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Gを殲滅する

 洞穴の中を進んで行くダンとリル。


 内部はところどころに光が差し込んでくる割れ目があり、内部は全体的に生き物の匂いが籠った感じがした。


「……鼻が上手く利きません」

「でしょうね」

 片手に手斧を持ったリルが、持っていない手で鼻を擦っていた。ダンは相槌を打ちながらも素早く視線を動かして内部を観察する。


 曲がった造りの自然な洞穴、いやこれは洞窟か? すでに奥深く、移動した距離がかなりのものだ。


 ダンは片方の手斧を何気ない仕草で振るった。


「ぎゃ」と窪みに隠れていたゴブリンの頭をかち割る手斧。素早く引き抜き再度振るって血を払う。

『え、そこに居たの?』という表情のリル。


 ダンははっきりと見えていた。

 闘気(オーラ)を制御して眼球を強化しているダンは、『夜目』と呼ばれるスキルを再現していた。光を増幅して取り入れるとか同僚が言っていたが、感覚として見える様になっているのでダンは詳しい理屈は分からない。


『ま、眼が強くなっているんでしょう』と軽く捉えている。


 しかし多いとダンは思った。

 すでに内部に侵入してから軽く20体は頭をかち割っている。

 しかもまだまだ中には居そうな気配がしている。


『これ『孕み腹』が結構居そうだな』ダンは自分の経験から、そう結論を出した。そしてそれを裏切らない光景が洞窟内の一つの部屋で見つかった。


 鼻につく異臭。そしてうめき声のようなものを漏らす物体と奇声を上げてそれに重なる物体。

 それらが複数、洞窟の地面に転がっていた。


 後ろでリルの気配が強張るのを感じたが、ダンは声も出さずにその部屋へと侵入する。


 視界の闘気をさらに強めて標的を確認すると、ダンは手斧を投射。籠手にしまったダガーも投射すると、ポーチから更に追加の短い杭を掴みだして連続で射出した。この間一呼吸の出来事だった。

 更にポーチから手槍を抜き出すと、重なった上の標的だけを狙って突きを放つ。


 呆気に取られているリルを置き去りに、ダンはその場に居たゴブリンを全て殲滅した。



「人数が合わないな。食われたのと、村から連れ去られた人たちか」


 部屋のゴブリンを殲滅し終わったダンは、そのゴブリンから解放した女性達を見て全ての冒険者たちを救えなかったことを悟った。


「そして、こっちは完全に精神が死んでるか」

 まだ生きている女性達の世話をリルに頼んで、ダンは2人の人物へと近づいた。


 後ろ手で紐を結ばれてうつ伏せにされた男性の紐を解いた。

 その男性の視線の先にはやはり拘束され、男性に見える形で凌辱を受けていた女性が居たのでその拘束を外した。

 2人は拘束を外されたというのに反応がなかった。

 精神が耐えきれなかったのだろう。目は虚ろで何も映さず、ただ呼吸をするだけだった。


 手早く2人の身体の汚れを取り除いたダンは手持ちの布で二人の身体を包むと、生き残りの女性たちの傍へと連れて行く。

 この2人と6人、合計8人以外は食いかけの手足を数えても、部屋の中にギルドで言われた人数は確認出来なかった。


「あ、なた、は?」


 一人ダンに話しかけてきた女性が居た。

 汚れてはいたが水色の髪で耳が長い女性。エルフ族の女性だった。


 全員着れた服ではなかった為、手持ちの布やマントを出して着てもらっている。女性の腹はぽっこりと膨らんでいた。


「ダンと言います。彼女はリル。あなた方を助けに来ました」

 ダンの答えに女性は力なく笑った。

「もう、生きれません」そういうと腹に目をやった。


 ダンはポーチからある道具を取り出すと女性に聞いた。

「あなたは『浄化の水』の魔法を使えますか?」

 突然の話の変わり方に女性は気を逸らされた。


「え?……魔力と新鮮な水が、あれば」

 そういった女性の前にダンがその道具と底無しの水筒を置く。その道具とは革製の水袋と竹筒が組み合わさったものだった。

 きょとんとする女性にダンが言う。


「確か『冒険者の心構え』とかで、冒険者には知識として広まってるはずなんですが、魔物は魔素を散らされると体を作れないと。それで()()、使い方分かりますか?」

 その言葉に女性は何かに気づいたように表情を取り戻す。

「あとマジックポーションです。これで出来ますか?」とダンの問いかけに、「出来ます」とはっきりした言葉で女性は言った。


「わかりました。……あと辛いかもしれませんが、他の冒険者の方の生存は分かりますか?」

 その言葉には女性は首を横に振った。

 ダンは一度頷くと立ち上がった。

「リルさんはココに残っていてもらえますか?」

「ダンさんはどちらに?」とリルの言葉にダンは表情を変えずに答える。


「ちょっと近くのGを抹殺してきます」



 ダンはポーチから出した槍や剣を部屋の入り口に突き刺す方法で簡易的なバリケードを作ると、ポーチから一本の黒い厚みのある剣を取り出すや否や、洞窟の奥へと疾走を開始した。


