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魔法王ルフ・クロフォードとの戦い

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「王様? この白いゴーレム、イリアは私達の仲間なの。諦めてくれると助かるんだけども?」

『その恰好に魔力の動き。娘よ、そなたは魔法使いなのだな』

 キョーコのわずかな望みを掛けた説得もどこ吹く風。魔法王は自分の配下が戦闘を始めると同時に、自らの前に現れた人物を観察する。


「いや、確かに私は()()()()()得意だけども、ね。ウェンディはどうかなぁ?」

「あらキョーコさんは私がパーティの回復要員(ヒーラー)だと知ってるじゃありませんか」

 自分はともかく隣でおっとりとした顔で笑って言う仲間に、キョーコは内心で首を傾げる。

「最近は()()()()方が多くなってないかな、ウェンディって?」


 魔法王はその軽口を叩く相手を見て、虚偽(ブラフ)の可能性も考えて観察する。

 装備からして身軽な布装備の上に急所を守るための胸部を覆う革鎧を身に着け、手にした武器は長柄装備ではあるが杖としても使えそうなやや特殊な形をした武器だった。

 この装備で前衛を務めるとは思いにくいし、何よりも魔法王の持つユニークスキルの『魔眼』がその身に備えた魔力の多さを視覚へと映している。

 それらから判断するに目の前に進み出た2人は、()()()()()()使()()としての特徴と同じであった。


『アレックスもエミリーも相手をしていて、こちらに回るのは難しそうだな。ふふふ、久々の実戦であるが、私も自ら動くとしようではないか』

 そう言った魔法王は魔力を自身の周囲に広げると、キョーコとウェンディを目標と定めた視線を送る。


「王様が戦う。って、よほどすごい状況じゃなければありえなさそうなんだけど?」

「まあ人間の貴族も、そういった訓練を幼少期から受けると言いますから、全くない訳ではないのでは?」

 キョーコとウェンディも火と水の玉をそれぞれ浮かべると、いつ撃つべきかタイミングを計る。


『ふむ。()()()()()()()どおりの属性魔法であるな。ならば私も『魔力調整(マナチューニング)』!』


 なにやらスキルを使用する宣言をする魔法王。そして周囲の魔力が変化すると、まず水が、続いて火の玉が左右へと浮かぶ。

「え? 複数属性同時使用!?」

「いえ『同時』ではなく『順番』に発動していました。それでもその発動が滑らかすぎて『同時』に見えたんだと思います」


『エルフのお嬢さんが正解じゃよ。『魔力調整』。そもそも()()()()はあったとしても、ほとんど全ての者が()()()の魔法を使えないなんてことはないからのぉ。私のように魔力を変質させてそれぞれの属性に合わせる『魔力調整』は、練習をすれば()()()()使()()()様になるスキルだからな』


 サラッと言うが、魔法王の発言はどこかダンを思い出させる発言であった。

 発言する内容が闘気(オーラ)か魔力の違いなだけで。


「でも属性は変えられても、その魔法の制御が出来なけりゃ意味はないんじゃない? 火の玉(ファイアーボール)!」

「出来れば相殺してくださいね? 水弾(アクアショット)!」

 キョーコとウェンディはそれぞれ4発の火と水の玉、合計8発を一斉に放つ。


『ふむ』と自分に向かってくる魔法をしっかりと見た後、魔法王は周囲に浮かべた水と火の玉をキッチリと同じ数操作して火と水で互いを撃ち落としていく。そして1回目の攻撃を双方終えると、魔法王は次は自分の番だとまた周辺に魔力を放出する。


『ならば数を増やしてみようか。それと属性もな』

 そう言った魔法王はまた『魔力調整』を行い、魔法王の周囲には火と水と石と雷のそれぞれで出来た玉が浮かんでいた。風は視認がし辛いが、微妙に向こう側の空間がゆがんで見えるところに風属性の玉が浮かんでいるのだろう。


「これは――。キョーコさん、()()()()()()武器で打ち落としましょう!」

「いや脳筋。――仕方ない、私のユニークスキルを使うわ!」

 様々な属性攻撃を見て持っている杖に闘気を込めながら迎撃しようと構えるウェンディに、キョーコは今まで使ってこなかったユニークスキルの使用を宣言する。


「いくわよ! 『虹色の魔力』!!」

 そう宣言したキョーコ。


 普通の視界を持つ者には大した変化は現れなかったが、魔法王とスキルを使ったキョーコ自身はその違いに驚いていた。

 魔法王から見たキョーコは、絶えず変化する虹模様の魔力を放出しているように見えた。

 一方キョーコは前髪が視界に入っているので()()を直に見ることとなった。

「え? 髪の毛が虹色に成っちゃった? なんかグラデーションが絶えず変化してて、目がチカチカする!」



 虹色の魔力

 ≪それは魔力をコストとして支払う行動を、他の魔力に置き換えて行うことが出来る≫

 ステータス上の説明を抜粋。


「私はカードゲームの駒か! てか本当に『とれかげー』でありそうな説明文ね」



 戸惑っていた様子のキョーコだが、落ち着きを取り戻すと自身の魔力へと()()()()()

