今後の基本方針を語る
「王家? ダンさん王家に関りがあるの?」
「まあ、関りがあるといえばありますね」
「というか『獅子狩り』とは何を意味するのだ? まさか『どうぶつえん』から逃亡している猛獣が居るのではないのだろうな?」
「ん~、たぶんライオン系の何かか、類似する何かだとは思いますが……。とりあえず皆さんにも説明しないといけないので、一旦ログハウスに行きましょうか?」
色々と質問したがっている2人を連れて、ダンはログハウスへと移動した。
ログハウスにリビングにて、テーブルに座る面々とその周りに座るようにタマモや黒狼王の姿があった。
「え~、今まで話すのをわす――ためらっていましたが」
「今絶対忘れてたって言おうとしてた」
「後々に皆さんに影響が出ないうちに話しておきたいことがあります」
ダンは茶々を入れられても無視して続けた。
「まず僕の先祖の話からしますね」
ダンの先祖はここで生まれた。石碑に刻まれたのは、そんな先祖の一人がここの里を旅立つ時の宣誓文のようなものだと言い伝えが残っていた。
「あれ? でもここの契約の巻物って王都で買ったんですよね?」
「ええ。なぜか分かりませんが、本来王家が所有していたハズのコレが、市井に流れている時点でおかしいんですよ」
宣誓は初代ダンとこの国の初代国王クロフォード1世のモノだった。
「当時はまだ国王ではなかったので、単に『クロフォード』とだけになっていますがね」
ダンの家系に伝わっている話としては、初代クロフォードの情熱に初代ダンが同調したのがきっかけらしい。
「というか、『ダン』って名前は引き継ぎなの?」
「あ~、その~……。僕の家系の男達は名前の付け方が下手くそでして、何代か毎に『ダン』の名前を付けられる男子が居ましてね。僕もその一人と言うわけです」
当時、まだ秘境と呼ばれる森の中の集落。しかしその集落こそ、この世界で最も強い部族が居る。という噂だけを頼りに初代クロフォードはこの地を訪ね、そして最強の男に出会った。
その男は里で作られた剣を使い、『獅子狩り』を達成して部族最強となっていたのだ。
『ワシはまだぼんやりとした意識しかなかったが、たしかに『獅子』と呼ばれる魔物を狩った男が居たと記憶している。その後の風の噂などから、おそらくマンティコアと呼ばれる魔物だと思ったぞ』
初代クロフォードは、当時まだ匡と呼べるほどの規模ではない集落の次期族長であった。しかしその集落は度重なる周辺で発生する魔物行進の被害で、その規模を一進一退させていたのだ。その状態を憂いたクロフォードは一つの決心の元、行動に移した。
自分たちの周囲から魔物行進、その原因と成りうる魔窟を消滅させると。
「当時は魔窟と呼ばれましたが、ダンジョンやスポットと呼ばれる魔素だまりの事ですね」
そしてその仲間として、ダンの一族の名が上がったのだ。
「実際、本人たちに聞いていないから分かりませんが、どういう契約を交わしたのかが石碑に残っていると言い伝えられてきました」
「あ~、それが『我、友の剣となる。我は望みを叶える歩みを止めない』って文面なのね」
キョーコは先程呼んだ文章を思い出した。
「というか、なぜ『にほんご』?」
「ん? 初代よりも前の世代は突如この場所に現れた。そう伝えられています。キョーコさんやイリアのような迷い人とか言われる人達の事ですね」
サラッと明かされる衝撃の事実。キョーコとイリアは驚愕の表情を浮かべた。
「おや? イリアはだいぶ表情が出てくるようになりましたね?」
その後、各地で転戦による転戦。
周辺部族だったり、ダンジョンだったり、スポットだったり。
あらゆる場所でクロフォードは初代ダンを引き連れて、戦い、その地を治めていった。そうしてクロフォードの集落を中心に現在の王国が作られることとなった。
しかし初代の願いは周辺で発生し続ける魔物行進を抑えること。拡充していく王国の領土がダンジョンやスポットに近づくたび、ダンの一族は戦いの場を移していく。そして現在、
