やらかした原因を発見する。
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魔法王の言葉に全員が白い目を向ける。
しかしいまだハイテンションな魔法王はその視線に気づかずに饒舌的に説明を始めた。
『魔法使いは攻撃・防御・補助を行える万能者! 唯一といっていい欠点は、魔力が尽きたらその能力の行使が行えない事だ』
「まあ! 鍛え方が足りてないのかしら?」
「ウェンディ……。まあ鍛えた体が裏切るわけじゃないからいいんだけども、やっぱり普通の魔法使いはそういう存在、認識なのね」
『魔力を回復する手段はいくつかあるが、まず基本的な回復手段は我々の周りに漂う魔素を呼吸と共に吸い、体の中で魔力を生成する方法。『消費して回復する』ことを繰り返すと、魔力生成器官である『魔臓』が鍛えられる!』
「やっぱりそこは鍛えるなんだ」
「『繰り返し使い鍛えることで魔力を貯める器が大きくなる』。エルフの里で教えていた時の言葉ですが、なるほど理論的な言葉で説明されると分かりやすいですね」
『次は食べ物からの摂取。これは食べ物に含まれた魔素を取り込むことで、その魔素を自らのモノとする方法だ。この延長線上で魔力回復薬による急激な魔力の回復が行える! しかしこれは高濃度の魔素を一時的とはいえ身体に取り込む方法で、連続使用や負荷が大きすぎて最悪『魔臓』が機能不全を起こすこともありうる』
「「あ~、ポーション中毒か」」
『そして、これは私が冒険者としてダンジョンに潜った時に実体験をして知りえた事だが……。ダンジョン内の高濃度魔素は呼吸だけではなく、身体全身から取り込むことが出来たのだ!』
「どういうことでしょう?」
「ん~。高濃度『さんそ』で満たされたところだと怪我の回復が早まったって聞いたことはあるけど……、そもそもが魔素ってのがよく分かんないわ」
『しかしダンジョン内に長くとどまっていれば魔物に襲われるは必定。だが魔力を作り貯めるためには『魔臓』を鍛える必要があり、それは魔力回復薬を直接摂取する方法では達成が出来ぬ。私も魔力を鍛えるために様々な方法を試した……、魔力回復薬を大量に煮詰めた部屋の中で過ごす。ということもした』
「大量……。かなりお金が掛かりそうですね」
ウェンディのつぶやきにダンも頷く。魔力草とも呼ばれる魔素を多く含んだ薬草のエキスをとにかく煮込んだもの(ダン視点の話で、実際には繊細な調合と時間を掛けたエキス抽出が製法である)が魔力回復薬だ。そういった原材料を使った物なので1本で金貨1枚は最低でもする高価な物となる。高級なものとなれば更に金額は高くなるのだ。
『結果はいつの間にやら私は意識を失っていた。次に目を覚ました時、セレスの笑顔とどこから調べてきたのか魔力回復薬の値段が掛かれた紙――ヒッ』
なにやら記憶を思い出していた王様が悲鳴をあげる。よほどセレスという人物と魔力回復薬の額面が恐ろしかったのだろう。
「というか部屋で大量に煮詰めたってことは――。王様、よっぽど運が良かったみたいね」
キョーコがその時のことを頭の中で考えてそう言った。
密室内で液体を大量に煮詰めるということは、内部の酸素消費と気化した成分が充満するということだ。早い話が酸欠。一酸化炭素や、人体が吸引できない気体の充満した部屋の出来上がり。
実際は更にやばい状態になっていた王様を発見したセレスが、付きっ切りで回復魔法を駆使していたというのが真相だが。
頭を振るい、ゴホンと咳払いをして改まった魔法王が再び口を開く。
『――ともかく。そういった失敗をしながら試行錯誤をしていた私に、一つの光明が見えたのだ』
『それがコレ』とゴリアテをポンポンと叩きながら魔法王が言う。
『ゴーレムでありながら魔法を行使し、さらに魔素を吸い込み魔力を生み出す。そんなゴーレムが出現したダンジョンの噂を聞きつけ、私は私財を投げ打ちそのゴーレムの回収を依頼した。……なぜか分かるかな?』
「「「狂人の考えは全く分かりません!」」」と思わず口から出掛かったが、それで機嫌を悪くして会話が終わってしまうと問題だったので全員で言葉を飲み込む。
『さまざまな実験をした。と言ったが、その中で『魔石に囲まれてみる』というものも試してみた。まあ結果は魔物から魔石を取り出した時点で、その蓄えられた魔力をじわじわと放出するだけで終わってしまったのだが。――おお、イカンイカン』
なにやら魔法王が頭を振っている。
『『『たぶん魔石の請求書でも突き付けられたんだな?』』』と今までの会話の流れからオチを読む。
『魔石は、やはり生きた魔物の中にある時は我々の魔臓と同じ働きをするのだろうが、死亡した魔物から素材として取り出した時点で魔力を放出しかしなくなる。だがさすがに生きた魔物の腹を裂いてその中で過ごす、ということは不可能だろう? しかし、そこでこのゴーレムだ!』
説明していて更にテンションが上がったのか、目が爛々と輝いて見える。
まあアンデッドだからか、最初から変な闘気のようなものを発しているので、微妙にぼんやりと光っているのだが。
