ずかしい……!」


そう不安を零すはる。

そ、そりゃそうか……はるってこういう事に乗り気な性格じゃないもんな……。


「が、頑張れはる!俺は応援してるぞ!」


「あ……あお君が応援してくれるのなら……。」


俺はなんとかはるを奮い立たせようと試みたが、その一方で……


「うちのメイド服姿も可愛いだろ〜!メイド喫茶が終わったら特別に写真撮らせたるぞ〜!SNSで拡散したら〆るけど!」


久瀬も男子達に自分のメイド服姿をアピールしているが……なんか久瀬だけスカートの丈が少し短いし、その影響か絶対領域がお目見えしてるんですが……。


「うおおおお!久瀬さん最高!」


「久瀬さん最高!久瀬さん最高!」


男子達めっちゃ盛り上がっとる……。


「ではこれより!メイド喫茶……開店!」


「うおー!」


リーダー格の女子の号令によってクラス全体は一丸となり、俺達はメイド喫茶を開店するのだった。


「1年B組、メイド喫茶やってまーす!」


「こちらにお並びくださーい。」


俺は中守と共に教室の前で声をあげてお客さん達にそう呼びかけている。

お客さんは開店から数分で小さな列ができる程度には並んでおり、はるは久瀬ら女子と共に店内で接客をしている。


「オムライス1つとメロンソーダ1つください。」


「は、はい。少々お待ちください。」


「頑張ってね。」


「はい……!」


頑張れよ、はる……と俺は店内のさるをチラッと見て心の中でエールを送る。

それから数分後、再び店内を見てみると、はるがオムライスとメロンソーダをお客さんの所に運んでいた。

飲み物以外のメニューは予め作っていたものをレンチンして出してるんだよな……味が落ちてないか心配なんだが、果たして……。


「……美味しいわ。」


「あ……ありがとうござい、ます!」


しかし俺の心配は杞憂だったのか、お客さんは出されたオムライスを美味しと言ってくれた……良かった〜。

それからもお客さんの客足は途絶えず、1年B組のメイド喫茶は中々好調なようだった。



昼休みに俺ははると一緒に休憩室で昼食の弁当(先生達からの差し入れ)を食べていた。


「はる、午後も大丈夫そうか?」


「ご、午後は1時間ぐらい……1時から2時ぐらいまでやって、2時からは他のクラスの出し物見回ってきていいってまとめ役の伊勢崎さんが……。」


「そうか……。」


午後からはそうするのか……。

あれ?これもしかして俺がはるに「一緒に行こうぜ」って誘うべき所!?

いや、うーん……なんかキモいかな?1人でゆっくり見回りたいって思ってるかもしれないし……ええい、ままよ!


「はる!」


「は、はい!?」


「あのー……良ければ……俺と一緒に見回らね?」


俺は勇気を出してはるにそう伝えた。

それに対してはるは少し間を置いて答えを返す。


「うん。一緒に見回ろう!」


「いいのか?」


「も、もちろん……あお君となら楽しそうだし、ね……。」


それがはるの答えだった。

よっしゃー!はるありがとう!


「じゃあ、午後の1時間頑張ってな!」


「うん。あお君も呼び込み頑張っ、てね……。」


こうして俺ははると一緒に他のクラスの出し物を見回る事を約束し、とりあえず昼休みの間は休憩室で仮眠して、1時にメイド喫茶に戻り作業を再開した。


「2名様ですね。では席へ案内します。」


午後からも呼び込みの仕事を頑張っているのだが、この後はると一緒に文化祭の見回りをするんだと考えれば全く苦ではなかった。

ていうかそれってデートなのでは?


いやそもそも俺とはるは付き合ってないし、デートと言うのは烏滸がましいかもしれないけど……とにかく、俺ははるとの青春を満喫したいんだ……はると離れ離れになった3年間を穴埋めする為に__


「いらっしゃいま__」



「か、唐揚げとコーラになります。」


「ありがとう。」


私は唐揚げとコーラを注文したお客さんの席に準備室から持ってきた唐揚げとコーラを持っていった。

午後は午前中と比べるとお客さんが少ないな……私が昼休憩してる12時辺りは凄く大変だったって久瀬さんが言ってたけど……とりあえずあと30分頑張れば私の作業は終わりだ。


あお君と一緒に文化祭を見回る、か……凄く楽しみだな……あお君が喜びそうなのはお化け屋敷かな?それとも占い屋さんで……って、今は仕事に集中しろ私!


私はあお君との文化祭見回りが楽しみすぎる気持ちをなんとか抑えて接客に取り組もうとする。

その時、次のお客さんがお店の中に……


「いらっし__」


「久しぶりだなぁ、立花。」


「!!」


その声を聞いて、その姿を見て、まるでジェットコースターや飛行機に乗った時のような……いや、あれとは違う……あの感覚に最悪の不快感を足したような酷い感覚……


「ど、どちら様、でしょうか……。」


「知らない人を見てそんなに声が震える訳ないだろ。俺だよ……お前の事が大好きで大好きでたまらない、奈倉中学の……火野炎慈だよ。」


その男は、私が通っていた中学校、奈倉中学校の同級生……火野炎慈だった。

その瞬間、中学時代のトラウマがフラッシュバックして、私は地面に膝をつく。


「うっ、うぅ……!」


「おいおい……それがかつての友達に再会した時の態度かよ……。」


「まさか喫茶店でゲロるつもり〜?やめろよ気持ちわり〜笑」


そして追撃をするかのようにまた聞き覚えのある声が耳を不快感で覆い尽くす。

恐る恐る顔を上げてみると、そこには火野の取り巻きの女子3人がいた……コイツらも私は知っている。


「ひさ〜。キモオタみたいな見た目でメイドとかウケるわ。」


「この街を探し続けて……ようやく会えたんだ。嬉しいだろ__」


不気味な笑みを浮かべる火野の手が私に迫ろうとしている。

やめろ……その手で私を触るな……!


「お客さん。」


その時、あお君がその場にかけつけ火野の手首を強く握りしめる。


「あお君……!」


「はる……うちのメイドが気分悪そうにしてるじゃないですか。その子には保健室で休んでてもらいます。そして……校舎裏で話でもしましょう。」


「お前か……立花の幼馴染っていうのは……。」


あお君は鬼気迫る表情で火野を問い詰める……ごめんあお君……皆……私のせいでこんな事に……!




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