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蹂躙する者。される者(本命 南門サイド)

「なんだ、これは」

 一歩引いた場所から見ていた指揮官はその戦いを見ていた。

 両手に大きさの違う剣を持ち、その背後に剣や槍、斧などの武器を浮かばせる男が電光石火といった勢いで自軍の兵士達を薙ぎ払っていく様を。


「さあさあ、次はどの方かな?」

 ダンはそう言いながら左手の剣で飛来する矢を防いで、右手の剣を近くに居る兵士へと振るった。ダンの剣が兵士の持つ剣を半ばから断ち切ると、返す刀で兵士の腕を切り裂く。

「ぐああ!」と切られた腕を抑えようと両手が塞がる兵士。腕を切り飛ばすことも出来たが、まだ治る見込みがあるような傷を作ると相手の意識がそちらに向くことがあるので、ダンは切り飛ばすことをせずに中途半端で止めていた。


『とはいえ、高位の回復魔法でも使わないと二度と剣は持てないでしょうが』


 さらに火球(ファーアーボール)が飛んでくると、これも左手の剣で火球を叩き切った。普通、接触すると爆発を起こす火球だが、ダンの剣に覆われた闘気(オーラ)によって鋭さを増した刃が、火球に接触させたと思わせなかったのが原因だ。

「グワッ!?」

 ただし切り裂かれたといっても火球は残っており、その片割れが先程の兵士に直撃していた。


 ダンは『僕じゃないですよ』と心の中で謝罪をしながら次の標的を探す。素早く一番近そうな兵士に目標を定めて、左手の剣と体に闘気を纏い、一気に突進を仕掛ける。

「『クイックスラスト』!」

 闘気による推進力を受けて突き進むダン。その先頭を行くのは闘気によって強化された剣。一本の槍のように兵士へと進んだダンの剣がその兵士の胴体を突き破る。

『しかし()でも十分な威力が見えますね。相手の防具はやはり革鎧かな?』

 相手の装備は全身鎧に見える。しかしその素材はどうやら魔物の革で作られた鎧のようだ。


 ちなみにダンの左手に持っている剣は()()()()()()()()()。右手に持っている剣、というか()()()なのだ。

 普段ダンはその武器の威力もあって、#攻撃をセーブする為に__・__#鞘付きで戦っているのだ。とはいえ素直に刀を覆う形の鞘ではないのは2つの意味がある。その一つは先程の攻撃をセーブするものだが、もう一つは相手に誤認をさせるものであった。


 現に今敵の兵士はダンの両手に持つ剣それぞれに警戒をしている。特に見た目的に大きな左手の剣に注意を払っているようだ。

『まあ、どっちも警戒しないと仕方がないんですが』

 それでもダンの右手に持った刀は、見る者が見ればそちらを警戒するだろう。


 コクシン・テットウサイ。

 初代ダンによって名付けられたダンの一族に伝わる刀だ。初代はこの刀を持って『獅子狩り』を成したと言われている。手入れはしているとはいえ、未だにその刃は曇りを見せてはいない。


 右手の刀で兵士の首を切り飛ばすと、左手の剣を掲げて周囲の兵士を威嚇する。

 胴体を貫かれた兵士の身体ごと持ち上げられた剣に、兵士達の間に動揺が広がった。


「包囲陣! 盾部隊構え!」

 背後から聞こえてきた言葉に、兵士達の身にしみ込んだ習慣がその体を動かす。ダンの眼の前に大楯を装備した兵士達が並んだ。そして盾の間から突き出される剣。本来は槍なのだろうが、それが剣に変わろうともその剣先はブレることなくダンへと向いている。


「押しつぶせ!」

 指揮官の号令にダンへと迫る盾と剣。ダンは右手の剣を後ろに流して構えた。

「『ロングスラッシュ』」

 闘気を纏って伸ばされる刀身。切れ味は纏った武器に準じるアーツだが、ダンは右手の刀の切れ味を誰よりも理解している。横薙ぎに振りぬかれた右手の刀の先、闘気の刃を受けて大楯が上下に分かれていく。


 そして無防備になった盾兵士に、ダンは()()()()()()()()武器を振るった。


 剣が切りつけ、槍が貫き、斧が断ち割る。メイス等の打撃武器はその武器の重量そのままでぶち当たっていた。一撃を加えた武器はすぐさまダンの背後へと戻っていく。

「弓兵、魔法兵! 距離を取って攻撃だ!」


 ダンの『闘気操り人形(オーラマリオネット)』で操られた武器の挙動を見て指揮官が指示を下す。

 確かに闘気操り人形は近接用のアーツだ。闘気が本人から距離を離して伸ばしては扱いづらいという特性から、ダンから距離を離せば操る武器は届くことはない。

 そう、()()()()()


 左手の剣を逆手に持ち替えて眼前に構えて、ダンは闘気の操作を行う。

「『操り人形(マリオネット)射撃(シュート)』!」

 背後に浮かばせた中から槍を操作して、闘気を解き放った。ダンがイメージしたのは槍を投擲する自分自身。闘気をそのイメージ通りに動かすと槍が打ち出されるように飛んでいく。

