ゴーレムを検分する
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ゴーレム達を掃討し終わったダン達は、広い部屋の四方に見えている扉の部屋を探索した。
どうやら中央の広い部屋が実験の場で、塔の外壁と実験の場の間に倉庫が作られているようだった。
おそらく塔の外から何かあった際に実験の場に直接被害を受けない防御的な意味を持った部屋としてだけではなく、何を実験していたかは分からないが実験の場で何かあっても、それを外に伝えないための干渉的な意味も持たせた部屋だったのだろう。
よく分からない魔物の素材や鉱石、魔石や壊れた魔道具などがある程度種類別に分けられた棚が作られただけの、本当に倉庫として作られた部屋であった。
時間も下の階で探索に使ったこともあり、残すところ情報通りならばあと2階上がれば最上階に到達するということ。それとダンの読みでは、1つ上の階でダンが探している情報が見つかる可能性が高いということもあり、しっかりと休息してから調べようと今日の探索を切り上げて、倉庫の一つを片付けて休息場所を確保しようということになった。
倉庫の棚の中の素材をマジックバッグに全て収納して、作り付けの棚の一部を破壊しスペースを確保するダン達。
「大体、こんなところですかね?」
一通り部屋の片づけを終えて、1階でも使った簡易結界を部屋に仕掛けたダンがぐるりと全員を見渡す。
そこに1人、挙手をしたものが居た。
ポーラだ。
「ん? どうしました?」
「すみません。トイレってどうしましょう?」
ポーラに言われて、「そこら辺で――」と言いかけたダンにキョーコとイリアがツッコミを入れる。
「「デリカシーが無さすぎる!」」
後頭部に平手打ちをされたダンは(全然脅威を感じなかったし、実際痛くもなかったが)、頭を擦りつつそんなツッコミを入れた2人に向き直る。
「ひどいですね。というか長いダンジョン探索だと、食事と休息とトイレは付いて回る問題なんですけど?」
実際、洞窟型ダンジョンなどでその階層が深いダンジョンだと、ダンが言ったようなことが問題として出てくる。
女性冒険者でフィールドワークとしての採取依頼や魔物討伐などに忌避感を抱くのは少数だが、アンデッド討伐や深い階層などのダンジョンに潜りたがる人数もまた少数だ。
特に男女混合のパーティーの場合、閉所や暗所といった状況が続く洞窟型ダンジョンを探索すると、結成してからまだそれほど立っていないパーティーなどは色々な意味で崩壊することが多い。
男女の『アレコレ』で崩壊するよりも多い理由の一つに臭いが上げられる。
多少の臭いなら問題ないと思うかもしれないが、自身の発する臭いを自分で嗅いだ時と他人が嗅いだ時は互いの認識にかなりの隔たりが生まれる。
それが『男女』という性の違いからでも感じ方が違う場合が多く、高ストレス下になる圧迫感や閉所、さらにいつ現れるか分からない魔物を警戒するダンジョンなどで我慢できずに爆発してしまうわけだ。
なので、事前にそういった事に慣れておくとストレスが溜まりにくくなる。
ダンは兵士時代は割とソロで動いていることが多かったが、こと臭いについては相手がどんなに臭かろうと気にしないように心構えが出来ているし、自身がそういった臭いを出さないように工夫をしているのだ。
具体的には長期移動時にダンが使っている『砂』などが挙げられる。
「ああ、そこら辺でって言っても、この部屋の中は止めましょう。それほど広さがありませんから――」
もう分かったとウェンディに口を手で覆われてダンが黙る。
言われたポーラはモジモジとしながらも言った。
「あ、その、行きたいのはサニーなんですけど」
言われてダンもウェンディも部屋の入り口に立って入ってきていない、その馬体を見た。
ブルブルと震えるサニーは何かを我慢しているように見え――
「確かさっきダストシュートらしきものを見ましたよ!」
「ああ~、サニー、もうちょっとだけ我慢しててね~!」
「サニー。ゆっくりと移動を開始しましょう」
全員がバタバタと実験の広間を再度探索し、ポーラとウェンディとイリアがサニーの馬体を宥める様に擦って気を紛らわせる。
結果。なんとか間に合った。
*
「ふむ。武器自体はそれほど変わってはいませんね」
あの後、食事を済ませ各自で身を綺麗にして寝床を確保している時に、ダンはゴーレムが持っていた武器を以前のゴーレムが持っていたものと比較をしていた。
「ふ~ん? 『かえんほうしゃき』みたいな物に換装してたのかな?」
そんなダンの作業を見ていたキョーコが自分なりの見解を言った。
「ほう? キョーコさん、その『かえんほうしゃき』という魔道具について詳しく教えていただけますか?」
「いやいや、『かえんほうしゃき』ってのは普通の道具で魔道具じゃないですよダンさん」
ないないと手を横に振るキョーコ。
「え? でもコレは間違いなく魔道具ですけど?」
おもむろに武器を分解するダン。剣の柄辺りを分解すると、そこから石のような塊が出てくる。
「……ナニソレ?」
「なにって、魔石ですね。大体の魔道具が使っている源ですよ? これがあるから魔道具はその能力を発揮できる訳でして――」
「魔石? ってことは、あのゴーレム達は王国が改造したのかな?」
「ふむ、改造? でもコレ、元から魔石をハメられるように出来てるようなんですが?」
更にもう一つ武器を分解したダンがその内部を見つつ言った。
その言葉にキョーコとイリアが手元を覗いてくる。
「――言われれば『きかく』物のように揃ってますね」
「ここまで瓜二つだと、職人技じゃあ説明難しそうね? 『こうじょうせいひん』って言われた方が、まだ分かるレベルだわ」
「う~ん」と3人で頭を突き合わせるが誰も答えを持っていないので、明日の探索でこちらも何かヒントが見つかればよしとして、明日へと備えて寝ることにした。
*
「ゴーレムは――復活はしていないようですね」
翌日、朝食を済ませて倉庫部屋から外へ出て部屋を見渡したダンがそう言って皆を手招きする。
「あのゴーレムはここに持ち込まれて、ここがダンジョン化した影響で魔物化したと考えて良さそうですね」
「持ち込まれた……。んー」
ダンの言葉にキョーコは横に居たイリアを穴が開くほどに凝視した。
ダンの周囲でダンジョン化が発生したことは無いので確実とは言えないが、ここのゴーレムが『シナガワ』と呼ばれたであろうダンジョンから持ち込まれた状況は、ダンと一緒に行った『シンジュクダンジョン』での出来事をキョーコに思い起こさせる。
すなわち、ダンジョンボスでありシンジュクダンジョンの核でもあった『イリア』という存在だ。
ここにゴーレムだけが持ち込まれたとは考えにくい。
「うん。それじゃあ上の階に行きますか」
ダンの言葉にキョーコは『出ない答えを想像しても仕方ない』と、上の階へ仲間と一緒に移動を始めた。




