婚約破棄、全力で止めてみた。
「マキュール王国、第一王子。レーベル・カミュ。あなたを婚約破棄します」
「な、なんでオレが逆に婚約破棄されるんだ!? 教えてくれ! ムールカ」
「あなたが今まで、私に働いていた無礼の数々。婚約相手の私という者がありながらも、美しい姉とあなたは浮気していたこと。そして、先日の食事会で邪魔な私を消そうとして、食事に毒をもったこと。これは私たち、王宮への反逆とみなします」
「そんな…なぜそれを…知っていて…!!」
王宮のパーティーに招かれた貴族たちは騒然とする。この国の王女である私の誕生日パーティーにあるまじき行為。それがこの男と婚約してから、ずっと行われていたのだ。
何としてもこの男とはくっついてはいけないと、私の予感が警告する。
私は、公然の場でこのことを暴露した方が身のためであり、効果があると感じた。第一王子の国は私たち、王宮より小さな国であるため、反抗はしてこない。兵力ではこちらが上だった。
「いつか…痛い目を見るぞ…悪役王女が…」
「負け惜しみはいくらでもどうぞ…ほんとのことですから」
私の婚約破棄はこれで3回目だった。
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「私の娘、ムールカよ。これで三度目の正直だぞ。次はうまくやりなさい」
「はい…父上」
世界一大きな領土を持つと言われている私たちの国、オアシスには様々な婚約相手がこぞってやってくる。
容姿が姉より良くない、世間ではブサイクとされているのにも関わらず、この国の権力を求め、毎日のように私に婚約を志願してくるのだ。
それに私はうんざりさせられている。貴族のパーティーの催しも飽き飽きしてきた。
「私たち、夫婦もあなたのように婚約相手を探して、こうして結婚できたのよ」
「母上も父上も、私の気持ちなど分からないのです。 姉の容姿と私の容姿を見比べて、同じことを私たちに言えますか?」
どんなに派手で綺麗なドレスで着飾っても、どんなに綺麗な靴で軽やかにダンスを踊れても、私の金髪は固く後ろで結ばれていて、それでいて顔は悪役王女と言われたぐらいに醜悪なのでいい相手にも出会えないに決まってる。
私も自分の自信のなさに悩んでいた。どうすれば、母上と父上の期待に応えられるか。考えては、答えが出せずにいたのだ。
「でもね、あなたのように昔は、婚約する前から仲が悪かったのよ。この人が婚約破棄しかけたことだってあるんですから」
「そうなのですか?」
「ああ、私が妻の言葉に逆上してしまってね。 その場は誰か、変な令嬢がパーティーをめちゃくちゃにして終わってしまったが、あれは一体なんだったんだろうな?」
「さあ? 本当になんだったんでしょうね、あの方は」
母上と父上が昔話にふけっていたのを聞いて、私はその隣で眠気と戦っていた。
「あらら。 ムールカ、なんだか眠そうね。 もう夜も遅いし、今日はぐっすり眠りなさい」
「はい…母上」
私はそのお言葉に甘えて、自室のベットにぐったり横たわり、そのまま目を閉じ、就寝した。
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「んん…ここは…?」
眠りから目を覚ました私であったが、どう見ても見覚えのない寝室にいた。私は自分の自室のベットで寝ていたはずだ。なのに、さっきまでいた自室の間取りではない。
「あ、あれ? 私、自分の寝室で寝てたはずじゃ?」
私が戸惑っていた時、寝室のドアから小さい貴族の男の子がやってきた。
「どうやらお疲れだったようですね。 どなたか存じませんが、僕の名前はベルブーク・レイ。 このパーティーに招かれた貴族です」
「…自己紹介ありがとう。 で、あなたが私をここまで運んでくれた犯人なのかしら?」
「犯人? なんのことか分かりませんが、この王宮の廊下で倒れていたところを僕が背負ってきたんです」
「廊下? どうゆうこと…」
小さい彼が言ってることがイマイチ理解できなかった。ここがどこかも分からないし、この王宮? でパーティーが行われている、寝室で寝ていたはずの私が廊下で倒れていた。
何1つ噛み合わない気がした。
「まあ、いいわ。 いつの間にこの王宮でパーティーが行われていたのか、分からないけど私抜きでやっているのは気に食わないわ」
「僕もパーティー会場に戻るので、分からなかったら案内します」
