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世界の真実を知る。(いや、聞いてもしょうがないんですが?)

 殴った感触は人間を殴った時と同じ手ごたえだった。

 ということは――


「見なかったことにしますか」

 ダンは振り返ってゴーレムを改めてみる。その胴体は開かれて、その中に椅子のようなものが見える。なるほどあそこに座っていたのか。

 ダンは白目を向いた少女らしきナニカを掴み上げると、大型ゴーレムに近づいてその少女らしきナニカを中へと放り込む――

「なにやってるんですかダンさん!」


 事は出来ずに、仲間に見つかった。


 *


「何にも知りませんからね? 僕はとりあえず元々の形に直そうとしていただけですよ?」

「はいはい、とりあえずダンさんの話はあとで聞きます」

 なにやらぞんざいに扱われることが多くなったなと思いながらも、ダンは自分が掴んでいた少女らしきナニカ――もう少女でもいいか――を床へと下ろした。


 キョーコとウェンディが少女を観察する。

「呼吸してる。肌は冷たいけど張りはあるね」

「ケガはしてない――あら? 何か水の魔力の通りが悪いですね?」

 キョーコは触診。ウェンディは水属性の魔力を用いた診断をそれぞれ少女に施していた。

 ダンも腰を屈めて少女を見る。


 整いすぎた容姿にサラサラの髪。真っ白の肌に真っ白の髪は色としてリルに似ているが、この少女は特に()()()()()という感じがする。

 と唐突に目をあけて、少女はダンへと手刀を突き出してきた。ダンはその手首を掴む。華奢だなぁと思いつつ、それにしては力が強い。ダンは掴んだその手から闘気診断(オーラチェック)を始めた。


「ん? 闘気がまったくない?」


 闘気を外に出すのはかなりの技術が要るが、元をただせば生命力がその源だ。つまり生きている以上は闘気を感じることが普通なのだ。しかし目の前の少女は、その闘気を一切感じない。やはり少女的なナニカっぽい。


 ここまで考えた段階で既に掴んだ腕と反対の腕で攻撃され、さらに足で蹴りの攻撃もされたダンは、少女の両腕を後ろに回して、少女の後ろに位置すると少女の腰の上に座った。海老反りで腕を決められた少女がダンへと要求する。


「解放を要求する」

「ん? あ~、暴れませんか? 約束できるなら離しますよ?」


「……」


「いや、完全に暴れる気まんまんですね?」

「殺せ。最後の一撃が届かなかった時点で、当機体は戦闘能力をそちらの下と判断した。これ以上の抗戦は時間の浪費にしかならないだろう」


 淡々としゃべる少女。

 海老反りの姿勢で。

 キョーコはそれが妙にツボにはまった。


「何故笑う?」

「いや~、()()()()みたいで? 真面目くさった顔でも、そんな体勢だとね?」

「……くっ殺せ」


 キョーコは完全にはまったのか笑い転げ始めた。その様子を淡々と見る少女。


「お前は()()()()()なのか?」

 ゲッホゲッホとせき込んでいるキョーコ。

「あ~、久々にウケたわ。……それで? あなたは()()()()()()か何か?」

「そうだ。厳密にいえば生態型端末といったところだ。……拘束は解いてくれないのか?」

「どうなんだろ?」

「襲わないと約束してませんしね?」

「だってさ?」

「すまんが確認だ。我々()()()()()が勝ったのか? それとも負けたのか?」


 少女の言葉にキョーコが戸惑った様子を見せる。ダンは情報を確認してから解放すると伝えた。


「えっと? ちょっと答えるために確認したいんだけど……。今、あなたは()()()()()()()()?」

「ふむ時間か……、内部カウンターは誤差一年は出ていないはずだが、()()()()()()と計測している。まさかお前は時間移動者(タイムトラベラー)か?」


「あ~、これはちょっと……」

 困った顔をしてキョーコがそれからいくつか質問を続ける。ダンにはその質問が何やら秘密というものではなく、()()()()()を確認しているように思えた。


 そしてキョーコは一つの確信を得る。

「分かったよダンさん」

「おお? 今の質問で?」

「うん」

 キョーコは笑顔で答えた。


「この子の言っていることが、私には()()()()()()()()()、という事が!」

 あまりのドヤ顔に少女も思わず表情を失っていた。


「……どういうことだ? 今の質問のやり取りが出来るあなたは、間違いなく()()()に住んでいたことのある人物のはずだ!」

 ダンの下で少女が体を震わせる。どうやら怒っているようだ。


「いや、それなんだけどさ。私は専門家じゃないからハッキリは言えないんだけど、まず暦が違っているのが、ある仮説の推理をたてるきっかけなんだ。……あなた、並行世界(パラレルワールド)って理解できる?」

 キョーコの問いかけに少女が動きを止めて何やら考え始めた。


「どうもね~、()()()()を使わない時点でおかしいと思ったのよ」

「西暦? 西暦もカウンターに未だに残ってはいるが、()()()が現れて他国と連絡の取れなくなった今は、自国の事だけしか考えられない状況ですよ?」

「そう()()! その()()()とか、他国と連絡取れないとか。そういえば西暦換算で今何年?」


 少女の告げる数字にキョーコは頷いた。

「違和感あると思った。あなた、私よりも()()()()()()ね? 私はそれよりも30年は後の時代の人間だもの」

「? ならば我々が勝った後の時代の人間ということでは?」


 キョーコは頭を振って言った。

「そもそも、私の知ってる歴史に()()()なんて言葉は記憶にないの。そう考えればある時点から、私とあなたは#違う世界の住人__・__#と考える方が納得いくわけ。てか()()()ってどんなの?」


