狂王の塔探索 パート1
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≪キョーコサイド≫
狂王の塔外縁部の元貴族の保養地をゆっくりと進む。
保養地の中でもひときわ高い建物の塔を見失う事は無い。一歩一歩、確認するように保養地内を進んで行く。
元保養地という場所だからだろうか、これまで見たような街中の様に一軒一軒の間隔が広くとられている造りとなっている。だからあまり影となっている場所は無い。とはいえそれは全くないという訳ではなく――
「右手! スケルトン3!」
「おう!」
「おっけー」
発見したウェンディの声にファーニとマロンが先制とばかりに飛びかかる。
「上から複数ゴースト接近! 牽制よろしく」
自分とサニーを守ってくれている3人へ声掛けしながら、両手をそれぞれゴーストへと向けて闘気を込めた手の指先から魔力をコントロールして放つ。
「指先から……ファイアーアロー、10矢!」
全ての指先から火の矢が撃ち出される。それは小さいが一つ一つの込められた魔力は通常のものと同量。圧縮された火魔法であった。
追尾性も付加されていたのか、ポーラ達の槍に牽制されていたゴースト全てが火の矢、それを覆っていた闘気に弾き飛ばされるように攻撃を受けて消えていく。
「た~まや~」
「キョーコ……花火で例えるのはどうかと思いますが」
たまたまキョーコの近くまで引いていたイリアが、キョーコののんびりとした掛け声に引きつつもツッコミを入れていた。
「ふふ~ん、送り火代わりと思っておけばいいのよ。ダンさんの話だと、ここのアンデッドは無限湧きするみたいだし」
「その『アンデッド』ってところがイリアとしては納得いくモノではないのですが……。スピリチュアルな存在かと思えば、本当に動いて襲ってくるとは。B級映画ですか?」
「あ~、とんでもファンタジーだからね~」
イリアの主張にキョーコが遠い目をしながら答える。
そんなイリアたちの側方から新たなアンデッドが姿を現した。
まだ体の肉体がいくらか残ったアンデッド。
ゾンビだ。無謀な冒険者か、不幸にダンジョンに入ってしまった旅人の末路か。
「イリアよろしく!」
「キョーコ任せた」
お互いがお互いを見やる。
「いや、その打撃力でぶっ飛ばしてよ」
「断ります。ゴリアテだって使いたくありません。キョーコの魔法で遠距離攻撃を提案します。手で触れなければセーフでしょう?」
ゾンビ。アンデッドの一種でスケルトンと成る前。生者から骨に至る過程の途中。つまり――
「腐肉なんか燃やしたくないわよ!」
「こちらだって素手で相手をしたくありません! ゴリアテで殴っても、その後の清掃メンテナンスを誰がやると思ってるんですか!? あ、キョーコが念入りにやってくれると?」
「絶対にノウ!」
女性冒険者が嫌う魔物ワーストに入る。
ちなみに上位にはゴブリン、オークなどが入るランキングだ。
理由は、まあ、生態からして女性が受け入れがたいものだから。
≪キョーコサイドアウト≫
そんな言い争いをしている2人を置いて、ポーラ、ライとリンが槍を突きだす。ついでにサニーも後ろ脚で強烈な蹴りを放って攻撃していた。槍はともかく、脚で攻撃したサニーはゾンビの首を狙って一撃で倒し、未だにギャ-ワーと言い合いをしている2人の目の前に行くと、ガッと石畳を後ろ脚で蹴り付け、馬蹄に残っていた腐肉を吹き飛ばした。
「あ、ごめんサニー」
「すみませんでしたサニー」
2人ともサニーに謝る。ブルルと『しょうもないことを言い合うな』と言っているような雰囲気でサニーが隊列へと戻った。
「しかし、ダンさんは本当に塔へと入るつもりなのかしら?」
手斧に付いた腐肉を掃い、残りの手でスケルトンの骨を砕きながら傍らに居るロウキへと問いかけるリル。ロウキはスケルトンばかりを相手にしていた。やれなくはないが、どうも腐肉の弾力もない感触がイヤだったらしい。
