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桃太郎と赤鬼  作者: 布眠夢懋
桃太郎と三体の仲間たち
3/7

一か月後、桃太郎たちの名前は町中に広まっていました。無理もありません。急に青のランクに上がっただけでもすごいことなのに、彼らは休みなく依頼を受け続け、冒険者が足りず、増え続けていた依頼を次々と達成し、現在、赤のランクに上がってしまったのですから。

現在の赤ランクは5人。しかし、一か月に入ってくる赤ランクの依頼数は10を超えることもあります。

しかも、赤ランクとは言え、人間の彼らは武器の調整やケガ、不調、休養などで、依頼が受けられない月も珍しくはありません。それでも給料がもらえる制度を作った国側にも原因の一端はあるのですが。

桃太郎たち【モモ組】は休みを取りません。赤ランクの依頼である、アシッドドッグの群れや下位吸血鬼、ポイズンラットなど、多種多様な魔物を休むことなく倒し続けました。

そして、桃太郎たちの手元にはすでに10000000円を超える資金が集まっていたのです。

桃太郎達が話題の人物になるのも無理はないですね。

しかし、桃太郎は今日で冒険者をやめるつもりでした。

なぜなら、今日は選挙で立候補者を募る日。

桃太郎は桃野太郎という偽名で立候補したのです。しかも無所属で。国会議員で無所属は何十年も出ていませんでした。

町に張り出されたポスターの中に、誰しもが予想外だった桃太郎の名前、政治家も、もちろん民衆たちも、謎の冒険者桃野太郎がどんな人物なのか?と知りたくなりました。

そして、今日は桃野太郎がも参加する選挙前の演説の日です。

立候補者が数分ずつ、朝から晩まで演説をするのです。これは首都【甘味処】の民衆にとってお祭りと同じです。自分の興味のある人だけ聞きに行き、ほかの人が話しているときは出店でご飯を食べたり、遊んだりするのです。今回の選挙も何時もどうり、聞きに行ったり、行かなかったり。しかし、少しだけいつもと違うのはみんながある一人の立候補者の演説だけは聞きに行こうと思っていたことです。

そう、あの桃野太郎です。そして、その演説はもうすぐ始まります。


「おい、すごいひとだな」と孫悟空。彼の手には大量の焼きそば焼きそば焼きそば・・・・・。

「あんた食いすぎよ。いくら金があるからって」と言う咲の手にはリンゴ飴と綿あめが・・・。

「ったく。緊張感ってのがありませんね」という月夜の手にはフランクフルトが四本ずつ・・・・。


桃太郎は無言でポケットの中のモモの種を取り出そうとすると


「やべっ・・・がんばれよ!!!おうえんしてるぜ!!」

「そうよ、私たちはあなたの緊張をほぐそうと・・・ね!!」

「そうです、ほら、一本上げますよ」

「はぁ・・・・。力抜けるわ」と桃太郎はうずくまります。


三人のお供は心配そうにむしゃむしゃと思い思いのものをほおばります。

そろそろ、前の演説者の演説が終わりそうです。


「じゃあ、行ってくる」

「ああ、緊張して変なことするなよ」

「なにいってんだよ。こんなの通過点の一つにもはいらない。ここで圧勝するのは当然だ」と桃太郎はネクタイを直し、檀上に上がりました。


桃太郎が壇上に上がると歓声がなります。政治のことはとにかく、桃太郎という、一気にランクを駆けあがった天才冒険者にみんな興味津々です。それに、冒険者の活躍談をまとめた新聞は人気の娯楽の一つで、桃太郎たちのことはこの一か月、毎日のように挙げられていたので、一部の中では桃太郎たちのファンクラブもできはじめているくらいだったのです。桃太郎はこのように歓声が上がることは予想していました。










観客たちははやし立てました。これはお祭りのような一面もあります。話題の渦中の冒険者が出るということで、みんな楽しみにしていたということもありますし、いくら赤ランクの冒険者とはいえ、無所属の立候補者がまともな政治などできるはずがない、気まぐれか何かだろうと、真剣に聞く気がなかったこともあります。ですから、桃太郎の出番だけ、このような異様なスタートになったのです。







しかし、ここらで民衆が異変に気が付きました。桃太郎が何も話さないのです。観客をにらみつけるようにじーーーーとこちらを見つめながら立っているだけです。

どうしたというのでしょう。歓声や囃す声、野次の声も収まっていきました。





「馬鹿だな」と桃太郎が言いました。


民衆は急に何を言っているのか・・・・と耳を傾けました。


「あなた方は馬鹿だ。この国は金がない。豊かさがない、気が付いているはずだ。緩やかにこの国が死に近づいていることに。魔物は増え続け、災害や疫病が次々に起こる。対処する冒険者や国の軍隊も足りない。なぜだ!!金がないからだ。金がないから冒険者に大した報酬が渡せない、軍隊も雇えない。もう一度言おう。この国は緩やかに死にかけている。気が付いているはずなのに、何も行動を起こせないあなたたちは馬鹿だ!」


なんて失礼なやつでしょう。誇り高き桃野民主主義国の国民にのろまで阿呆だなんて。それに、この国はまだ、そこまで落ちぶれていません。道路だって、医療施設だって充実しています。

