ウルスラの街を出発する
翌朝、異常な疲れを感じる体をベッドから起こすダン。
「いや、ていうかコレは」
何故か同じベッドにダンの他に3人乗っている。
深く考えることを止めたダンはそのまま起き上がると部屋から出た。
身体を拭くためのお湯を貰いに受付に行くと、そこで何故か従業員のにこやかな顔に迎えられた。
「? すみません、身体を拭くためのお湯を買いたいのですが」
そういうと従業員の顔が赤みを帯びていく。
「体調不良ですか?」
「い、いえいえ。お湯ですね、お部屋までお持ちしますよ」
ダンから銅貨5枚で支払いをされた従業員がそそくさと奥に引っ込んでしまった。
『部屋の番号も告げずに客の顔を覚えているとはなかなか優秀な従業員だなぁ』とダンが感心しながら部屋に戻って体を拭く布などを準備する。
「うあ? ダンさん?」
クローディアがベッドから寝ぼけたまま起き上がってくる。一応狩人の習性なのか、物音に反応したようだ。それでも熟睡していた場合は起きることは叶わなかったようだが。
ダンが小声で返事をした。
「おはようございます。そろそろそちらの2人も起きてくるでしょうね? 身体を拭くためのお湯を人数分頼んできましょうか?」
そろそろ窓の外も明るさが増してくる頃合いだ。よほど疲れていなければ残りの2人、リルとポーラも起きてくるだろう。
「ん~? お願いしあす」
そう言って再度ベッドに倒れこむクローディア。街中だからか、はたまた仲間が近くに居るからか。なんともだらしない狩人がそこに居た。
「ふむ?」
一つ考え込んだダンが瞬間的に指向性を持たせない殺気を放ってみた。
「「「!?」」」
するとベッドに寝ていた3人が飛び起きてきた。しかし頭はまだ覚醒していないのだろう。ダンが放った殺気はすでに引っ込んでいるから、眼をしばたかせて辺りをキョロキョロとしている。
「おはようございます」
なにやら部屋の外でもバタバタと音がする。
「まだ皆さん眠たいですか?」
ダンの問いかけにブルブルと首を横に振る3人。外の音がバタン! と扉を勢いよく開閉した様な音に変わり、ドタドタとこの部屋に近づいてくる。
「なンか妙な気配が!」
マロンが一気に扉を開けて入ってくる。必要最低限の胸当てを装備した状態で、小剣を片手に飛び込んできた。
「ほうほう、それで他の人は?」
「え? 皆、準備出来たら来ると思いますが?」
ダンがいつもの感じで返事をするので呆気にとられるマロン。そんなマロンを指差ししながらダンが言った。
「さすがに服とスリッパは変えた方がいいのでは?」
ハッとしてマロンが足元に視線を向けて、気づいた瞬間自分の部屋へと踵を返そうとする。
「ゆっくりでいいですよ~。さっきのは僕の殺気ですから」
その言葉にジト目になるマロン。見る相手は当然、発言相手のダンだ。
『なんでこんなことをした?』と目が言っている。
「いえ、僕的には目覚ましのつもりだったんですがね?」
『きゃ~! 息してないわ~!』
どこかから聞こえてくる悲鳴。
微妙に汗を流すダン。
ニッコリとほほ笑むマロン。
「目覚ましのつもりだったと? 目覚めさせなくするつもりの間違いじゃなくて?」
「あ、はは、ちょっと救助してきま~す」
朝から一仕事してしまったダンは朝食を食べるため、食事処に移動した。
既に席についている他のメンバーに声を掛ける。
「おはようございます」
しかし返事がない。
「あれ? どうしました皆さん?」
よく見ると全員ちょっと顔色が優れない感じだ。
「もしかして眠れなかったとか? これから次の街に向かうのに大丈夫ですか?」
パンやサラダをもそもそと食べるメンバー。ふと食事が合わないのかとダンも口にしてみるが、別に普通の食事だったので良く分からない。
「いや、ダンの朝の行動が問題だったのでは?」
イリアが言葉を発する。周りのメンバーも、ウンウンと頷いていた。
「朝のって?……あ~、アレですか? いや、今後の予行演習みたいなもんだったんですけど?」
『予行演習ってどこが!?』と書いてあるような顔でダンを見る一同。
しかしダンはシレっと言った。
「これから森を抜けるんですけど、5~6日は掛かると思いますから。野営中の心構えというか、訓練?」
「え? 森ですか?……我々が向かうのって、ベタルじゃなかったんでしたっけ?」
ダンの言葉にウェンディが反応した。
本来、ウルスラの街からベタルを目指す場合、まず西の街道に出て、そこから南西に向かい、途中の分岐で北西方向に向かうのが、本来のルートなのだ。
そのルートならば街道を進むため、比較的安全な道と言える。間違っても森を抜ける道など無い。
「そうですよ? 次の街はベタルですけど……、あれ? 僕、違う街の名前言いましたっけ?」
ダンが不安そうな顔をするので、「間違ってない」と答えウェンディが確認するように聞いた。
「――街道を通るんですよね?」
「え? 真っすぐ進むに決まってるじゃないですか」
念を押すように聞いたウェンディの言葉を、ダンはあっさりと否定した。
先程の街道、実はある場所を迂回するように作られていた。そこは――
「迷いの森じゃないですか! あんなところを進むんですか!?」
「迷い? 普通の森でしたよ? まあ、ちょっと魔物が多かった気がしましたが」
ダンが思い出しながら答えた。食べ物を食べ終えるとお茶をゴクリと飲む。
そしてニッコリと笑うと告げた。
「大丈夫、大丈夫。気持ち木型魔物とか多かった気がしますけど抜けられますって」
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順次公開していく予定ですが、これより先の話を見たい方は
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/872180522/8274942
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