心灯2
続きです。よければ読んでって下さい
僕と夜星は暁天市駅前通りに来ていた。
この通りには沢山の施設が揃っている。
大型のショッピングモールに飲食店、カラオケやボーリング場等、様々な娯楽施設まで揃っている。
しかし何よりも特徴的なのは、この活気のある人々だろう。
笑顔が溢れ、明るい雰囲気で満ちたこの通りは道行く人々さえも笑顔にしてしまう。
僕と夜星はハンバーガー屋に来ていた。個人経営の小さな店だがすごく美味しいと話題のある店だった。
「いやあ、面白かったね!」
夜星は笑顔でそう問いかけてきた。
「まさか主人公が全ての元凶とは思わなかったよ。」
そうやって僕達は互いに感想を言い合いながら食事を済ませた。
「人志くん!ねえ、これどうかな。」
場所は変わりモール内の洋服店に来ていた。
夜星は一着の白いワンピースを自分の体に当てて、意見を求めてきた。
「……まあ、俺みたいな奴の所感で良いなら。」
じっと夜星を観察してみる。
「まず、白い生地の服と夜星の黒い髪が互いに魅力を引き出している。
普段黒い服を好んで着ているから、知人とかには新鮮でギャップ萌え?と言うやつを感じるんじゃないかと思う。」
言いおわってから十数秒経っても反応が無かった。
不思議に思い、夜星の顔を見ると顔を真っ赤にして口を魚みたいにパクパクしていた。
「夜星?」
「へっ?え、と……何?」
「いや、何じゃなくて……大丈夫?体調が悪いなら今日はもう帰ろうか?」
すると夜星はあわあわと手を振り「大丈夫!だからもう少しだけ一緒に居よ?」と言った。
「夜星が良いなら構わないが……。」
僕は心配しつつも、そう言う夜星に押されてもう暫く彼女と遊んだ。
黄昏時、僕は夜星と二人で公園の高台で夕陽に彩られた景色を楽しんでいた。
見下ろす街には灯りがポツポツとつき始めていて星の光の様に見える。
遠くに見える山はこの国の世界自然遺産である天陽山だ。天陽輪皇国で一番高い山であり、山頂までは雪で覆われているが、山頂が雪ではなく炎で赤く彩られている。
この国の守護獣の神力によるものだと学校の授業で習ったが、いつ見ても不思議な物だ。
「今日はありがとう。人志くんと遊べて楽しかったよ!」
天真爛漫の笑顔に僕は引き込まれる様な感覚を覚える。
『――ひっくん、ありがとう!』
何処かで同じ事を誰かに言われた気がする。けれど記憶は霞がかり、一体いつの記憶なのか……誰に言われたのかすら分からずに思考だけが深い深い水底に沈んで行く。
(分からない……あれは、誰だ――?)
「――人志くん?」
ハッと意識が現実に引き戻される。
「大丈夫?すごく難しい顔をしてたけど……。」
「……いや、大丈夫。」
遂に思い出す事は無かった。
けれど何処か安堵している自分がいる事に少し驚いた。何故僕は安堵しているのか。この記憶にどんなモノがあったのか。
大切に思っていた筈なのに思い出せなくて気持ちが悪い。
胸に穴が空いてしまったかの様な喪失感を紛らす様に僕は言葉を発する。
「今日はありがとう。楽しい1日だった。」
夜星は静かにはにかんだ。
「えへへ。そういって貰えるなら誘った甲斐がありましたな!」
ムンッと胸を張って両手を腰に当てる。その姿が何だか子供っぽくて僕は思わず吹き出してしまった。
「ふふふ、あははははは。」
「ふっふふ、あははははは。」
そうして二人で笑いあった。
夜星 藍と繋 人志の一日。
掛け替えのない物になるであろう時間。
この日は間違いなく二人の距離を縮めた。
少女の淡い恋心と少年とのラブロマンス。
ここからさらに二人は距離を縮めてやがては……
——それだけであればどれほど幸せだったろうか。
けれどこれでは終わらない。
日常の終焉を齎す狂想曲の序奏は既に奏らてしまった。
突如として轟音が響いた。
辺りを炎と瓦礫、そして硝煙の臭いが包み込む。
平穏を破壊する狂気の産声が上がる。人々は恐慌の嵐に呑まれ我を失う。
そこに突如として現れた銃器で武装した集団。
先頭に立つのはタキシードに身を包む黒髪の男
「ふははは!さあ、開演です。この欺瞞に満ちた社会を崩す前奏曲を奏でましょう♪」
男が指揮棒を振り下ろすと同時に後ろの集団から一斉に銃弾が放たれた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。