「私が見ている属性魔法を――()()!」

 実際にキョーコの目に映る、魔法王の属性魔法をそのままイメージして各種属性玉を浮かべる。


『ほう。それが希少スキルの『虹色の魔力』か。なるほど『魔力調整』の為の時間もいらずに複数属性を同時に使えるというのは羨ましい限りだ』

 魔法王はキョーコのスキルに心当たりがあったのか、魔力の質と変化した髪の色をしげしげと眺めている。


「よそ見してていいのかしら?……ウェンディ、悪いんだけど風の属性だけ見えづらいから、それだけ迎撃お願いしてもいい?」

 浮かべた属性魔法をチラつかせつつ、キョーコは小声でウェンディへと協力を依頼。ウェンディが小さくOKサインを送った。


『はっはっは! スキルで変化させたものと、スキルを使わずに変化させたもの。ぶつけ合えばどうなるか知りたいぞぉ!』

「あー、もう! マジで『魔法狂い』なのね。いっけぇ!」

 哄笑する魔法王にややげんなりとしたキョーコであったが、ウェンディの合図も受けていたので遠慮せずに全ての属性魔法玉を魔法王へと撃ち出した。

 笑っていた魔法王もキョーコの属性魔法が動き出すのを見てとると、すぐに自分も魔法を撃ち出した。


 打ち付けあった魔法は反対属性となるものはソレに、それ以外は同じ属性同士をぶつけ合って相殺することが出来た。ウェンディも頼まれた見えにくい風属性の魔法へ、水魔法を当てて打ち消すことが出来ていた。


『はっはっは! なるほどなるほど。しかし私の魔力がいくら多いとはいえ、1対2はちと大変――!?』

 愉快愉快と笑っていた魔法王が急に真面目な顔になって後ろを振り返る。


「さあ、イリアが――『イ号』が助けに来ましたよ」

「イ、ゴウ……? 同型、か?」

 そこには黒いマントを羽織ったイリアが、ゴリアテの後ろに囚われていた白い人型ゴーレムが囚われている筒の傍に居るのが見えた。

 黒いマントはダンの入れ知恵で、前もって()()イリアの印象を与えておいて、戦闘が始まってイリアへの意識が薄れてきた瞬間に被ることで認識しづらい状態を狙ったものだった。


 そして見事イリアはゴリアテの後ろに回ることに成功する。


「むぅ、何やら硬い素材ですね」

 コツコツと握った拳で強度を確認しながら、イリアが腰の袋からジャーキーを取り出し口にくわえて構える。

『待て! それは大切な実験装置――』

「オーバーロード! 『いりあくらっしゅ』!」

 魔法王の制止を聞かずに、イリアが闘気を込めた掌底を筒へと打ち込む。


 イリアの一撃を受けた筒はそこを起点にヒビが入っていき、ある程度ヒビが進んだ段階で筒の中に満たされていた液体の重さで外向きへと圧壊した。


「うわっぷ」と液体に溺れながらもイリアは白いゴーレムをキャッチする。

「――かくほ~!」

「でかしたイリアさん!」

『ぬぅ。おのれこうなれば!』

 イリアが大回りで仲間の元へと戻ろうとするのとは対照的に、魔法王はゴリアテの胴体へと向かって走っていく。

 そしてゴリアテに乗り込むと、そこで何かの操作を行った。


 ブン! とゴリアテを中心に光が広がる。

 『一体何をしたんだ?』というキョーコとウェンディの表情に、魔法王が応じる。


『白いゴーレムがおらずとも、ある程度の魔法の素養がある者が座れば装置としては使えるのだよ!』

「いったい、何の装置なのよ()()!」

 キョーコ質問に、よくぞ聞いてくれたと魔法王が答えた。



「これは魔力を素早く回復させることのできる魔力集積器――。その名も()()()()()()()装置だ!」




 その瞬間、魔法王と戦っていた者と控えて戦いを見守っていた者は揃って白い目をしていた。

黒目が無くなった例のアレのように……

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