()()()()()()()

 少女の言葉にキョーコは後ろを向く。緑の肌のゴブリンが立っていた。キョーコが不快感を覚えながら手にした薙刀を振りかぶろうとしたが、周囲を警戒していたファーニにあっさりと切り殺されていた。


「どうも外からゴブリンが侵入しているみたいですね」

 倒すべき相手がいなくなったので、キョーコは改めて少女へと向き直った。なぜか少女は驚愕の表情を浮かべている。


「どうしたの? そんな変な顔をして?」

「我らの銃器では効果的なダメージを与えられなかった……。その武器は特殊なモノなのか?」

「え、どうなんだろ? 普通の金属ですよね、ダンさん?」

 聞かれればダンは「普通のありふれたものですが」と返すしかない。


「人間の持つ格闘武器で倒せた? 我々の戦っていたモノとは別モノか?」

 さらに深く思考し始めた少女に、とりあえず敵意なしと判断したダンは拘束を緩めた。一応少女の上にはまだ乗っていたが。


「しかし皆さんも闘気(オーラ)の扱いが上手くなりましたね。相手以上の闘気を持って、割とスムーズに武器に乗せることが出来ていましたよ」

「ま、師が良かったからな。あたしも以前に比べて強さを実感出来てるよ」


 うんうんとダンが喜ばしいことを聞いた顔をする。

「闘気にしろ魔力にしろ、攻撃に纏わせられないと、相手に()()()()()ですからね」


 ある程度のレベルになるか、または自主的に闘気または魔力を扱えないと、魔物相手に攻撃が通じにくい。これは相手の魔素がレベルに応じて皮膚などを頑強にするためだ。それを切り裂く、または押しのけるためには攻撃する側も似たようになればいい。それがダンの持論だ。


 同じ魔物でもレベルの高い魔物の方が防御力も、併せて攻撃力も増していた。それが魔物の体内の魔石から発生する魔素が原因であることを経験からダンは学んでいた。それゆえ低級冒険者には魔物が苦戦する相手なのだが、ダンは訓練で全員の闘気の扱いを鍛えさせていたので、自分たちが倒した魔物が強いとは全員思っていなかったのだ。


 普通の低級冒険者は――


 *


「おい、こいつら強いぞ」

 魔物相手に低級冒険者の剣が流される。剣が表面を覆う毛を撫でる様に流れていく。

「だめだ、()()しか切れない!」

「くそぉ! あっという間に中級にランクアップしたアイツラだって狩れたんだ! 俺達だって狩れるはずだ!」


 数は4対4。お互いが同数ではあるが、なかなか致命傷を与えることが出来ない。


「俺に任せろ! 潰してやるぜ!」

 一人の男が身の丈ほどある大槌を振り下ろした。質量と勢いに狼型の魔物が1匹潰される。まだ息が残っている魔物に冒険者が群がって攻撃を始めた。

 そして一頭仕留めて周りを見渡すと、他の狼は姿を消していた。


「よっしゃ! 倒したぜ!」

 そして意気揚々と倒した狼を担ぎ上げて街へと帰る冒険者達。しかしその魔物素材は滅多打ちにされて素材の価値が大きく下がっており、冒険者達はまだまだランクアップの道が長いことを思い知らされた。


 *


「と、そんな感じなこともあるそうですよ?」

「ず、随分具体的ですね」

「あ~、ミニーさんからそんな愚痴を聞かされまして」


「……当機体の上で雑談は止めてほしいのだが?」


「あ~、それで? キョーコさんの話はよろしかったので?」

「『最後の一兵まで戦い抜く』という命令ではあったが、そもそも当施設が防衛網から遠く離れた位置に()()させられた現状、命令を実行する必要性が皆無となったので、当機体として攻撃を継続する意味を見出せない」


 ダンはキョーコに「つまりどういうこと?」と視線で尋ねる。

「敵対はしないって認識でいいんじゃないかな? それであなた――そういえば名前はなんていうの? さすがに個別に識別させる以上はなんかあるんでしょ?」


「当機体はイ号・ゴリアテという名前を当てられています」


「ん~、じゃあ縮めてイリアと呼びましょう! ゴリアテなんて可愛くないわ。まだ色々聞きたいし、私たちに同行する? あ、ダンさんが許可すればだけど」


 話を振られたダンは腕で丸を作る。正直ダンとしては話に付いていけてないので、倒す相手か倒さなくていい相手かぐらいしか判断材料が無かった。そしてダン的には会話が通じる相手は、別に無理に倒さなくてもいい相手という認識だった。


 ダンは少女――イリアから降りると大型ゴーレムへと近づいた。

「出来ればあの外部装甲を修理したいのですが――!」

 ダンは他のゴーレムと同じようにマジックバックへと収納した。それにイリアは絶句する。

「――異空間収納庫? 4次元理論ですか?」

「あ~、ファンタジーモノだと定番なんだけどね~」


 ダンは次々にゴーレムを回収していく。あらかた仕舞い終えると、時間も経っているのでウルスラの街へと帰還することにした。

読んでいただきありがとうございます。

順次公開していく予定ですが、これより先の話を見たい方は


アルファポリスでの投稿ページ

https://www.alphapolis.co.jp/novel/872180522/8274942

にてお読みください。


よろしくお願いいたします。

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