民衆たちは怒りの声をあげました。帰れ!!と叫ぶ声があちこちから聞こえます。


「おいおい、大丈夫かよ、桃太郎の奴」

「なんで、あんなこと言ったのかしら?もしかしたら面白半分で入れてくれる人がいたかもしれないのに」

「あんなこと言ったら入れてくれる人なんて誰もいませんよね」



桃太郎はどうしてしまったのでしょう・・・・・。

彼はさらに大きな声で続けます。


「確かにあなたたちにはわからないでしょう。この国がまだ大丈夫だとそう思っているがいい。しかし、少し田舎のほうに行けばすぐにわかる。選挙権もない、職もない人たちが必死に芝をかって、草鞋を作って、税金を払い続けているんだ!その人たちは金がないから子供よりも食べ物を優先するんだ!その人たちは金がないから体も洗えずに服も買えずに掘っ立て小屋で震えているんだ。あなたたちがまだ大丈夫だといった!何が根拠だって!!道路が整備されている??医療施設??何を言っているんだ!!そんなもののために彼らは必死に働いているんだ!!あんたたちがそこの屑籠に捨てたものは同じ国の田舎では食べたこともないご馳走なんだ!!こういう村がじわじわと増えていっているんだ。知っているだろう、この町に住める人間ならそれくらいの情報を知る手段は持っているだろう。それに気づきながらこの国は大丈夫だって!!だからあんたたちは馬鹿なんだ!!」


広場が静まり返りました。彼のものいいにあまりに腹が立って言葉が出なかったのです。こんなにむかつくことはありません。・・・・しかし、この人の言っていることが真実なら、もうこの国は大変なのではないでしょうか。確かに最近、景気が悪いとは思っていましたが・・・・。民衆たちにも心あたりがあったようです。この桃野太郎という立候補者は嫌いですが、もうすこしだけきいてやってもいいなとおもいました。


「私にはやりたいことがある。この国を豊かにすることだ。軍隊を強くし、国民全員が豊かな生活を送れるようにすることだ。この国の国民が・・・間違っても馬鹿なんて呼ばれてはいけない。いまのこの状態を脱却し、誇り高い国民を取り戻すことだ。私はこの国を強い国家にしたい」


豊かに・・・・たしかに昔ほどこの国は豊かではなくなりました。みんな心のどこかでは気が付いていました。それを何とかする???この男にそんなことができるのでしょうか???

いや、どうせ無理でしょう。こんなポッと出の冒険者に・・・。やれるもんなら言ってみろ。どうすればいいんだよ、桃野太郎の次の話に注目が集まります。


「しかし、邪魔者がいる」


邪魔者??やり方を話す前に、やる前に邪魔者とは・・・・?

どういうことでしょう


「この国の富を牛耳っているのはこの国の政治家たちだ」


一瞬場が凍りました。何を言っているのでしょう。国会出馬者全員が集まるこの場で何を言っているのか??この人はやはり頭がおかしかったのです。やはり、政治などやれる器ではない。魔物を倒していればいいのです。


「みなさん。この国は何年も同じ二党が政治をやってきましたよね。そう、平和党と安心党です。彼らに任せていて政治はよくなりましたか??確かに急激に悪くはなってませんよ、でもじわじわとこの国はわるくなっていってますよね?それは誰のせいですか??あなたたち国民のせいですか??違います。平然と嘘をついてあなたたちをだまし、甘い汁を吸い続けてきた彼らだ!!」


何を言っているんだ。こいつ。やはり、過激なエンターテインメントだと思っておこうとみんなは思いました。

そして、何人かがもういいやと出店を見に行こうとしたその時でした。


「ここに証拠があります」


え?とみんなが桃太郎の手元を見ます。するとそこにはある一枚の紙がありました。


「これはある筋から手に入れた国の裏金が明記された表です」


裏金??まさかそんなものがあるはず・・・


「ここに明記されています。金額は・・・・・300000000000円ですね」


なっ・・・・・。馬鹿な。そんな虚偽の情報信じられるわけが


突然、檀上に政治家たちを警護するために集まっていた軍人たちが走り、桃太郎を押さえつけました。

そして、走ってきた警官に手錠をかけられます。

当然です。逮捕されるに決まっています。嘘をついたのですから・・・・・。

ここで民衆たちは違和感を持ちました。嘘をついたことでこんなにもすぐに逮捕されるでしょうか?

これ以上の情報の漏洩を防ぐように・・・・。


「あれ?」


檀上で捕まったはずの桃太郎が軍人とからかなり離れたところに立っています。


何が起こっているのでしょう


「赤ランクの人間をこんな数人で捕まえられるはずないでしょう」


それはそうです。軍隊で向かうような魔物を倒せるのですから。ここで凶悪な犯罪者が生まれてしまうのでしょうか?


「しかし、私は逃げません。この紙は真実なのですから。そして、私は何ら犯罪を犯していない。刑法とは国民を守るためにあるのです。私は死んでいく国を守るために、国民を守るために働いているのです。私は胸を張って堂々としていられます。だから逃げません」


「しかし、ここで捕まってしまうと暗にもみ消されてしまうかもしれません・・・・。そこで、私はあなたたちに一縷の望みを託します」


突然、空から紙がたくさん落ちてきました。個々の会場いっぱいに。何でしょう??


「な、なんだこれは!!」と誰かが叫びました。


その紙には裏金の話以外にも不正取引や不正な斡旋など、どれも信じられないよ宇な情報ばかりだったのです。


「では、ごきげんよう。私に手錠などいりません。堂々と胸を張って刑務所で休暇を取りましょう。みなさん・・・・・・」







「私は桃野太郎、この国を豊かにできるただ一人の男です。では、またお会いしましょう」


桃太郎は真ん中を堂々と歩いて刑務所へ向かった。


あっけにとられる会場を背中に。

































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