「ギャア!」と槍で貫かれた兵士が悲鳴を上げる。幾人かはそんな状況でも矢を放ち、火球を撃ちだした。

 ダンは矢を左手の剣身で受けると、右手の刀を振るって火球を切り裂いた。

「いい加減、僕には飛び道具は効かないと学習してくれませんかね?」


「ええい、ならば私が直接相手をしよう!」

 指揮官の男がそう言い自分の腰に下がっていた剣を抜いた。抜き放った剣はゆらりと揺れる様に見えた。

「我が剣を受けてみるがよい!」

「おお『剣豪』の称号持ちの隊長が出るぞ」

「いくら強くても隊長ならば!」

 相手方の兵士の士気が持ち直したようだ。ダンは試しにと背後に浮かばせていた剣を指揮官へと向かわせた。


「ぬぅぅぅん!」

 指揮官の男は時間差で突き出される剣を手にした剣で弾き返していく。

 ならばとダンが今度は斧を振り下ろしてみた。それも気合を入れた一撃で弾く指揮官。

「同時に操れるのは限界があるようだな」

 ニヤリと笑う指揮官に、ダンは「そうですね」と返す。

「総員、門を攻撃せよ! この男は私が抑える!」

 残った兵士にそう指示を下す指揮官。ダンはため息をついた。

「どうだ? さすがに1人だけでは守り切れまい? 確かに貴様は強いが――」


「――ガッカリです」

 そう言ったダンは右手を素早く動かした。地面を走る()()が一本の線を引く。それはダンの背後のニアラの門と敵を分かつ線となった。そしてダンは刀の先で線を指し示しながら言った。

「その線を越えようとするなら()()()()()下さいね?」

 そしてダンから放たれる強烈な闘気がその線を満たしていく。それと同時にダンの背後や先程撃ちだされた槍などの武器達が線の上に並ぶように整列していく。


「『自動操り人形(オートマリオネット)』その線を越える者に牙を向け」


≪指揮官サイド≫


 指揮官の男は戦慄していた。目の前の男はいったいどれほどの闘気を操れると言うのか。

 自身の称号『剣豪』は剣術スキルが5を超えたことで得られた称号だ。称号の効果として剣術系アーツの闘気消費量が減らせるという効果があるが、それでもアーツはここぞというとき以外に使うことは控えるほどだ。

 闘気を使えば使うほど、自身の生命力が削られていく。それが危険域に達すると生存本能からか気絶。無理を押せば戦いの後に死亡することだってある。


 それを目の前の男は常識では考えられないほどの量の闘気を垂れ流している。

 放出系のアーツは放った瞬間に闘気の回収は不可能となる。それを一体いくつ使ったこの男は?

 そして今目の前で使った闘気量は馬鹿にならない量であった。


 自動(オート)と言った。


 自身の記憶にあるのはその昔師事した『剣聖』が見せてくれたことのある、『自動(オート)剣の舞(ソードダンス)』というアーツだ。それも『剣聖』の周りを2本の剣が舞う素晴らしいものだと思ったが、『剣聖』はアーツを見せてくれた後は疲弊して休息を求めたくらいだ。

 それが目の前の男は武器を()()()操作している?

 指揮官は目の前の光景に自分なりの結論をつけた。


「はったりだ! 総員、門へと攻撃を続行せよ!」

 その判断が間違いではないと思いながら指揮官は命令を下した。


≪指揮官サイドアウト≫


「はったりだ! 総員、門へと攻撃を続行せよ!」

 そう言った指揮官をダンは顔色を変えずに見ていた。

 自らの指揮官の自信に押されるように、兵士達がダンの作り出した線へと走り抜けようとする。


 先頭の兵士の足が線を跨ごうとした。


 瞬間、弾かれるように線の上に整列していた武器達が弾かれるように動き出し、その先頭の兵士を瞬く間に串刺しにした。驚く後続の兵士達。しかし彼らも走っていたために勢いは止まらなかった。


「イ、イヤぎゃあああ!」

「し、死グァァァァァ!」

 幾人かが線を跨ぎ越そうとして、武器達に蹂躙され死体となった。

「な、なんだと!?」


「だから言ったでしょう? ()()()()()と。さあ、あなたは()()()()()()?」


「くそ! あれがアーツだというなら貴様を倒せば解除されるはずだ!」

 指揮官は改めて剣を構えてダンへと向き直った。

「最初から僕だけを狙っていれば良かったのに。手加減出来ない状況にしたのは、あなたの判断ですよ?」

「うるさい! くらえ我が魔剣の絶技を! 『幻惑剣(ミラージュソード)』!」


 魔剣という言葉にダンが反応した。そして指揮官の剣が目の前で複数に分かれてダンへと迫ってくる。魔剣と呼ばれる特殊効果を持つ武器(形状が剣以外でも一般的には魔剣と呼ばれる)を使うことにより放つことのできるアーツがある。闘気の性質を変化させるアーツと違い、魔剣の効果を押し上げることで使えるアーツだ。

 そしてダンはその技を見て()()()をついた。

 指揮官の男の顔に笑みが浮かぶ。ダンが躱せないと思ったのだろうか?


「なんか、久々に()()()()()が出来るかと思ったんですがね」

 そういって右手の刀を振り上げる。

 その刀身が()()()()()へと向かっていく。

「な!?」

 『幻惑』という名前が入っているのならどれかに本物が在り、それ以外は偽物なのだろう。ならば()()()()()に打ち合わせればいいだけの事。ダンは振るう腕に闘気を纏わせて、全ての斬撃に刀身を当ててみただけである。


「それではさようなら」

 返す刀で指揮官の首を狙うダン。

「『スネークマスター』!」

 そういって指揮官の首が宙を舞った。


「ん? 何のことだったんだ?」

 しかしダンの問いかけは首のない人物に答えることのできないものだった。

 仕方なく、ダンは刀の血を振り払うと左手の剣に納刀した。

「さて、残った兵士――を?」


 その時地面に響く振動と、少し離れた南の森の中からバキバキという音が聞こえてきた。

読んでいただきありがとうございます。

順次公開していく予定ですが、これより先の話を見たい方は


アルファポリスでの投稿ページ

https://www.alphapolis.co.jp/novel/872180522/8274942

にてお読みください。


よろしくお願いいたします。

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