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交渉の結果、森に住む

 業火と呼ぶほどの火荒れ狂う火。

 ダンの立っていた周辺を含めて大きな火柱が上がっていた。

 見学として離れて座っていたリルも、その顔に熱を感じられるほど凄まじい火柱。ダンの安否すらもわからず、リルは近寄りたくても近寄れないジレンマに苛立った。


≪キツネの心境≫


 一方キツネも無表情を保ちながらも、内心冷や汗を滝のように流していた。

『やばい、やり過ぎたかも』

 確かに人のことを小突きすぎる小僧ではあったが、()()()()()の所有者ではあったし、そもそも高レベルのこの身を圧倒する攻撃力は持っていた。普通ならその時点で合格だったのだが、久方ぶりの会話の合間合間にツッコミを受けすぎたのがこの経緯に至った原因だ。

 本来この地を守護する()()()たる我が、その住人になるであろう人物に、更に言えば()になる契約者に向かって全力を出すなんてやってはいけないことだ。この身は住むものの守護が存在意義なのだから。

 目の前で渦巻く火の竜巻となった光景を見ながら思う。

『どうしよう』


≪キツネの心境アウト≫


 実際には十数秒だった。異常に思考速度が増していたため、それを見ていた1人と1匹の体感時間とはズレが生じていた。

 変化は一瞬。火柱が、いや既に火で出来た竜巻となっていたソレは、内側から膨らむと一瞬で弾け飛んだ。


「す~、は~、す~……。すみませんが、身構えてないと呼吸が苦しいんですが?」


 ダンが若干焦げ付いた格好で現れた。

 先程と同じ位置のままで。


 その光景にリルもキツネも目を見開いた。


 リルは『あれ? ダンさん人類種だったよね?』と目の前の光景の理由を探し、キツネは『あれ? ドラゴンだって焦がせる威力はあったよね?』とポカンと口を開けて目の前の不条理を見た。

 ダンは体についたススをハタハタと手ではたきおとしていく。

「あ~、髪の毛()()()()チリチリだなぁ」髪の毛に指を這わしているダンはちょっと涙目だ。


『ちょっとですむか、ちょっとで! 幽霊とかではないよな?』

 キツネの疑問にリルも内心同意した。

 ダンは笑って返す。

「何をおかしなことを言ってるんですか? ほら」と自らの足で地面をタンタンと踏みしめるダン。

「ま、インナーと鎧以外の服は燃えましたけどね……」

 確かにダンの格好は、若干エキゾチックになっていた。




「で、試練の結果はどうだったんでしょう?」

 ポーチの中から着替えの服を引っ張り出して、手早く着替えながらダンはキツネの聞いた。


『……は?』


「ですから結果ですよ結果。あ、もしかしてまだ続きありましたか?」

 ダンの問いかけにキツネは慌てた様子で答える。

『いやいや、合格。合格だから、十分だから!』

 その言葉にダンはホッと安堵のため息をついた。さすがに目に見えないだけでダメージは普通に受けていたのかとキツネが考えると、ダンが言葉を返す。


「助かりますよ。試練の数だけ服が燃やされるとか危険ですからね」

『普通服だけ燃えないよ!?』

 キツネはダンにツッコミを入れた。




 着替えが終わり、居住まいを正したダンとリルはキツネと向かい合っていた。

『これにて試練は終わり。お主の持っていた巻物をココに』

 テシテシとキツネの叩く地面にポーチから出した巻物を置くダン。キツネは巻物を見ると、巻物が紐解かれて広がった。この広場を中心にした地図が浮かび上がる巻物の上に、キツネが前足の片方を乗せる様に置くと光が巻物を包み込んだ。


『これにて契約となる。契約者よ名前を』

「ダンです」

『うむ、ダンだな。ワシはタマモ。この地を守る守護獣なり』


 キツネ――タマモの言葉にダンは首を傾げた。


「守護、獣? 魔族じゃないの、タマモって」

『ワシは精霊族じゃ!』


 精霊族。ダンの知識で合っていれば自然発生した霊が、力を付けて知性を宿したモノだったはず。その発生する仕方から魔物のように食事をとる必要は無く、自然に溢れる生命力を糧として生存する。

『生存って』

 火や風などの強い自然現象からは属性精霊が。自然の強い場所で、そこに住む動物の姿などで誕生する自然精霊などがいる。ちなみにドラゴンの里ではドラゴンの精霊がかなり昔に出現したことがあるそうだ。さすがドラゴン。強靭な生命力を持ちすぎだね♪


