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いざダンジョンへ。ゴーレムと遭遇する

 ウルスラの街に到着したダン一同。


 時刻は夕方少し前と言ったところだったので、ギルド併設の宿を借りようと向かった。だが残念なことに部屋が1つしか空いていないとのことで、別の宿を探してギルドを出て街の中を歩き出した。

 やや商店が多い地区にやってくると、そこに宿を発見した。

 念のためと宿へ入り、部屋が空いているかを聞く。すると2部屋空いているとのことだった。それぞれ4人は入れるとのことで、ダンは宿を2部屋借りた。


「皆さん、どっちの部屋にします、か――」

 何故か壮絶な死闘感が漂ってくる()()()()()をするメンバーが視界に入ってくる。

 ダンは受け取ったばかりの鍵を宿の人間に渡して、「決まった様子だったら鍵を渡してあげてください」と言い、「それと汗を流せる湯屋ってこの辺りにありますか?」と併せて聞いた。


「やった! 勝ちました! さあ、ダンさん――あれ?」

 勝鬨をあげるウェンディだったが、既にダンの姿は宿屋から消えていた。


 余談ではあるが、宿屋の名前は『朝日の犬亭』と書かれていた。




 ログハウスぶりに風呂を堪能したダンは宿屋へと戻ってきた。夜食を付けてもらってある代金で払ったので、食いっぱぐれないような時間に戻ってきた。そしてメンバーと合流して食事処へ。


「あ~、そうか」

 席に着き、出てきた料理を見て、ダンはそうだったと思い出した。火を通してなお赤い肉を見て、料理の食材が分かってしまったのだ。


 レッドモウ。


 移動中にも食べていた食材に若干引いたが、目の前のはスープ系の料理だった。味は違うだろうとスプーンで肉とスープを合わせて口にする。


「どうでしょうお客さん。これは先日狩られたレッドモウ。味を楽しむために、煮込みに煮込んだ一品です」

 皆、添えてあるパンを食べる。

「たいへん、おいしい、です」

 答えたダンも笑顔が硬い。


 レッドモウ。

 強烈肉の味に、いかなる調理も勝てない。まさに肉・肉・肉の味のパンチ。

 さすがにたまに食べるならともかく、ダン達はレッドモウの味に飽きてしまったのだ。



 英気を養うべく宿屋で休んだダン達は、若干引きつった顔で宿屋を後にした。

「まさか朝もレッドモウとは……」

 レッドモウのロースト肉を薄く切ったサンドイッチが出てきて、出されたものを残すのは冒険者の流儀ではないとか心に暗示をかけてなんとか食べ切ったのだ。

「まあ空腹でダンジョンに挑むよりはましでしょう。まずはギルドで遺跡調査の依頼を受けるとしましょうか?」

 ダンも若干胃の調子を気にしながら朝の街をギルドへと向かって歩いていく。


「あ、果物とか果実だ。ダンさん買おう買おう」とマロンが元気よく言った。彼女だけは普段と変わらない調子だった。ダンも口直しにと考えて買い込むことを決める。

 そんな寄り道をしながらもギルドに到着したダン達は、依頼カウンターへと向かった。


「ダンジョン調査の依頼を受けたいんですが」

「あら律儀な方ですね。依頼は常設のもので、調べたことをギルドに報告してくれればいいですよ。詳細なマップや出てくる魔物の種類などをギルドは情報として買い取ります。ただ確認してからの報酬となるので、他の方は無断で潜ってますけどね」

 カウンターの職員がそうダンに答えてくれた。ダンと同じくらいか、やや上くらいの年齢の女性職員だ。


「そうなんですか? ダンジョンの情報って、それなりに有効で必要だと思うんですけど?」

「そうですね、でもまだ見つかって間もないダンジョンですから、自分たちにとって得となる情報はなかなか公開したがらない方も多くいらっしゃいますから。稼ぎ場、とかね?」


 ダンジョンの魔物は再出現する。内部の魔素の動きによるものらしいが、その出現する魔物によっては素材報酬で稼ぎになるモノもいるらしい。なるほど情報が広まると安全は買えるかもしれないが、その分の利益が減るという事か。