 走って飛んでゴブリンを切り、地面を滑って壁ごとゴブリンを真っ二つにし、待ち構えるゴブリンを団子の様に串刺しにして殺し、弓を構えるゴブリンに団子ゴブリンをぶち当て圧殺し、天井から降ってきたゴブリンを天井のシミに変え洞窟を駆け抜けた。


 そして大きな広間に出たダン。そこに降りかかる塊があった。身を躱してソレを避けると、ダンは投げた相手を見て、足元に落ちた塊を一瞥した。欠損が大きかったが、それは成人男性の胴体であった。

 投げた相手は大きなゴブリンだった。大きさ的にオーガ種の小さい方と言われてもいい体格をしている。


「上位個体か」


 上位個体、または進化個体と呼べる個体。外観の違いから推測しやすいが、とりあえず見た目だけで判断はしない方がいいだろうとダンは剣を構える。


 上位個体ゴブリンは腰かけていた姿勢から立ち上がった。その際に体の上にあったモノがズルリと地面に落ちた。女性の下半身。

 ダンはそれを見ていた。


 傍らにあった大剣を掴みながらニヤリとゴブリンはダンの様子に笑みを浮かべた。今まで狩ってきた人間は全員似た顔をして絶望していたのを覚えていたからだ。

 無造作にダンへと近づくゴブリンは、ダンの眼に込められた()()に気づかなかった。


 右手に持っていた剣。左手でその剣の背に設けられたグリップ部分を掴み、腰だめに剣を構えるとわずかに腰を下ろした。

 ダンの顔がそこで持ち上がる。


「覚悟はいいかゴブリン野郎?」

 ギラリとダンの眼が光る。


――ダン流刀術・微塵切り――ダンの口から技の名前が放たれた。


≪ゴブリンサイド≫


 最初、ゴブリンはその人間が何をしたのか認識出来ていなかった。認識できたのは視界に映る黒いナニカか、指先に感じた痛みだったか。


 目の前の人間は#動いていなかった__・__#が、その手に持つ剣から黒いナニカが伸びてくるのが見えた。前に来た人間から奪い取った大剣を構えようとして、そこでゴブリンは指先から感じた違和感を覚えた。


 ガランと音がする。見れば手に持っていた大剣が落ちていた。『はて、いつ落としたのか』と拾おうとして、今度は腕と足に違和感を感じる。


 直後、頭に響いたソレにゴブリンは絶叫を上げた。

『ギイィィィィィ!!』

 強烈な痛み。


 とっさに触ろうとした手は血をばら撒く腕だけとなり、足はすでにひざ下が無かった。

 そこでゴブリンは目の前の人間から伸びる黒いナニカが、その本数を増やして自分に届いていることに気づいた。


 やめさせようと腕を伸ばそうとするが、すでに肩だけになっていた自分の身体が伝えてくる激痛にゴブリンは泣き叫んだ。それは奇しくも自分が#遊び道具__・__#とした人間たちと同じ表情だったが、ゴブリンはそれに気づくことはなかった。


 両腕と両足を失ったゴブリンは、自分の首に伸びる黒いソレに意識を断ち切られたからだ。


≪ゴブリンサイドアウト≫


 キン! と金属音を鳴らして、ダンは剣から右手を離して腰を上げた。


 とりあえず証拠として全てを粉微塵に切り分けることやめて、ゴブリンの死骸を確保したダン。その広間を見渡して、人の遺体を出来るかぎり集めたダンはマジックバックに収納した。ゴブリンを入れた物とは別のマジックバックだ。

 広間に残された通路などが無いことを確認し終えたダンは、ゴブリン達を回収しながら先ほどの部屋へと戻った。


 部屋の入り口のバリケードに異常が無いことを確認したダンは、中に声を掛けつつ突き刺した武器を抜いていく。


「今戻りましたよ~」


 武器全てを腰のポーチに戻したダンは部屋へと入った。

 先程よりも落ち着いた様子をみせる女性達を見て、ダンは声をかけた。


「とりあえず、ここ出ましょうか?」

 そして警戒と先行をリルに頼むと、精神を喪失してしまった2人を肩に担ぎ、ダンは女性達と洞窟の外へと向かった。

Gは殲滅。慈悲は無い。


この世界ではGというと2つの名前が上がる。


ちなみに魔族化したゴブリンは肌の色からして違うので、見かけたら襲い掛からないように。




読んでいただきありがとうございます。

順次公開していく予定ですが、これより先の話を見たい方は


アルファポリスでの投稿ページ

https://www.alphapolis.co.jp/novel/872180522/8274942

にてお読みください。


よろしくお願いいたします。

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