「僕達一族は『北の最前線』という場所へと移りました。ですが移り住んでからしばらくして、王国は妙なことを言い始めたんです」
曰く、「貴族としての使命を果たせ」
「これには当時の族長も困惑したそうです。あ、その頃は族長ではなく頭領とか呼ばれてましたね。対外的には『ダン傭兵団』と名乗っていましたから」
何かの隠語か不測の事態か? 当時は王家の真意を確認するのも困難な状況だった。
「正確には僕のじい様が当時の頭領だったんですが、戦うのは好きでも、その、頭を使うのはちょっとばかしアレな人だったもので」
そしてダンの父親の代へと変わる頃、さらなる通達が『ダン傭兵団』に届く。
要約すると、「土地を治めているならば、その税を納めよ」
「正直、王国からの兵站が届かずに、逆に搾取されるのは異常事態に違いありません。そこで当時の頭領の子供に動いて貰うという結論が出ました」
そこまで話したダンは、そこで物騒な気配を滲ませる。
全員、ダンが自分の境遇に思うところがあっての気持ちの揺らぎと思い、声が掛けづらい。
「――そこで次男だった僕に話が来ました」
『ん?』と全員が思った。
代表してリルがダンへ聞く。
「ではダンさんのお兄さんが今そこに居ると?」
「ふふふ」
地獄の底から湧き上がるような笑い声。ダンの漏らす笑い声に全員ギョッとする。今までこんな笑い方をしたダンは見たことが無い。
「兄さんは『俺は行商人になる!』とか言って出奔しましたよ」
ダンは片手を握りこむと、ゴキゴキと骨の鳴る音が聞こえてきた。
『ああ、これ聞いたらヤバイ案件だ』全員がそう思った。
「貴族の子は兵士となる。その情報を得た僕は兵士として王国に入り、任務を行う傍らで王族たちのことを調べていました。どうです? この辺りで降りたい人は降りてもいいですよ?」
ダンは全員に問いかける。
しばしの無言。
「とはいえ、今までの話を聞いてもダンさん側に非はないんですよね」
「ん~、でも真実はどちらにあるのか分かりませんね」
ライは肯定的な発言。一方ウェンディは判断材料が少ないと言った。
「そうです。僕も情報を集めましたが、お互いの言い分が食い違うことがありましてね。そんな時にここの場所の情報を思い出したんですよ」
正確には契約の巻物を商人に勧められた時に思い出したのだが。
「というかキョーコさんイリアが嘘を言っていないという疑いを持つとキリがない話ですが」
正直ダンも疑っていた方だった。
「まあ、さすがに『獅子狩り』の名前が出てきたら僕も信じざるを得ないんですがね」
2人が読み上げるまで本気で忘れていた初代の異名。知りえるはずのない情報を2人が同時に知っていたとは考えづらい。そのことからダンも石碑の言葉を信じることにしたのだ。
「そういったわけで、僕は今後王都に向かいながら各地の足跡を辿ろうかな、と」
「王都に向かう?」
「最終目標は王家に真意を確認して、場合によっては契約を破棄しようかな?」
「契約破棄」
「そう、『北の最前線』からの完全撤退をしたいと考えてまして」
『北の最前線』からの撤退。
そう言ったダンの言葉に、1人ウェンディだけが気づいた。
「それって、北の要が無くなるって意味ですよね? もしかして……」
「あ~、普通に考えれば人類の生存圏が北から押し返されるんじゃないかな?」
ダンはあっけらかんとした調子で言ったが、王国に住むものとしては気が気ではない話だ。とはいえダンの一族だけに負担を負わせるのも違う話だ。全員が押し黙ってしまった。
その空気を掃うように黒狼王が声を発した。
『そういえば、我の頼みはいつ聞いてくれるのだ?』
違った。空気読まない子の発言だった。
読んでいただきありがとうございます。
順次公開していく予定ですが、これより先の話を見たい方は
アルファポリスでの投稿ページ
https://www.alphapolis.co.jp/novel/872180522/8274942
にてお読みください。
よろしくお願いいたします。