「命あってのモノだと思うのですが?」

「それは人それぞれということよ。さ、あなた達の()()()()()()を教えて頂戴?」

 そう言われてダンは「ん?」と声を出した。


「パーティー名?……ありましたっけ?」

 記憶を思い返してみるが、パーティーの名前など決めた覚えが――


「ダン&ウェンディ」

「ダンとゆかいな仲間たち」

「白狼と踊るダン」


「すみませんが、『まだない』ので個人づつで処理をお願いします」

 好き勝手に名前を上げるメンバーの声を無視して、ダンは自分のカードを職員へと差し出した。


「ダンです」

「ふふふ、あなたがリーダーなのね? アリアナと言います。皆さんのカードも出してもらっていいかしら?」

 アリアナと名乗った職員は微笑みを浮かべながらメンバーからカードを受け取った。

 全員分のカードの処理をしてもらい、ダンは前回聞いた内容を再度確認した。


 場所はウルスラの北。ダンジョン内部に遺跡型の街がある。そこまでは同じであった。


「ゴーレム?」

 唯一、変化したところはソレだった。


「そう。まだ確定情報にはなってないけど、どうもゴーレム型が多いダンジョンみたいね。詳細は不明だけど、行った冒険者の噂話ではゴーレムの話が確実に上がるほどだわ」


 ゴーレム。

 無機物で構成された魔物。だが中には生き物のようなタイプもいるらしい。


「とすると、ゴーレム()()()魔物が居る可能性が、かなり高いということですね」

 ダンは情報を聞き、後ろのメンバーを振り返る。


「……ま、なんとかなりますか」

「ちょっと待ってください! 不安になるような素振りはやめてください」

「いえ、実際に相手を見てからにしようかなと思っただけですが。無機物相手だと()を使う武器は効きにくいものですからね? 最悪は()で戦ってもらうことになるかなぁ、と」


