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Crimson Mixed Blues  作者: 乾橋チヒロ
1/1

非日常はやって来た。それも天体級にデカいのが

これはとある自業自得で必死に書いてる小説なんで駄文ではあります。

因みにこの作品はペルソナ、IS、流星のロックマンを見てインスピレーションが湧いて作った作品であります。

Love is more afraid of change than destruction.(愛が恐れているのは、愛の破滅よりも、むしろ、愛の変化である。)















茜色の空が徐々に夜の青と混じり、紫色になるほんの十分程度。たったそれだけの時間で、そこでしか彼女に逢うことが出来ない。


「今日も会えたね。」


人が愛せば、愛するほどに、その愛は禍禍しい、忌ま忌まし自己になっていく。


「うん。今日も会えた。」


だがその愛が決して、他人に向けられることはない。

愛は全て自己へと戻る。



──────────────────────


「・・・・・・・・・・」


自分は、この人生で非日常とまではいかないが『変わった物』をいつも期待しながら待っていた。いつからかは忘れたがこの『野々上 琴成』の元に非日常が自らやって来てくるのを・・・・

だが、一向にそれは来ない。


「・・・・・・」


窓際の席からコンクリートと自然が不格好に混ざり合った街並を眺めて黄昏れる。それしかやることは無い。同級生内で友達と言える人物も少なく、話すことも大体が班内や係等の事務的なことだけだ。だからとくに集まったりもしないし、世間話は部活の先輩がふっかけて来るのでその話相手になるだけだ。

だからいつもが退屈である。


「はい皆席着いて~!今日からこのクラスに新しい生徒が来ます。

では、入って。」


「はい。」


ここはなんら変わりない学校だ。

でも五月、新学年になって少ししか経っていないのに転校生が来るのは珍しいことだから意識を黒板方面へと向けた。


「日ノ宮 重音かさねです。これから1年よろしくお願いします。」


長く黒い髪と後ろに結ばれた赤と青の少し長めの布リボンを靡かせ入ってきたのは控えめに言っても天使な美少女である。

整った顔がこちら側へと向く。

ただ、それだけじゃ自分は何も感じることはなかった。


「じゃあ、席は野々上の前の席に。」


一気に全ての視線が自分へと集まった。そこには嫉妬だったり面白そうだなみたいな目線が半分以上を占めている。これは俺のせいでもない、俺は世見物でもないと発言したい。でも、それをやることでさえこのクラスメート達には無意味だ。

だから静観するだけだ。


「よろしくね、野々上くん。」


目の前に来た日ノ宮さんはこちらへと軽く挨拶を交わしてきたので軽く首を縦に振って意思を示す。

そのままにこやかな顔で目の前の席に座った。


「じゃあ授業を始めるぞ。」


─────────────────────


「なぁ野々上!」


「なんですか谷崎先輩。」


部活動中、同じ『理系部』の谷崎 光一朗先輩が慌てた顔で話しかけてきた。


「お前!例の転校生の後ろの席なのか?!!」


「は、はい・・・そうです───」


肯定した途端男子部員の同級生上級生を合わせて半数がこちらに詰め寄る。 


「あ、あの────」


「なんかフラグ立てたか?!」


「幼馴染みだったのか?!」


「知り合いだったか?!」


「遅刻しそうで道の角でぶつからなかったか?!」


「初っぱなからキツいことされたか?!」


「もしくは全部ひっくるめてそんな男子がいたか?!」


「?・・?・・?い、いませんでし──────」


「「「「「「ッシャー!!」」」」」」


男子達は一斉に歓喜した。

これでようやく意図が分かった。

この人達は出来るのであれば日ノ宮さんと仲良くなりたいのだ。

だからそのフラグが誰かと立ってるか否かを確かめたかったのだと。


「五月蠅い!!!静かにしてろ!!」


「なんだよ姉御!!」


「姉御言うな!!」


「・・・・・姐さん・・・・」


後ろで男子達の騒音を叱咤するのがこの理系部の姐さんこと須藤 雅先輩である。泣く子も黙り、男子相手にタメを張れ、優しくそして厳しい人物だ。たがらいつも須藤節を見ると思わず自分もそんな須藤先輩を姐さんと言ってしまう。


「おい野々上・・・今姐さんって言ったろ?」

 

「いえ・・・・谷崎先輩です。」


「なっ?!」


「おい谷崎・・・次姐さんつったら5回殴って10回蹴る。」


「酷くない?!!」


この部活ではこんな事が日常茶飯事だ。


(あれ?この部活が非日常への扉ではないのか?)


