第2話 「小さな決意」
冬休み中の課題に手間取ってたらいつの間にかこんな時期に、やっぱり学校は害悪でしかないですね。
来年の3月にやめてきたいと思います。
そんなこんなで今に至る。
しかし異世界転生か...
正直、滅茶苦茶してみたい。というかこんな状況で断るオタクはそうそういないだろう。
だけどやっぱり一つだけ気になる事がある。
「なぁハル、俺が異世界転生したとして言語とかはどうなるんだ?現国ですら危うい俺に外国語なんて無理だぞ?」
「そんなこと?それなら大丈夫。私が神術を使って喋れる様にしてあげるから。」
その言葉が聞けてほっとする。せっかく異世界転生したのにコミュニケーションが取れずに野たれ死ぬ、なんて事にはならないみたいだ。
唯一の不安要素は消えた。ならもう答えは決まっている。
「ハル、異世界転生させてくれるか?」
その言葉を聞きハルは笑顔のまま頷き、同時にとても喜んだ。この場合喜ぶのは俺の方だと思うんだが...
「そんなに喜ぶ事か?」
「喜ぶよ、だって...」
そこまで言いかけてハルは慌てて口を噤んだ。
この動揺っぷり...何かあるんだろう。
「なぁハル、俺が異世界に転生することでハルにメリットでも発生するのか?」
そう質問してみてもハルは何も言ってくれない。
...いや、正確には何か呟いたが聞きとる事が出来なかった。
ハルが何を言ったかが凄く気になって顔を覗きこんで初めて、ハルの目に涙が浮かんでいる事に気付いた。
一体なんで?
そう聞きかけた口を慌てて塞ぐ。
学生時代の9割方を野球と2次元に費やし、デリカシーのデの字も理解してない俺だがなんとなく分かる。
今回は聞いちゃダメっぽい。
「まぁハルが言いたくないならそれでも良いよ。」
「...本当?」
そう言いながら上がった顔にはまだ、涙が浮かんでいた。
「そんな顔されちゃったらなぁ。」
そう言い苦笑いをしながら「でもさ、」と付け加える。
「『今なら言える』って思ったら教えてくれよ?気にならない訳じゃないからさ。」
そう言い今度は苦笑いではなく本気で笑った。
それにつられてか、ハルもようやく笑ってくれた。
本人(神様だから本神?)には言えないけどやっぱり笑ってた方が良いよなぁ
なんて邪な考えが頭の12割を支配した時には、もうハルの目からはさっきまで残っていた涙が消えていた。
ハルはさっきのやり取りから一通り落ち着きを取り戻したようで、転生についての手順を詳しく説明してくれたが、中々に長かったのでここから先は全カット。我ながら罰あたりだ。
「それじゃあ最終確認するね。本当に異世界へ転生する?」
さっきまでの悲しそうな顔や出会ったばかりの笑顔はどこへやら、ハルの顔は形容しがたいほどに凛々しかった。
その顔に少し気圧されたがもう覚悟は決まっている、呼吸を一度だけ整え俺は首を縦に振った。
「あぁ、よろしく頼む。」
俺の返答を聞いたハルは短く、そして静かに笑ってこちらに手をかざし、何やら呪文のようなものを唱えた。
その瞬間、足元が金色に光りだし、その光は俺を囲う筒の様になった。
「行ってらっしゃい、アキ。それと何か困った事があったら出来る限りサポートするから気軽に呼んで?」
りょーかい。そう返答しようとしたその時には、もうハルの顔は見えなくなり光の筒が一層眩しく輝いた。
1月20日辺りに低確率で投稿されます。
排出率は0.02%くらいです。