『ゴーレムのような無機物系魔物ならば上手くさばいて再生させない処置を施せば、ずっと中に居ることが可能と考えたのだ! だが普通のゴーレムはダンジョンから出すと魔素を吸う事はしなくなる。しかしこのゴーレムは単体でも魔素を吸い魔法を放つ特殊体! 私にとっての価値は計り知れないというもの。いくら財を使っても手に入れるべきと考えても不思議ではあるまい?』
正直ここまで王様の普段の生活態度を、その本人から聞かされているダン達は『あんた普段から散財しすぎなんじゃない?』と思っている。
なんら不思議でも何でもなかった。
『そして! 試行錯誤の末、このゴーレムの内部だけという限定空間ではあるが、私は人工的にダンジョンを再現することが出来たのだ!』
そう言われてダンは滅多に使わない魔力感知の感覚を意識する。
するとダンジョン内の魔素の濃さをまず感じて、ついで問題のゴリアテを見てみた。
そこには――
「ん~? 魔素は確かに濃そうだけど……、アレって周りと違うかな?」
ダンの目にはゴリアテの中と外の魔素の濃さは、そう違わないように感じられる。
とはいえ、あくまでもダンの主観的な感覚の話であり、そもそも魔法は立ち止まった状態でしか鍛冶魔法ぐらいしか使えないダンだ。自分自身の感覚をあまり当てに出来るものではないように考えている。
「ウェンディさんやキョーコさんはどう見ます?」
「断言出来ませんが……、ダンジョンの中だからなのか同じように見えます」
「というかその試行錯誤の結果が、この塔を含めてダンジョンを作っちゃったんじゃない?」
キョーコがズバッと言ってしまったので、ダンもウェンディも『やっぱりその可能性が高いかぁ』と遠い目をする。
そもそもが魔法王を含めこの階に居た比較的意思がはっきりしている3人にしても、『自分達がダンジョンに居る』と認識していないことから、『ゴーレム内部をダンジョン化』したタイミングで、この塔を含めた周辺がダンジョン化した可能性が極めて高い。
「……これ教えてあげた方がいいんじゃないかな?」
「そう、ですね。ただ――」
「『あなた達はアンデッドです』って言って、『はい。分かりました』とはならない気がしますね。自分達で気が付かないと」
戦闘をして自意識が覚醒している今ならチャンスはあるかもしれないが、「決定的か?」と言われるともう一押しかダメ押しの二押しくらいは欲しいところだ。
『そして私クラスの魔法使いがこの中に入れば!』
魔法王の言葉と共に魔力が広がっていくのが感じられた。
「イリア。ただいま帰還しました!」
そのタイミングでイリアがダン達の下に戻ってきた。肩には白いゴーレム、イリアの『妹』が乗せられている。そのイリアの妹が顔を上げて言った。
「急速な『マギ』反応を検知。『マギ』を使った攻撃が予測されます」
その言葉が切っ掛けではないが、魔法王の周辺にいくつもの属性魔法で作られた『槍』が浮かんでいる。その数はざっと見た限り20本を超えていた。
『このとおり! 圧縮した各種属性のランスも、この数を用意したとて端から魔力が回復していくわ!』
むっふーと鼻息が荒いのは魔素を呼吸で吸い込んでいるからだろう。
さらに魔法王は手をダンへと向ける。
『お主がこのパーティーのリーダーであろう? 私のゴーレムを奪うなど、よほど負のカルマが多いと見える。そんな相手に覿面な属性魔法をくれてやろう。『魔力調整』!』
「皆さん離れてください!」
ダンは狙いが自分だとして、全員に離れる様に指示。範囲魔法の場合は巻き添えを食う可能性があるからだ。
そして魔法王の『魔力調整』が終わったのか、その手に魔力が集まる。
『仲間は庇う、か。なら多少のダメージで済むかもしれんな。いくぞ! ランスショット! そして聖なる光を――ホーリーライト!』
ランスショットの掛け声で放たれた属性魔法の槍がキョーコやウェンディだけでなく、イリアや戦闘の推移を見ていたライやリンなどの後方に居たメンバーにも向かっていく。
「やらせない! 手数で落としちゃる。マルチアロー!」
「こっちも見てるだけじゃない。アーツ『オーラアローレイン』!」
とっさの事だったからかキョーコの放った魔法は自身の慣れた火属性が多かったが30本近い複数属性の魔法の矢を放つことに成功した。そしてクローディアも迎撃をするために闘気で作り出した矢を放つとその矢が分裂していき、キョーコの放った魔法の矢と魔法王のランスが交差するとぶつかり合う。
衝突の際に小さな爆発が起こり、それが消えると魔法王のランスは全て消えていた。
2人掛かりで1人の放った魔法に対処した形ではあったがうまくいったと笑顔を交わす。
「あああ~!?」
『ぐあああ!?』
唐突に聞こえてきた声に全ての戦闘が一時中断される。
声のした方を見るとそこにはダンと魔法王の姿があった。
「「「ダンさん!」」」
『『王様!』』
それぞれがリーダーの元へと駆け出した。
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