近衛騎士長アレックスとの戦い
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騎士の装備をした男は王様からアレックスと呼ばれていた。
装備した鎧や盾は真っ白な色で、携えた剣も青白い輝きを備えた美術品ともいえる剣だった。
しかし見栄えだけを重視した装備という訳もなく。
「うお! コイツ見た目以上に、はえぇぞ!」
「ぬあー! 盾でこっちの視界をキレイに遮ってくる~!」
『ははは。まだまだ本気では無いのだがな? とはいえ手加減するのも難しい技量の持ち主だ』
全身鎧を着ているというのにその身体の動きは素早く、ファーニとマロンの2人を相手取っても常にどちらかの眼前に盾を構えて牽制し、もう一方へは背筋の凍るような鋭い剣さばきで的確に急所や武器を持つ手を狙ってくる。
ひょっとしたら相手をしている2人の背丈が低いからなのか、その余裕の表情から見てとると、同じような背格好の相手だった場合は、足元すらも狙ってきそうな雰囲気がアレックスにはあった。
「ちっ! マロン! あたしが引っ掻き回す。2人で挟撃すれば攻撃だって通るはずだ!」
そういうやファーニが火の加速の詠唱を開始した。
だがそれを見たアレックスは、
『ほう? 火の加速、か。なるほどドワーフならば土か火に適性があるのも頷ける。しかしクロフォード王国の近衛相手には拙い魔法剣だ!』
アレックスは自身から魔力を放出しつつ詠唱を行う。その速度は速く、ファーニの剣に火が宿るよりも速かった。
『舞え! 氷の魔剣よ!』
アレックスの魔力が氷の塊を生み出したかと思えば、その氷はあっという間に成長してその姿を剣へと変えた。そして生まれた氷の剣はアレックスを中心に空中に漂っている。そしてアレックス自身が持っている剣も氷がまとわりつき、その剣身を大きな氷が覆って凶悪な形をした大剣と呼べるサイズのものへと姿を変えていた。
「やっべ!」とファーニは慌てて火の加速を中断。発動する魔法を下の階で生み出したフレイムエッジに切り替えようとする。
『遅い! 氷の魔剣よ、舞い踊れ!!』
アレックスはそれを隙と見て、周りに漂っている剣と共にファーニへと突撃していく。
「いかせ、ないっ!」
マロンがマジックバッグから槍を引き抜き、渾身の力を込めてアレックスへと突きを放つ。
しかしアレックスは冷静に手にした盾を斜めにし、突き殺さんばかりの槍を受け流すことでこれを対処。
同時にファーニへと距離を詰めて手にした剣を正面、漂っていただけの剣はその切っ先をファーニに向け、その左右から2本づつ、計4本と1本の氷の刃がファーニへと襲い掛かった。
「ぬうぅ、りゃあ! 荒れ狂えあたしの火よ!」
ファーニの双剣が火柱を上げ、火を噴く双剣をそれぞれで円を描くように回す。ファーニを中心に描かれた2つの円が左右から襲い来る剣を打ち落とす。しかし剣はまだ1本残っている。
さあどうする? という表情をしたアレックスは次の瞬間驚愕の表情を浮かべた。
いや、浮かべたのではない。
腹部に飛び込んできたファーニの頭突きを食らったせいで、自然とそうなってしまったのだ。
ファーニは双剣で左右から来る剣を撃ち落とした勢いのまま、その双剣を後ろに向けて、下の階の戦いでしたように火の加速を超える勢いで前へと出たのである。
違ったのはあまりに距離が近すぎて、双剣を再度構える時間が無かったこと。
そのまま勢いで行ったれと、攻撃方法として頭突きを選択したのである。
「ぬがぁぁ、あったまイテェェェ!」
いくらドワーフの骨が人族よりも固く厚みがあるとはいっても全身鎧を着ている相手に、しかも自分から物凄い速度で当たれば跳ね返ってくる衝撃波それはすさまじいモノであったことだろう。
両手を頭に当てて擦ったところで気休めにしかならないが、それでも剣で頭をかち割られるよりは数段マシと言えるだろうが。
「つうか、マジであたしの頭を切るつもりだったろ? あんた」
『さて? この氷は私の意志の通りに形を変えることが出来るのでな。もしかしたら直前で鈍器のように姿を変えたかもしれんぞ?』
涙目のファーニの問いかけに、アレックスは肩をすくめて答える。
「――ウチを無視しないでほしいなぁ。アーツ『ロングスラスト』!」
アレックスの剣を持つ手の方からマロンがアーツを発動しながら攻撃を仕掛ける。
虚を突かれたアレックスはそれでも手にした剣を使って槍を防御すると、2人から距離を取るようにバックステップでその立ち位置を変えた。
『無視をした覚えは無いが謝罪をしよう。共に素晴らしい腕を持つ戦士だ。それとも私の腕が鈍ったかな? これでも昔は王と共に、冒険者としてAランクとして活動していたのだが……。やはり王城内の訓練では勘も鈍くなってしまうか』
「マジかよ。Aランクってあたしらよりも高いランクじゃねーか」
冒険者におけるAランク。それは一握りの者しか到達できないランクである。そしてAランクで長く活動し、かつ特別な功績を上げたものがSランク認定をされるのだ。逆に言えば一般的な冒険者がなれる最高ランクはAとなる。Sランクに認定される功績には、『単独または1つのパーティでドラゴンクラスの魔物討伐』といった条件が出されるほどだ。冒険者ギルドの看板ともいえるSランクにはとてつもない期待を掛けられるのだ。
『身分を隠しても、さすがにSランクには選ばれるわけにはいかなかったからな』
落ち着いた口調から、見栄や謙遜ではなく事実をアレックスは言っているらしい。とすればSランクに選考されるほどのAランクということだ。
『そうは言っても、君達とてそれなりのランクだろう?』
アレックスの問いに2人して黙る。
『ランクなんて大した意味はないのだから言ってしまっても問題はないはずだが?』
「あ~。ランク、ね」
「ん~む。ま、ウチらの冒険者歴は短いからなぁ」
『ほう? すると傭兵か何かか? あながち盗人という線もありえそうだ』
マロンの『歴が短い』という発言に目を細めるアレックス。
しかしファーニとマロンは「違う違う」と首を横に振る。
「ちょっとした事情で1回ランクが取り消しになったんだよ」
「そうそう。ま、元々Fだったのが再度って話になっただけだから、元高ランクって訳じゃないし」
『事情だと? どんな事情なんだ?』
アレックスの言葉に2人して「「あー、えー」」と言ってから、
「「ゴブリンに――」」
『分かった。言わなくていい』
アレックスは2人の言葉を途中で遮って止めた。容易く想像出来てしまったからだ。
「ま、今じゃ問題なく冒険者をやれてるけどな」
「そうそう。それに2か月くらいでDランクにまで上がれたのは早い方じゃないんかな?」
『――なんだって?』
マロンの会話に出てきたランクにアレックスの顔から表情が消えた。
「おいマロン。あっさりバラしてるぞ?」
「え? あ、ゴメンゴメン」
『待て。もしかして他のメンバーも?』
「あ~、まあそうだな。全員Dランクだよ」
ファーニの言葉にアレックスの動きが止まる。
さすがにこの状態で不意打ちをするわけにもいかず、アレックスが動き出すまで2人して待った。
『――Dランクぅ!?』
思いのほか早く意識を取り戻したようだが、その何とも言えない表情をするアレックス相手にどう戦いの続きを始めたもんかと顔を合わせて考えてしまう2人だった。
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