『持ちすぎだね♪ じゃないわ。てかドラゴンの話はデマじゃろう?』

「いや竜の里の爺様に聞いたから、完全なホラ話じゃないと思いますよ?」

『お主自身が存在を疑わしくなってきおったわ……』

 なんだかタマモがヤレヤレとしていた。


「ま、それはさておき」

『置いておくんかい!』と器用に前足で叩いてくるタマモを撫で返してダンは聞いた。

「ここの土地ってどのくらいまで使えるんだろ?」



 ダンがこの地を目指したのは2つ理由があった。

 一つはココにある石碑を探すこと。

 そしてもう一つがこの土地を所有することであった。


 王都でこの地の情報を調べていた際にこの土地の魔法契約書が見つかったので、兵士としての給金と任務時の小遣い稼ぎでその魔法契約書を購入したのである。

 かなり高度な魔法が使われているとのことで金額もかなり吹っ掛けられたが、よくよく考えてみればボッタクリだったのかもしれない。ここまでに来るのに死の森なんて言われる森を抜け、タマモ相手に認められなければ契約者となれないのだから。


 ダンは()()()()強い方だと、自己評価だがある程度のレベルと言えるが、普通の人達のレベルではまずここにたどり着くのは不可能だとも理解している。


「あの古物商のオヤジ、今度王都に行ったときにどうしてくれようかな」

 ダンのわずかな殺気に『ひっ?』とタマモが鳴いた。

「っと、そんなことはその時で。それで土地の範囲なんですけど」

『ふむ、ならばまずはこちらに』とタマモについていく2人。たどり着いたのはトリイと呼ばれた門のような建物だ。


「ここがどうしたんですか?」

『これがこの地の結界石なのだ。柱に触れて()を流してみてはくれんか?』

「気?」と疑問を浮かべると、タマモが『体から湧き上がる力のことじゃよ』とのこと。ああ、闘気(オーラ)の事かとダンは柱に触れた。

『ま、ここの結界石はサイズが大きいからの。数回に分けても大丈夫――』


「『戦乙女の加護』解放(リリース)

 ゴウッと空気を押し出すダンの闘気それが柱に触れている手から座れる感触がある。だがダンはこれぐらいならと気を負いもせずに続ける。


 ピシッ!


『結界石壊れちゃうから、それ以上だめぇ!』

 タマモはダンに縋りついた。




「へ~、薄っすらと境界線が見える」


 あの後『もう充分ですから!』とタマモに泣きつかれたダンは、そのタマモの案内で結界の境界の場所に案内されていた。『いえ、普通は見えませんからね』というタマモの言葉に、「手間をかけさせてごめんね」と返すダン。

 わずかな光の膜がトリイを中心とした円形に広がっていた。これが結界の範囲らしい。その範囲辺りから木々があったりなかったりしている。


「この結界の中だと木って成長しないの?」

『いえ、魔素を取り込んでいない木ならば、植えれば育ちますよ』とタマモが説明する。



 魔素。魔獣が取り込んだり、魔法の源となる元素だ。ちなみにダンは魔法があまり得意ではない。



「とりあえず土地の大きさは大体把握できた。それでここに家建てても大丈夫かな?」

『大丈夫ですが……、ここに職人なりを呼ぶのですか?』

 タマモはいやそうな顔をする。『というか獣顔なのに表情が良くわかるんだよねすごいなぁ』とダン。


「大丈夫、いいモノがあるんだ」

 ダンはゴソゴソと1と刺繍されたマジックバックから探して抜き出した。

 その手には模型の大型ログハウスが乗っていた。

『ふむ、何かの魔法? がかかっていますね』

「そう、魔法道具なんだよね。あ、リルも僕の後ろに。いくよ~」


 ダンはそういうとログハウスの模型を地面に置いてから屋根の四隅をつつく。そしてダンが素早く離れると同時に、そのログハウスの模型が光を放ちドンドンと大きさを増していった。

 そして光が収まったころには普通サイズの大型ログハウスが目の前に建っていた。


『ほう、これはなかなか立派な』

「すごいですダンさん」

「いえ、これ偶然手に入ったんですよ。まさかこんなのがあるなんてなぁ」


 *


 数カ月前の王都のとある場所。とある時。

 気絶から回復した男が「うちの家宝がない!」と喚いていた。


 そんなとある貴族の次男が居たとか居なかったとか。

マジックバッグや魔法道具を取られた貴族のボンボン。

家宝のモノであったが、ダンによって追跡の魔法が破壊されたため、

(刻印のような魔法。細工好きなダンには破壊するだけなら容易い)

所在が掴めなくなっているw




読んでいただきありがとうございます。

順次公開していく予定ですが、これより先の話を見たい方は


アルファポリスでの投稿ページ

https://www.alphapolis.co.jp/novel/872180522/8274942

にてお読みください。


よろしくお願いいたします。

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