 それでも相手を決めつけて向かうのは柔軟性に欠けそうだったから、断定するのは控えましたとダンが説明する。


「それでも最悪、()ですか?」

「皆さん、まだ闘気(オーラ)を纏わせるのは苦手でしょ? なら一番簡単な拳で、と」


『闘気を纏わせる』という言葉にアリアナが驚いた。まだD級の冒険者が闘気を知っていて、それを使うことが出来ることに驚いたのだ。

 アリアナも昔は冒険者だった。カウンターに隠れて見えないが、足を負傷するまでは中級でも上位の方に居たことがある。それゆえ闘気も多少は使えるが。


『この子たち、すでに闘気を知ってるの? 確かにあのエルフなんか、常に回してるように見える』


 アリアナの眼にはウェンディの身体を常に流れる闘気が見えた。放つのではなく循環しているという事は、かなりの実力者だと思う。

『でも回復要員(ヒーラー)っぽいんだよね? 何かの偽装なのかな?』

 よく分からないとアリアナは自分の眼を若干疑った。



 とりあえずダンの説明に頷くメンバー。

 アリアナからカードを返却された一同は、ギルドを出て街の北門を目指した。


 北門には多くの冒険者の姿が見えた。おそらく彼らもダンジョンを目指すのであろう。

 ダン達は北門を抜けて、冒険者の流れについていった。教えて貰った場所の方角と同じだったからだ。そしてその流れが一つの場所へと集まった。


 草原にぽっかりと突き出す洞窟らしきもの。冒険者達はその穴の中へと続いていく。ダン達も続けて入っていった。

 洞窟を進んで行くと空気が一瞬で変わったのが分かった。ある場所から洞窟の内側の空気の質が、ガラッと変わったのだ。


 それと同時に洞窟の壁面が仄かに光を帯び始めた。

「なんなのココ?」

「これが()()()()()ってヤツらしいですよ?」

 戸惑い、誰に向けた質問だか分からないキョーコの呟きに、ダンは自身も聞いた内容を説明する。


「どうもダンジョンの中は魔素が強くて、こういったヒカリゴケやさっきみたいに空気も変質するそうです。ああ、毒のエリアでもない限りは吸っても問題ないそうです」

 空気の変質と聞いたキョーコが慌てて口を押えるが、ダンは大丈夫だと説明した。


 その様子を見ていた周りの冒険者から失笑が聞こえてくる。

 恥ずかしそうに俯くキョーコにダンがにこやかに話しかけた。

「大丈夫。知らないことに反応するのは悪いことではありませんよ? それにほら」


「ほら」と促されてキョーコが顔を上げると、そこには先ほど失笑した冒険者が()()()()様子が――


「ゴーレムだぁ!」


 人よりも大きな巨躯。無骨な腕が振り回された。

「すでにここはダンジョンの中。敵陣の中も同然なんですよ? 物音をたてる時点で彼らは3流なんですよ」

 冒険者達とゴーレムの争いが始まった。




 4人組の冒険者達がゴーレムと向かい合うと、ほかの冒険者達はその横を駆け抜けた。どうもお互い了承しているのか分からないが、4人組からは何も声が上がらなかった。単にそちらを気にしている余裕がないだけかもしれないが。

 ダン達はゴーレムと冒険者達の戦いを観戦していた。


「僕も何回かゴーレムとやりあったことがあるんですが、あれはその中でも滑らかな外観をしていますね」

 腕を振り回し、足を踏み下ろし、胴体を()()させて両腕を振り回した。そんなゴーレムを見ながら、ダンは自分の経験を重ねながら解説をしていく。


「ああいった人型はおおよそ人と同じ動きをしますが、あんな()()のように、中には人では不可能な動きを混ぜて襲ってきます。お? 腕に注目してください」

 回転攻撃から距離をとった冒険者達に腕を向けたゴーレム。その腕が猛烈な勢いで撃ち出された。


「こういった滑らかな外観を持つゴーレムは、()()()()()攻撃をしてきます。他にも体の中から剣が出てきたり、体自体を変形させるモノも居ました」

 懐かしむようにダンは解説をしていく。


 キョーコが何かを呟いた。

「そ――ット」

「はい? キョーコさん、何か言いましたか?」


「それ()()()()じゃん!」

「「「てか残ってるなら加勢してくれよ!」」」

 キョーコと冒険者達がほぼ同時に叫んだ。


 闘気を纏わせた攻撃の()()をして、ダンに一刀のもとに切り捨てられたゴーレム。襲われていた冒険者達は頭を下げつつ、ダンジョンの中へと進んで行った。さすが冒険者。あれくらいの事では諦めないのかとダンが感心していると、キョーコが近づいてきた。


「どうしましたかキョーコさん?」

 ダンの問いかけに答えることなく、キョーコはダンに切られたゴーレムの断面を見ていた。

「気を付けてくださいね。たま~に爆発するやつがいますから」


「!?」断面を見ていたキョーコは慌ててゴーレムから離れた。


「爆発?」

「ええ、たまにですが」

 ゴーレムを指さしながらキョーコが聞いてきたのでダンは頷いた。


「直撃を受けた時は死ぬかと思いました」

「普通、爆発受けたら死ぬか重症なんだけど?」

 ちなみに爆発の衝撃と爆発時の炎を防げれば大丈夫である。もっともダン並みの耐久力がなければ、キョーコの言う通りになるのが正しい。


「よく分からん人だなぁ、相変わらず」とげっそりしながら、キョーコはゴーレムを観察して爆発の有無を見ていた。そして気持ちを引き締めて再度近寄る。

「とりあえず爆発は――しそうにないかな?」

 ダンは4番バッグに()()()()()()()()()

「観察は後に回しましょうか?」

「出来るんだったら先にやってくれないかな!?」

「いや~、出した途端の爆発は怖いですから」とダンはキョーコに怒られながらもダンジョンの奥を目指した。



 洞窟を抜けると大きな空洞へと抜けた。正確に言えば建物などが押し込められた、とても広い空間といった場所だった。それは洞窟の後方へと――


「なんで後ろにも空間が?」

「ダンジョンの中は、いわば()()()()だそうです。『クウカンワンキョク』? とか言ってましたか。とにかく寸法が合わないものが中にあったらダンジョン認定で間違いはないそうです」


