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桃太郎と赤鬼  作者: 布眠夢懋
桃太郎と三体の仲間たち
2/7

孫悟空と桃太郎は首都に向かって歩き始めました。もちろん村や町を通り、面倒を起こしたくないので、険しい山や谷を通り、川を渡っていきます。すると彼らは地獄谷と呼ばれる人間や魔物は通る頃ができない険しい谷に差し掛かりました。約200キロ先の街まで行けばここを通らなくてもよいのですが、面倒だったので谷を降りることにしました。

孫悟空は筋斗雲に、桃太郎はモモの木を崖にはやして根をしっかりと生やしてから枝を体に巻き付け、ゆっくりと降りていきます。

薄暗い谷の底を桃太郎と孫悟空は歩きます。

「気味が悪いところだぜ」と孫悟空。

「そうか?むしろ落ち着くが」と桃太郎。

「変わってるなぁ」と孫悟空が言ったその時、二人の後ろに何かの気配がしました。

二人は飛んで距離をとり、悟空は仙術を使って抜いた髪から自分の分身を大量に生み出し、桃太郎はモモの種を周囲に巻いて桃の木をはやし、モモに目を生やして200個ほどの視界であたりを見渡しますが、何もいません。

しかし、桃太郎も孫悟空も直感的に強大な敵の存在を感知し、油断せず、あたりを警戒し続けます。すると、風もないのに砂が動いたのを桃太郎と孫悟空の分身が見つけ、大量の如意棒とモモの枝がその見えない何かを襲います。すると、何もない空間から叫び声が聞こえ、肉の塊が落ちてきました。すると、なんということでしょう。肉の塊がぐちゃぐちゃとうごめいたかと思うと、犬の形になったのです。

黒犬は逃げようとしましたが、モモの枝につかまり、さらに大量の孫悟空の分身ににらまれました。犬は震えながらおとなしくなり、黒い霧に包まれたかと思うと黒髪の少年になりました。

