人生には何の役にも立たない知識・思考をつらつらと書くエッセイ集
バレンタインに自分用のチョコを買う
2月14日。本日はバレンタインである。
日本では、バレンタインは恋人にチョコを送る日である、と言われている。
この日は、女性から男性にチョコレートをプレゼントする、という事がほぼ確定事項にされている。
いや別にバレンタインに対して恨み言を言おうという訳ではない。
チョコを貰えない事を悲観して、嘆き節を垂れ流そうという訳でもない。
私は何が言いたいかというと
バレンタインの時期に「チョコレートを買うのは女性だけだ」とされている事に対する不満である。
冬の寒い時期、この時期こそチョコレートの旬である。
普段我々が敬遠する、あの吹きすさぶ風の冷たさによって、チョコレートは溶けずに美しい形を保ってくれる。
カリッと噛んだ瞬間の、チョコのあの固さは夏には経験できない。
溶けたら食感が台無しになる、トリュフチョコが店頭に並ぶのも冬が本番である。
まさに冬はチョコレートの独壇場、一番活躍できる時期なのである。
この時期に、うまいチョコレートを欲するのは当たり前の行為だと言えよう。
ところがである。
1月末から2月の上旬にかけて、私がチョコを買う事に戸惑う時期が来る。
それがバレンタインである。
はっきり言ってこの時期にチョコレートを買うのは私にとってとても気が引ける行為である。
特に14日の当日は最悪だ。
仮に私が2月14日に「今日はチョコケーキが食べたいな」と思ったとしよう。
ちょっと奮発してデパートで良いケーキを買おうかなと向かう。
デパ地下のケーキ売り場には、確かにうまそうなチョコケーキが沢山並んでいる。
そりゃ当たり前だ、今日はチョコレートが一番売れる日である。
作らないケーキ屋があるだろうか。いやあるはずがない。
しかし、しかしながら、その前に並んで買っているのは沢山の女性である。
勿論、目的はバレンタインのプレゼントであることは明白だ。
私はその間に割って入って「すみません、このチョコレートケーキをひとつください」と言わなければいけない。だが、そんな言葉を発したが最後、周りの女性から
「こいつ、チョコが貰えないから自分で買おうとしてやがる」
なんて目線がズバズバと刺さってくる、ような気がするのだ。
いや、本当に女性がそんな厳しい目をしてくるとは限らないのは分かっている。
むしろ「あーチョコ好きなのね、かわいい人ね」なんて思ってくれているなら良いのだが、あいにく私はかわいくも無ければ若くも無い。タダのおっさんである。そのような期待は全く持てない。
結局、私は自ら勝手に想像したプレッシャーに負けて、すごすごとデパートを後にする事になるのだ。ソロ活失敗である。
ググってみると、2020年の統計ではバレンタイン時期にチョコを買うという男性は全体の1割強、そのうち自分用だという人は25%程度だとされている。という事は、自分用チョコを買いたい人は全体の2~3%程度という事になるだろうか。
ちなみに、女性がバレンタインに買うチョコの3割は自分用であるらしい。
これは想像していたより多い。なんと男性の10倍だ。
そりゃあ女性は自分用も買いやすいだろうという事は、想像に難くない。
「プレゼントですか?」
「はい、贈答用で包んでください」
などというだけで、綺麗にラッピングされた自分用の特別チョコが買えるのだから。
とても羨ましい事である。
はっきり言って、この時期にチョコを買う男性はマイノリティである。あれだけ金の動きに敏い広告業界も、たかだか2%の男性に訴求するようなキャンペーンは打ってくれまい。
バレンタイン時期にチョコを買いたい男性の受難は、まだ続くことになりそうだ。
私は将来に悲観的な気分を抱きながら、スーパーで買った300円のチョコケーキを一人でパクつく。ああ、やっぱり冬のチョコレートはおいしいなあ。