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12話「文化祭に向けて」

文化祭の出し物としてメイド喫茶が決まったのだが……そのメニューを作る練習をしていた料理班の方でちょっとした問題が起こっている。


「わ、わ、私中華料理店の一人娘なのに……中華料理店の一人娘なのにぃ……!」


上手く料理を作れない悔しさからか、子供のように顔をクシャクシャにして涙を流す吉沢黎菜(よしざわくろな)さん。


「吉沢さん、落ち着いた?」


「なんでこんなに料理上手くならないんだろぅ……たくさん練習してるのにぃ……!!」


吉沢さんは同じく料理班として活動している小倉に止められ、料理をしようとする手を止める。

とりあえず先生を呼んで、吉沢さんが作った料理を食べたと思しき生徒達を保健室まで連れて行ってもらい、その後俺は小倉と吉沢さんに状況確認をする。


「要するに小倉……ここに倒れていた人達は吉沢さんが作った料理を食べて気絶してしまった、という事でいいのか?」


「あぁ……吉沢さん、自分は中華料理店の一人娘だから料理は任せろって言って、けど……」


「ごめんなさいぃ……私、嘘つきました……今まで頑張って料理の勉強してきたのに……全然ダメダメでぇ……!」


吉沢さんは嘘をついてしまった事を小倉に謝った。

でも多分、俺が思うに……


「違うよ吉沢さん。」


「え?」


小倉の言葉を聞いた吉沢さんはハッとしたような表情を浮かべる。


「吉沢さんが今さっき作った料理を思い出してみて?」


「えっと……オムライス……だったね。」


「うん。吉沢さんの家は中華料理店で、吉沢さんはずっと中華料理を作る練習をしてきたって事でしょ?炒飯とか坦々麺とか焼き餃子とか。」


「そうだけど……だから辛い味付けをしたらいいかなって思ったの!」


どうやら試食した人達は辛さによって倒れてしまったらしい。

いや、どんだけ辛いんだよ……。


「うん……確かに辛い味が好きな人はいるだろうけど……ちょっと辛くし過ぎたのがいけなかったのかもしれないね。オムライスって卵料理でしょ?殆どの人はあまじょっぱい味を想像する料理だから……かと思ったらとんでもなく辛い料理だった……って言うのはマイナスイメージになると思うんだ。」


「なるほど……そうだったんだ!」


小倉の説明した事を聞いて、吉沢さんは深く納得した。


「オムライスにはオムライスの味の付け方ってのがあるんだよ。今から俺がお手本を見せてあげるから、吉沢さんはそれを見て勉強してね。」


「う……うん!」


小倉はなんとか吉沢さんを泣き止ませる事と彼女が作るオムライスの欠点を教えてあげる事に成功し、吉沢さんはそれで納得したようだ。


「大堂、俺達の様子を見に来てくれたのか?」


「あ、あぁ。でも問題は解決したみたいだし良かったよ。」


「ありがとな。」


そうしてその日はもう少し作業をした後帰宅し、翌日以降も俺達は文化祭準備を頑張って進めた。



「中守君、メニュー表見せてくれないかな?」


「了解でござる。」


中守は文化祭準備係のリーダー格の男子にメニュー表を見せ、それのどこは良いか、どこを改善するべきかを話し合っている。


「はるっちー、モッキーのピンク貸してー。」


「はい。」


「あんがとー。」


久瀬ははると共にメイド喫茶の看板を作っている。

色紙を切って作った花の装飾にモッキーペンで色を塗ってるみたいだ。


で、俺はと言うと……。


「…………」


カキカキカキカキ……



数日前までやっていた看板作りの作業を久瀬とはるに任せて、文化祭準備中に授業で習った所を分かりやすくノートに書き写している。

何故か?それはもちろん……文化祭の準備に集中して勉強が疎かになっている約15名の生徒達の為だ。


「ごめんねー大堂君。結構大変な役回り任せちゃって。」


「いいよ。作業してない残りの生徒から休み時間の間に色々教えてもらってそれを纏めてるだけだから。」


俺の様子を見に来て、ごめんと言う女子に問題ないと返す。

陽キャとの会話とか、陽キャイベントに精を出すとか、中学生の頃の俺が苦手だった事を今の俺が頑張っているっていうのはなんか感慨深いな……。


「私達が期末テストでいい点取れるかどうかは君にかかってるからねー。」


「んなプレッシャーをかけるような事……!」


「うそうそ、ごめんね!私達の分も勉強お願いね!あと文化祭が終わったら皆で打ち上げ行く予定だからよろしく!」


女子は俺にそう告げるとリーダー格の人達の元に戻った。

任せられたからには、頑張らないとな……!


そうして文化祭の準備はちゃくちゃくと進んでいき、さらに時間は流れ……文化祭の1週間前。



「ダイダイダイダイダイノマン♪でっかいでっかい夢と希望♪守ってみせるぜダイノオーラで〜♪」


俺と中守、小倉は文化祭に向けての景気づけにカラオケに来ていた。

この前中守と小倉のカラオケの誘いを断った時の埋め合わせも兼ねて。


「大堂、歌上手いな。」


「まぁな。中学時代頑張りましたから。ちょっとトイレ行ってくるわ。」


俺は1曲歌い終えたあと、トイレに向かったのだが……そのに向かう途中の曲がり角で、角の向こうから来た人とぶつかってしまう。


「す、すみません!」


あれ、デジャヴ?と思い相手の顔を見ると……この男は……。


「お前、前に会ったか?」


「え、いつ頃……でしたっけ?」


「まぁいい。」


男はすぐに俺の前から立ち去った。

間違いない……この前ファミレスで会った男だ……制服が同じくだからな。

この前もだけど、なんで隣町の生徒がここにいるんだ?何か用事があってこの街に来てるって事か……?


まぁ名前も知らん奴の事なんて気にしてもしょうがないけど……。









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