その牛肉が100グラム98円だとしても。
箸のお尻で、厚めの肉をつかむ。
熱気に揺らぐ鉄板に、並べて乗せる。
じゅう、と音を立て肉汁が流れ出る。
飛び散る細かな油とともに、白い煙がたちのぼる。
焦げ目が付かないように、裏返す。
半身に薄い茶色を纏った肉を、箸でつまむ。
澄んだ肉汁と紅い肉汁が箸の先に混じり、溢れだす。
ひときわ大きく、ぢゅうと音を立てる。
また、裏返す。
香ばしさが、広がる。
づゅゅぅぅ、やがて濁音があいまいになる。
ところどころ濃い焼き目のついた肉を、紙皿に運ぶ。
セブンイレブンの、甘口のタレにつける。
存分につける。
ふうぅ、と息を吹きかける。
頬張る。
牛の肉の、香りと脂の味わいが踊りだす。
程よい弾力。
ぎゅうと、噛み締める。
肉を食べている感に、何度も何度も浸る。
噛み残った筋っぽい部分を、ぬるいビールで胃に流し込む。
喉を通り食道を抜け、胃の底へとたどり着く。
鼻の穴が、広がる。
生キャベツに伸ばした指先と、指先が触れる。
柔らかに、玉ねぎの焼き音が失われる。
ふぅぅ、と息を吐き出す。
箸をひっくり返して、厚めの肉をつかむ。
その前にもう一口、ビールを煽る。
肉2枚分の、感謝と幸せをしっかりと噛みしめた。
小さな鼻をぷっくりふくらませた、あなたとともに。