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9話「オタクとギャルとおてんば妹」

はるの家のチャイムを押すと「ピンポーン」という音が鳴り、それから数秒後にはるの母、ゆかりおばさんが玄関のドアを開けて出てきた。

この人とは昔何度か会ったことあったっけな。


「あら、青司君じゃない!それと……はるのお友達?」


「久しぶりです、ゆかりおばさん。」


「こんにちは。はるっちの友達の久瀬冬子です。」


久瀬はいつものテンション高めのノリとは違い礼儀良く挨拶をする。

友達以外の人と話す時はこういう感じなのか……。


「はる、大丈夫ですか?学校で配られたプリントとか持ってきたんですけど……。」


「あら、ありがとうね〜。朝は調子悪そうにしてたけど、もう大丈夫みたいだから……ちょっとはるに声掛けてくるわ。」


俺と久瀬の要件を聞いたゆかりおばさんははるの部屋へと向かい、はるに俺達が来ていると言いに行った。

それからすぐに戻ってきて


「はる、2人に会いたいんだって。さぁ上がって。」


との事なので、俺と久瀬は立花宅へと入り、はるの部屋に向かった。

そして一声かけてから扉を開く。


「はる、開けるぞ。」


「う、うん……。」


俺がはるの部屋の扉を開けると、はるはベッドの上で座っていた。

特に風邪とかひいてなさそうなので、俺は胸を撫で下ろした。


「一応聞くけど、大丈夫か?」


「うん……も、もう大丈夫。心配してくれてありがとう、ね……。」


「あぁ〜はるっち……はるっち〜はるっちぃ〜!」


久瀬ははるの顔を見た途端に涙を浮かべ、今にも泣き出しそうな表情ではるの名前を連呼する。


「そ、そんなに心配してたのか?」


「フツー心配するじゃん?大堂君は違うのかよ!」


「そりゃお、俺だって心配してたけどよ……。」


その通りだ……でも、俺ならともかく、はるとの付き合いが1ヶ月程度の浅い関係の久瀬がここまで心配するものなのか……いや、ここは久瀬が「はるの事をこんなに心配してくれてた事」こそが大事だよな。


「2人とも、ありがとう……。」


「おう。これ学校で配られたプリント。」


「あとコンビニで買ってきたお菓子!」


俺は学校で配られたプリントを、久瀬はコンビニチェーン店「デイリータニガワ」で買ってきたプリンとパックのイチゴ牛乳をはるの机の上に置く。

その時、ふとその机の上に置いてあったノートに目が行った……ノートの表紙には「イラスト用ノート」と書かれている。


「なぁはる、このノートは?」


「イラスト用ノート?」


「あ、え、あの、それは……!」


あ、はるの態度から察するに見ちゃいけないやつなんだな。

だったらはるのプライバシーを侵害する訳にはいかないので、見ないように__


「はるねぇー!」


その時、部屋に小さな女の子が入ってきた。

はるからメガネをとって小さくしたみたいな見た目の、見た目的に幼稚園児ぐらいかな?といった女の子だ。

そういや、はるって妹がいたような……昔見たっけ……。


「桜……お姉ちゃんはもう元気だから、部屋に戻りなさい。」


「うん……メガネのお兄ちゃんと不良のお姉ちゃん誰?」


桜ちゃんは俺と久瀬を指さしてそう聞いてくる。

それに対して、「人を指さしてはいけないよ」と教えるはる。


「不良の……お姉ちゃん……?」


「お、落ち着け久瀬。相手は子供__」


俺は、不良なんて言われた久瀬がキレるかと思ったが……


「めっちゃカワイイんですけど……!」


その心配は杞憂だったらしく、久瀬は桜ちゃんを見て瞳を輝かせている。

そして桜ちゃんに近づき頭をナデナデしだした。


「ん〜桜ちゃんって言うの〜?カワイイでちゅね〜!」


「えへへ〜桜カワイイ〜?」


「もう銀河1カワイイでちゅよ〜!」


「やったー!はるねぇ!桜銀河1カワイイんだって!ありがとう不良のお姉ちゃん!」


桜ちゃんを可愛がる久瀬も、桜ちゃんもめちゃくちゃ嬉しそうにしている……なんなんだこの空間……俺がいていいのだろうか。


「あ!そーだ!メガネのお兄ちゃんと不良のお姉ちゃん!」


「だ、大堂青司……あおしだよ。」


「とうこちゃんって呼んでくだちゃいね〜!」


と、俺と久瀬は桜ちゃんに名前を教え、桜ちゃんはおもむろにはるのシークレットノートをバっと開く。


「はるねぇはね!いつもお絵描きのお勉強を頑張ってるんだよ!ほら!」


「(はるの声にならない声)」


はるは恥ずかしさのあまり頭から蒸気を吹きながら気絶してしまった。


「は、はるーっ!!」


「え……何これ……なんか露出度高めの女の子のイラスト……?」


久瀬はそのノートに描かれていたキャラクターを見てそう呟く。

一体何が描かれてるんだ……と思って俺もそのノートを見てみると、それは昨日はるが久瀬に熱く語っていたアニメ「パライソの聖女」のキャラクターだった。


パライソの聖女に出てくる女性キャラクターは独特かつ際どい造形の衣装を身にまとっている、言うなれば「女児向け魔法少女を大人向けにした感」があるのだが……それをちゃんと細部まで掻き込んでいる……なかなかのクオリティだ。


「ねぇ大堂君……このキャラクター、何?」


何故だか鬼気迫る表情で俺にそう聞いてくる久瀬。

それに対して俺が素直に「パライソの聖女だ」と答えると、久瀬は……


「帰ったら一気見しねぇと……!」


なんか凄い燃えていた……いや、一昔前風に言えば、萌えていた……?

兎にも角にも俺と久瀬ははるが目覚めるまではるを見守り、はるが目覚めたらなんとかはるへのメンタルケアーを繕って落ち着いてもらい、明日学校で会おうと約束して立花宅を後にした。


ゆかりおばさんとも桜ちゃんとも久しぶりに会ったし、今日は色々あったな……。






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