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1話「あぁオタク」

青春というものに嫌気が差し、勉強も友達との交流もなぁなぁになった俺がオタクになるのに、そう時間はかからなかった。

きっかけは、幼なじみの好きな女の子に告白できず、彼女が小学生の卒業と同時に転校した事だ。


やるせない気持ちを引きずったまま中学生になった俺は、YouTubeで人気アニメの切り抜き動画を見たのをきっかけに、そのアニメ「鬼神乱舞」にハマってしまった。

きしらんはまぁミーハーも見るようなアニメだから、それを見ている程度ではオタクじゃねぇから笑、って……そう思ってた時期が俺にもありました。


「大堂青司君……君の学力じゃああまり良い高校には行けないだろうけど、君の身の丈にあった高校を選ぶといいよ。」


「……はい。」


気づけばありとあらゆるアニメ……それこそ配信版でお乳首が見れてしまうような紳士向けアニメにすらハマり、オタクになってた訳で……。

中間、期末テストでは常に90点台をキープしてた小学生時代は今は昔の話で、高校試験を目前に控えていた俺は先生にそう言われる始末。

そう言われた俺は、目が悪くなった事でかけ始めたメガネをクイッと上げて冷静ですよアピールをする。


「はぁ……。」


「そう暗い顔しなさんな。せっかくの飯が不味くなるだろ?」


「いや、うん……。」


「高校受験が不安な気持ちも分かるけどね、ネガティブになり過ぎるのも良くないわよ。」


「あぁ……。」


「でもアニメとかゲームは程々にな。今は大事な期間なんだから。」


「ちゃんと勉強もしてるよ……。」


「ま、なんとかなるわよ!」


両親はそう言って励ましてくれるけど、俺は不安な気持ちを払拭するかのようにさらにアニメを見たりゲームをしたり、趣味にのめり込んでいき、学力は小テストで満点を取るのが精一杯のレベルにまで落ちてしまった……。



「このままで良いのかなぁ……。」


冬休みに地元で仮面ファイター展が

開催された。もちろん仮面ファイターなんて特撮にもハマっちゃってる訳だ。

実際の撮影に使われたスーツや小道具の写真を撮りつつも、やはり2月後に控えた受験の事は頭から離れない。


でもせっかく金払って仮面ファイター展に来たんだ……思いっきり楽しまねぇと!

勉強だって俺なりに頑張ってきたんだから、受験だってきっと上手くいくさ!

今はただ仮面ファイター展を楽しもう!


「しゃーねぇ、気持ち切り替えるぞ!(小声)うぉ〜!仮面ファイタービートルのベルトかっけー!(小声)仮面ファイターライナーのベルト造形スゲー!(小声)」


俺はそう言いながらスマホのカメラに火を吹かせていたのだけど、仮面ファイターバンプの武器の写真を撮ろうとしてその前に立とうとした時、人とぶつかってしまった。


「あっ……」


「っ!!す、すみません!!」


「い、いえ……大丈夫で__」


俺はぶつかってしまった小太りで髪がボサボサの……多分俺と同じぐらいの歳の女の子に腰を90度曲げて謝罪するが、その子は俺の顔を見て驚いたような表情を浮かべる。

お、俺にメンチを切ってるのか……?


「あの、どうかしましたか?」


「……い、いえなんでもありません!失礼します!」


「あ、あの……!」


女の子は我に返りその場からそそくさと立ち去っていった。

それにしても、あの子の声を俺はどこかで聞いた気がするんだけど、気のせいだろうか……学校にはいないはずだけど。


「な、なんか凄く申し訳ない気分に……。」



「ねぇ、あお君は男の子の友達と遊ばないの?」


「んー、別にいいかなって。」


「女の子と遊ぶのが好きなの?男の子なのに?」


「別にいいだろ。男とだってたま遊ぶし!それと女の子と遊ぶのが好きなんじゃない、お前と遊ぶのが好きなんだ!勘違いするなよ!」


「あはは!あお君が怒った!」


「からかうなよはる!」


「あはは……ありがとね、あお君!」


「……おぉ。」



「……」


高校受験当日、俺は告白しそびれた幼なじみ……立花春美との昔の思い出を夢に見た。

俺とはるは小学校低学年の時はあんなに仲良かったのに、高学年になるにつれてちょっと疎遠になって、最後には想いも伝えられずサヨナラ、か……。

あの時の後悔は今尚俺を苦しめるというのか……よろしい、ならば高校生になったらオタク友達を沢山作って過去など払拭してやろうじゃねぇか!


「やるぞー!!」


「朝っぱらから元気ね。元気が出るスタミナ丼作ったわよ!」


「いただきます!」


朝食をガツガツと食べる俺をおかんは嬉しそうに見ている。

その後準備を済ませた俺は電車に乗って隣町の高校へと向かい、今までオタ活の合間に積み重ねてきた努力を信じて受験に挑む。


受験はその日とその1週間後の2日で、1日目の試験が終わった後は2日目の試験内容と面接での受け答えを頭に叩き込み、1週間後の2日目の試験に挑んだ。



「あった……俺の番号……しゃっ!」


で、俺は晴れて鹿児島県某市の私立高に受かった訳だ。


「おかん!おとん!受かったぞ!」


「やったー!はるならできるって信じてたわよ!」


「やったな青司!今夜は焼肉だ!」


「よっしゃー!」


その日の晩はおかんとおとんが焼肉をご馳走してくれて、さらにその2週間後、3人で東京に高校受験合格記念の旅行に行って、ゲンドムベース東京でプラモデルを買いまくったり、きしらんのポップアップショップで限定商品を買いまくったりした。



そうしてついに始まった俺の高校生活当日。俺は自分のクラスである1年B組に向かい、意を決して教室の扉を開く。


「……」


「おはよう!」


「おっはー。」


「おはようございます。」


教室には既に何人かの生徒がいて俺に挨拶をしてきたので、俺はぎこちない声で「おはよう」と返して自分の席についた。

今の所クラスにいる生徒は皆見た感じオタクではなさそう……というかバリバリの陽キャにしか見えない。


俺の隣の生徒はどんな人間だろう……と、俺は期待半分不安半分で隣の席の生徒についての気持ちを膨らませていた。

なんなら今名前でどんな生徒か妄想してみよ。

って事で隣の席の机に張られている名前のシールを見た訳だが、そこに書かれていた名前は__


「お、おざっす……。」


次の瞬間、教室の扉を開けた女子生徒が小さな声で素早く挨拶をしてそそくさとその席に座る。

この時初めて俺は気づいたのだ。なんであの時……仮面ファイター展で出会った時に気づかなかったんだろう……よく見知った女の子じゃないか……!


「お、お前……!」


「え、あ、はい……ひ、久しぶりです……。」


その子は仮面ファイター展で会った時とは見違えた姿で……あの頃のあの子がそのまま大きくなったような姿で俺の前に現れた。

立花春美……俺の初恋の人だ。

カバンにきしらんのストラップがめちゃくちゃ付いてる……こいつ……やっぱり見ない内にオタクになってたんだ!(ブーメラン)





お読みいただきありがとうございました。

ここ最近はカクヨムとアルファポリスで小説を連載していましたが、久しぶりに小説家になろうでの投稿になります。

ラブコメというのもつい最近初めて描いたばかりで、下手な所もあるでしょうが、これからもこの作品を続けていけたら良いなと思っています。

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