 とりあえず教えて貰った言葉通りに答えたダン。そういえばあの頭でっかちな魔法使いは、王都で未だにソロで活動しているのだろうか? と記憶に浮かんだ姿を思い出しつつ、目の前の光景を把握しようと視線を動かす。


「空間湾曲? って()()は!」

 キョーコが走り出したので、一同キョーコを追ってついていく。規則正しい段差を駆け上がると、キョーコはその建物を見て固まった。


 ダン達も追いついて、その建物を見た。随分と大きい建物だ。

「新宿、駅? 何か訂正してる?」

 キョーコは建物の側面を見ながら、建物へと近づいていった。ダンがとっさにキョーコの腕を掴むと、一気に建物から引きはがす。


「え、どうしたのダンさん?」

 キョーコがぼんやりとした顔でダンを見たが、ダンはキョーコを後ろにかばう様に立つと、建物へと向き直りポーチから厚みのある剣を取り出して峰を前にして構えた。


 ギーーーーーと連続する軋みをたてて、建物の一部が上へと開いた。


 徐々に下から上へと開いていく場所。そこに横一列に並んだ足が見える。

「全員戦闘態勢! 全部()()()()っぽいですよ」


 そこでようやくキョーコも事態を悟ったのか、武器を構えて開いていく建物を見た。

 大柄な人くらいのサイズのゴーレムが10数体現れた。その手に剣を構えている。ダンの持つ剣とサイズはいい勝負が出来そうだ。その剣の切っ先をダン達に向けて構える。その切っ先がそれぞれの標的を指し示すように動いていく。その剣の先が()の様に見えた。


「全員伏せるか防御!」

 キョーコが叫んだ。


 それと同時にダンも一気に前へと踏み込んで、剣を横に振るった。

「『戦乙女の加護』解放(リリース)。『オーラウェーブ』!」


 バーン! と破裂する音が一斉に響いた。


 キョーコは目の前が真っ黒になった。


≪キョーコ≫


『銃声? 撃たれたの? 何故どうして?』

 キョーコは自分の中で答えのない疑問の嵐に呑まれていた。


 ()()にある新宿駅と酷似した建物。その壁面に付いていた『新宿』は間違いがなかったが、その後ろに殴り書きされたような板が付いていた。アレは何だったんだろう?

 現実では聞いたことが無かったが、銃声のようなものを放った武器で攻撃された。


『ああ、()()()()でまだ弟にも会えていなかったのに』


 自分の命はここで尽きるのか。ゴブリンの時に生き永らえたのは、たまたま奇跡が起きたからだったのだと。

 キョーコはそう思って、思って?

「あれ? 生きてる?」

 見れば自分は生きていた。他の皆も痛そうな顔をしている人も居るが生きている。


「大丈夫ですか? 攻撃は()()()()防いだはずですが」

 黒い剣を正眼に構えなおした男。ダンがそう聞いてきた。普段より早口ではあったが、その口調に焦りは感じられなかった。

 キョーコはまた自分の身を助けてくれた男に惚れ直していた。


「ふむ? なんか丁度良さそうなくらいのゴーレムですね。皆さん、このゴーレム相手に1対1でやってみましょうか」


 にっこりと笑うダンに、キョーコは『惚れ直したと思ったのは早かったか』とがっくりと肩を落として進み出た。訓練でダンの性格は分かっている。グチグチ言っても最終的には相手をさせられるのだ。


≪キョーコアウト≫


 キョーコを始めとしたメンバーは、出現したゴーレムの相手することを決めた。

新宿駅は本当にダンジョン。




読んでいただきありがとうございます。

順次公開していく予定ですが、これより先の話を見たい方は


アルファポリスでの投稿ページ

https://www.alphapolis.co.jp/novel/872180522/8274942

にてお読みください。


よろしくお願いいたします。

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