「ありがとう」
そして、ベルブークという少年に連れられて、パーティー会場に着き、そのドアを開いた瞬間だった。
「なんという無礼な言葉!! 今日付けで、子爵令嬢。アミル・ケーディルとの婚約を破棄する!!」
「ええ!! 私もこんな人とは結婚できませんわ! こちらから願い下げです!!」
「あっ…あれは!!? 母上と父上!!?」
私の目の前に飛び込んできたのは、若い時の母上と父上の姿だった。
小さい頃から見覚えがある。あれは間違いない。私は、昔の時代へと飛ばされてしまったのだ。
「第一王子様! そう、気持ちを高ぶらせずに」
「うるさい!! もう決まったことだ! パーティーも中止だ!!」
あくまで仮説だが、何者かの魔法によって過去に私が飛ばされ、この時代にたどり着いたなら。
あの見覚えのない寝室にいたこと、見覚えのない間取り。説明がいく。
このまま、父上と母上が婚約して結婚してくれなければ、私の存在ごと消えてしまう。
私は2人の間から生まれてこない世界が生まれてしまう。
どうして、こうなった!!? どうにかしてこの状況を打破しなければ。
どうする。どうする。どうする。
あ。
私は思い出した。父上の言っていた言葉を。
(その場は誰か、変な令嬢がパーティーをめちゃくちゃにして終わってしまったが、あれは一体なんだったんだろうな?)
このパーティーそのものをめちゃくちゃにして全力で止めるしかない。やってやる。
「うらあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
私はドレスの裾を引きずりながら、パーティー会場、国王の間を駆け抜け、テーブルに置いてある食事やシャンパン。ワインなどを引きずり落としながら、叫び散らす。
「婚約破棄なんてええええええええええええええええええええええええええええええ、やめろやあああああああああああああああああああああああああボケカスうううううううううううううああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
会場は騒然とした。なにせ頭のおかしい名も知らない令嬢がパーティー会場で暴れまくっているのだから、それはそれは怖かったに違いないだろう。
でも、こうでもしないと2人の怒りも、婚約破棄も無くならないし、誰も冷静にはならないからだ。
なんだか嫌な役割を引き受けてしまった気分だ。
「そ、そやつをひっ捕らえろ!! 今すぐにだ!!」
「や、やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 離せ、このやろおおおおおおおおおおおお!!!」
この後、王宮の兵士達に独房に連れて行かれ、あっさりと私は気絶させられた。
****
「んんっ…」
再び目を覚ますと、そこは元にいた自分の寝室だった。寝ているベットもこの部屋の間取りも、すべて元のままだ。
元の世界へと戻ってこれたことに私は安堵した。
それからというもの、私を過去に送って私の存在を無くそうとした罰として、あのレーベル第一王子と浮気をしていた聖女の姉を国外追放にした。
どうやら、私の姉、聖女の魔法で私を過去へ送ったことをのちに認め、それを命令していた第一王子も同罪として追放したみたいだ。
で、その後の私はというと…
「あなたはもしかして、昔。あのパーティー会場であった子爵令嬢の方ですか?」
「えっ!? まさか、あの小さな身体をしていた君が大きくなったってこと?」
「ええ。あれから18年も経ちましたからね。僕ももう26歳ですよ」
王宮に向かう道端で偶然、私は昔、助けられた貴族のベルブーク・レイくんに出くわしていた。
当時の幼い面影はもうそこにはなく、キリッとしたイケメンがそこにはいた。
「どうです? あそこの喫茶で婚約のお話でもなされませんか? 王女様」
「そ、それって、プ、プロポーズなのでは!!?」
「ええ。 そうですね。 プロポーズとも言えるでしょう」
「はああああああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
赤面し、顔を埋める私。どうやら、私にとっての婚約破棄は4回目にして終わり迎えようとしているみたいだ。
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