「うむ。じき夜になるしな。さすがに休息を取らなければ体力も回復しないだろう」
「ええ、それはそうなのですけど。その休息が行えるかが問題だと思うんですが?」
リルの問いかけに、ロウキはキョトンとした顔で何を言っているのか分からないといったように首を傾げる。
「ダンのような猛者が本気で縄張りを主張すれば、格下の魔物など近寄ってこないだろう?」
ロウキの問いかけに、逆にリルが何を言っているんだという表情をする。
そして指をクルクルと回して周りを見る様に促す。
「今、どういう状況か分かってます?」
「どういう? アンデッドに襲われているだろう?」
本気で分かっていないロウキにリルがツッコミを入れる。
「ええ、襲われていますよね」
「だから蹴散らしているのだろうが」
「じゃあ、威嚇して追い払ってみては?」
リルに言われて、その手があったかとポンと手を叩くロウキ。そして強烈な気配を立ち上らせながら大きく遠吠えをした。
『ウオオオーン!』
恐怖の咆哮
獣型の魔物が多用するアーツのような技だ。威嚇することにより相手に委縮と『立ち去りたい』と思わせることが出来る咆哮だ。
が――
「……なあ、リル殿?」
「ロウキさん、手が止まってますよ?」
「なにか、余計に寄ってきてないか?」
そう、タウントのような挑発系アーツとは逆の性質の恐怖の咆哮なのだが、その効果とは正反対にアンデッドがぞろぞろと寄ってくるのだ。
「そりゃ、あれだけ闘気を放ったら、アンデッドだったら寄ってきますよ」
アーツのような技。そこに元魔物ゆえに意識していなかったが、咆哮にも闘気が乗っていた。そしてアンデッドは生者の生気に寄ってくる性質がある。たしかに闘気を放つ技ということで、超至近距離ならばダメージを負わせることが出来たかもしれないが、ロウキが求めたのは自分の闘気の大きさに相手がビビることであって、攻撃の意図はなかった。でも相手に感じさせるために闘気は咆哮に乗っていたわけで――
「ちょ! なに他のとこのアンデッドも呼び寄せてやがるんだロウキ!」
「え?」
「あれだけ派手に闘気を広げたら感知されるに決まってるじゃないですか!」
「あ」
「なるべくアンデッドの感知に引っかからないように戦っていたのに!」
「ご、ごめん」
全員に責められてしょんぼりとするロウキ。
そしてリルがそんなロウキに声をかける。
「ね? ロウキさんでこれですから、いくらダンさんが強くてもアンデッドは寄ってきちゃうんですよ。下手をすればこのダンジョン全てのアンデッドが寄ってくるかもしれません」
「……なんで止めてくれなかったのだ?」
「え? 説明するよりも実際に目にした方が分かりやすかったから?」
近づいてくるアンデッドを倒しながら、そう答えるリル。
確かに実際やってみた結果を目にしたロウキは先程リルがしていた心配が良く分かった。分かったのだが、
「分かっていたなら、もうちょっと押さえて試して欲しかったですね」
別荘の一つの屋根から飛び降りてきたダンがリルに言う。
先程まで微妙な死角や、ほかのアンデッドを誘因しそうな位置に居たアンデッドを倒していたのだ。
奇襲で。
これは正直、ダンしかできない裏技のようなもので、1人パーティーの進行する方向をカバーしていたのだ。
つい先ほど、無意味となるまでは。
「仕方ありません。各自速度を上げて塔まで突っ切りますよ!」
そういうとダンは先頭へと立ち、走るような速度で進み始めた。
他のメンバーも遅れじと付いていく。
こうして『狂王の塔』探索がスタートした。
……まだ肝心の塔に到着出来ていないが。
探索と言ったな? あれは嘘だ!
……やめて~、石投げないで~><
ダンジョンは外縁部も含めて、
1つのダンジョン名で呼称されることが多いですね。
て、手抜きとちゃうよ?