たまにこう思ってしまう。

入りたての時はここをまるでライトノベルのような部活だなと思ったが、その非日常は多分自分の望む非日常じゃない気がする。


「俺は無実だぁぁぁぁぁ!!!!」


「天国へ行って下さい・・・・・」


「「「「「「Amen…」」」」」」


怯える谷崎先輩を見て皆、合掌や敬礼、十字架を切ったり、アーメンと呟いたりしてる。自分もそのうちの一人である。


「縁起でもねぇこと止めろぉ!!」


僕達はあの先輩の背中を忘れることはないであろう・・・多分・・・・


「さ、皆戻ろうぜ。」


「だな。」


「行こう行こう。」


「さて作業の続きすっか。」


「ふぁ~・・・眠い。」


─────────────────────



「はぁ・・・・暇だな。」


時は夕方。徐々に空が燃えるように赤くなる時間だ。ここは田舎だからそれがよく綺麗に見える。まぁ見慣れているのだが。

結局何も起きない今日を落胆しながら坂道を上っていく。

この時だけが自分の家が上の方にあることをいつも恨む。そして足を動かしてようやく平坦な道になった。


「あっ・・・・・・」


平坦な道になると次は急なカーブが見えるのだが、その急カーブの道には長い髪を靡かせた誰かが佇んでる。


「・・・・誰だ?」


近所でも見たことない容姿だった。

引っ越してきたのなら必ず何処かで聞くはずだ。

足下に置かれた鞄、ガードレールにもたれかかって夕陽で赤く照らされてる街を見下ろしているだけだった。


「・・・・危ないですよ、そんなことしちゃ───────」


少し危なかっしいから声をかける。

しかし反応がない。

これは流石におかしくないかと近づい様子を見ようとする。


「あの、本当に─────」


その瞬間、顔を見た瞬間。

自分は驚いた。


「・・・・日ノ宮さん?」


整った顔と布リボンには見覚えがあった。だが、リボンの色は深い紫色になっていた。


「・・・・あなたは・・・」


遂に口が開く。こっちを向いた日ノ宮さんの目には今日の朝見たような生き生きとした目ではなく絶望したかのような目をしていた。

それに若干驚きながら事実確認を、行う。


「あの、日ノ宮 重音さんですよね?」


「私?私は・・・日ノ宮 重音だけど・・・重音じゃない。」


思わずポカンとなった。

しかし、何故だ?・・・・・・・・夜の青と夕陽の赤が混ざり合った紫色の空が日ノ宮さんの言葉に謎のインパクトと納得を与えてくる。

自分の頭が狂ってしまったのか?

この謎の回答に、相手の頭を疑った。しかし言葉は続く。


「重なってない・・・歪んでるの。ひずんで、ゆがんでる存在・・・・」


「なぁ・・・一体何言ってるんだ?」


「私はノイズ・・・名前は音が『伸』びない、音が『出』ないと書いて『伸出ノイズ』」


「だがら本当に何のことを言ってんだ?」


「私はお姉ちゃんの劣化品・・・私はお兄さん達の性玩具・・・私は人として生まれただけ幸せ・・・ご飯を一日一回貰えたら幸せ・・・私は世界のゴミ・・・私はお姉ちゃんの出来損ない・・・・」


「ちょ、ちょっと一体何があった?!」


おぞましい呪詛めいた言葉の数々。もし言ってることが本当なら完全に警察物だ。だが、それをいきなり事情の知らない人間が聞いたって相手の精神を疑うだけだ。それは勿論自分もだった。心配ではあるがもう正直無視して帰ろうとするが何故か胸がザワつく。

その正体を考えようとした刹那、


「あっ・・・・・」


ガードレールの側面が突如バコンとへこんで、その勢いでバリッと剥がれ、もたれかかっている日ノ宮さんはそのまま崖へと落ちかかる。

こんな謎めいた現象なんて超能力を持ってないと絶対起きない。

しかし起きてしまった。

何が何だか分からないが日ノ宮はここから落ちたら死ぬってことはすぐ頭が理解してくれた。


「まずいっ!!!」


坂道を上った疲労を無視して日ノ宮の手を掴んで止めた。日ノ宮の足はなんとか崖の端っこにあるが、思いっきり後ろに反っている。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


夕陽は消え、紫の空から赤が消え、青色の薄暗い空と街の遠い街灯が二人を薄暗く照らしている。ただそれを見るような余裕もなく、ショートしたかのように頭が回らない。数秒経つとエコーがかった、ガシャーンと鉄板がコンクリートにぶつかる巨大な音がなった。


「ッ!!」


その音で意識が復活した。


「大丈夫か?!日ノ宮!」


しかし彼女はさっきとは違う何も無いような虚ろな目をしていた。

その目から徐々に色が戻っていくように普通の目になった。


「・・・・あれ?私?ってえぇ?!?!なんでこんな状況にって────野々上くん?!?!」


「おわっと、と、暴れるな!!」


「あっ、ご、ごめん!!」


さっきの目が嘘みたいに年相応の普通のした目になっている。


「今から引き上げるぞ。よいしょっと!!!」


そのまま手を引っ張って道へと戻す。


「ふぅ・・・・・」


「あ、ありがとう・・・・・・・・てかなんで私こんな場所にいるんだろう?」


「・・・何言ってるんだ?てか、リボンが・・・・」


紫色だったリボンがいつの間にか青と赤のリボンにすり替わっていた。 


「リボン?とにかくありがとうね!!!私急いで帰らないと!!」


と、慌ててカーブの先へと荷物を持って走っていった。


「・・・・・・はぁ・・・」


そのまま謎の倦怠感と脱力で尻餅を付く。そして顔を天へと向けて愚痴を溢す。


「なんだよこれ・・・・・・・」 




これが始まりと出会いだ。

失の青、愛の赤、そして絶望の紫。

それは全てが本質だった。

純粋で、不純で、悲しき現実によって乖離した哀れな感情との出会いだ。



──────────────────────



 

見てくれてありがとうございます。




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