おどろいた桃太郎が「お前は何者だ?」と尋ねます。

「僕は黒霧犬ヘルハウンド月夜ツキヨです」と少年。

「お前すげえな、俺らの攻撃喰らって死なないなんてよ」と孫悟空。

「僕の能力です。攻撃を喰らっても無限に再生できるんです」と少年。

「なんでこんなところにくらしてんだ?」と孫悟空。

「お父さんもお母さんも人間の勇者に殺されて、逃げ込んだのがこの谷で、一人でここで生きてきたんです」と少年。

桃太郎は自分たちが人間の首都に行くつもりだと伝えます。

「なら、僕も連れて行ってください!」と少年。

「復讐したいのか?」と桃太郎。

「はい。勇者を殺したいです」と少年。

少年のいう勇者とは太古から生きる二対の地獄犬ケルベロスをころした男で、実は、彼は20年ほど前に老衰でなくなったのです。

桃太郎はそのことを月夜に伝えました。

「そうですか・・・・・・・・。あいつはもう死んでしまったんですか・・・・。」と落ち込んだ様子の少年。

「生きる希望が無くなりました。それだけを頼りに、この仄暗い穴の底で生きてきたのに」といいのこして月夜は歩いていきます。

「どこへ行く?」

「わかりません」と震える声。

「お前はどうしたいんだ?人間を殺したいか?」

「わかりません。でもいつか・・・、僕は人間に殺されるのかもしれません。ならばいっそ、殺す側に回りたいです。でもそんなことをしたら、あの強かった父さんでさえ」

「なら、ついてこい」と、唐突に桃太郎が放った言葉に少年の歩みが止まります。

「え?」

「俺についてこい。ただしお前がやるのは人間を殺す側じゃない」

「じゃ、じゃあ」

「しは「支配する側だよな。桃太郎」」と孫悟空。

「・・・・・」

桃太郎は歩み始めました。

「な、・・・・っておい、無視すんな。・・・・すねんなよ」

「すねてない」

「ふぅ、かわいいなぁモモちゃん!って、おい、やめろ、種投げんな!」

少年はクスリと笑いました。そして二人についていくことに決めました。


桃太郎、孫悟空、月夜は谷を登り、最後に大きな川にたどり着きました。


「これどうするよ?」と孫悟空。

「困りましたねぇ」と濁流を見つめる月夜。

突然、川がブクブクと泡立ちます。

「全員後ろに飛べ!!」と桃太郎が叫びます。

しかし、叫ぶよりも先に、桃太郎たちは水に飲まれてしまいました。

しばらくして、水に飲まれ、窒息して死んでしまった三人が水のひいた岸に残りました。

水の中から、大きな大きな蛇が現れました。

蛇は三人を見つけると鎌首をもたげ、食らいつきます。

しかし、食べた感触がありません。

蛇が不思議がっていると天から轟音とともに雷が落ちて、蛇を殺しました。

「うわ、なんだあれ?お前がやったのか?」と孫悟空。

「いや、僕じゃありません。桃太郎さんですか?」と月夜

「俺にはあんなことはできない」と桃太郎。

「じゃあ、誰が・・・・」と月夜。

「私だよん」という声とともに空から金の鳥がおり立ちます。

金の鳥の体に雷が走ると、美しい女性に姿を変えました。

「なんか、あの蛇に誰かが食われたと思って助けたつもりだったんだけど・・・・最初から逃れたんだね」と女。

「ああ。ついでに、こいつが幻影を残したんだ」と桃太郎。

「へぇ、途中まで実体あったよね?」

「僕の黒霧は任意の時間だけ、幻影に実態を与えられるんです」

「すご―い!君らなんでこんなとこ歩いてたの?」

桃太郎はこれまでの経緯を話しました。

「へぇ。ならついていってあげるよ。その代り、お願いしたいことがあるんだけどいい?」

「なんだ?」

「ここらにヒュドラが住んでるんだけど、なかなか捕まえられないんだよね。ここらの川を荒らして、生き物がすみつけなくなっちゃってさぁ。そいつ殺すの手伝ってよ」

「なんで俺がお前の手伝いを」

「いいじゃねぇか。それくらいてつだってやろうぜ」と孫悟空。

「ありがとう!!君優しいね」

「ふん!」とそっぽを向く孫悟空。

真っ赤になっている彼、普通ならなぜかすぐにわかりそうなものですが、所詮は犬と妖精ドライアドなので、彼の気持ちはわかりません。

「まぁ、おまえがそこまで言うなら構わん。一回一人で殺したこともあるから、そんなに手間でもないだろう」と桃太郎。

「は?君、今なんて??」

「桃太郎さんすごいね!!」

ヒュドラ?お前、ほんとに何者だよ・・・・」

「悟空、お前、天と戦ってきたんだから、そんなのに驚かなくてもいいだろ」

「自分以外に俺くらいやばいやつに初めて会ったからよ。下界で」

「お前と違って天界に喧嘩売ったりしない。じゃあ、今から捕まえるから」と桃太郎が腰の小袋からモモの種をいくつか取り出し、地面に撒きます。

桃の木が突然生えてどんどん川の中心に向かって斜めに伸びていきます。桃太郎は川岸に一定の長さで種をなげ、桃の木を生やしていきました。

モモの枝は川に向かって伸び始めました。

「ねぇ、何する気?」

「ああ、釣る」

「は?」

「捕まえた」と桃太郎が叫ぶといくつかの桃の木が急に抜けました。

「やっぱり力がすごいなあ。でも、これくらいなら」と桃太郎が言ったとたん、木々がさらに枝を伸ばし、何かを引き上げます。

「ねぇ、今引いてるのってまさか・・・?」

「たぶんヒュドラ

「そんな・・・・ってえええええええ?」

がんじがらめになって自ら上がってきたのは紛れもなくヒュドラでした。そのまま、上がってきた勢いのままに地面に叩きつけられ、うめき声をあげるヒュドラ

「はい、みんな攻撃」と桃太郎。

「「「・・・・おう」」」

如意棒と黒霧で出来た無数の武器と雷に何度も打たれたヒュドラはなすすべもなくやられてしまいました。

「前より時間かかったな」と桃太郎。

「ちなみに前はどうだったのよ」

「部屋いっぱいに桃の木をはやして圧死させた」

「「「(こいつについていって大丈夫 (かしら)(かよ)(ですかね))」」」

「どうしたんだ。お前ら?」と桃太郎。

戦慄する三人を尻目に歩き始めました。

「あ、そういえば」と桃太郎。

まだ何かあるのかと若干引き気味の三人。

「お前、名前は?」

「・・・咲よ」

「そうか、よろしくな」と桃太郎。

「だ、大丈夫かしら、あれについていって」

「天帝と喧嘩した俺についてきてくれた猿たちってこんな気持ちだったんだろうな」

「・・・・あんたも同種なのね」

「ぼくは違います。無名ですから」

「お前、勇者に倒された太古から生きた幻獣の子だろ?」

「・・・・私、大丈夫かしら」


川は桃太郎の伸ばしたモモの枝に乗ってわたりました。


桃太郎、孫悟空、月夜、咲の旅は続きました。

山を越え、谷を越え、4人はとうとう町にたどり着きました。

「全員念入りに変化しろ」と桃太郎。

桃太郎はもともと人間に近い容姿でしたし、孫悟空は仙術の天才、月夜は闇霧を使用する幻惑のエキスパート、咲も長きを生きる水神に近い格の魔物だったので、変化は容易です。

「みんなでそれぞれの不審な点を調整しよう」と桃太郎。

「おう「わかったわ「はい」」」とお供達。

桃太郎は金髪の青年です。齢18くらいですが、見ようによっては少し大人びて見えます。服は森の植物から繊維を取って作られた、妖精ドルイドの伝統的な服装。靴は履いていません。

「桃太郎、あなたの服は何とかしたほうがいいわよ。妖精ドルイドにあったことがある人ならすぐにわかるだろうし」と咲。

「とりあえず靴だな」と孫悟空。

「これでしばらく持たせてください」と月夜が靴を闇霧で生み出します。

服も作り出したのですが、それは中で手に入れるからいいと桃太郎がいうので、霧散させました。

孫悟空は茶髪のやんちゃそうな青年の容姿です。金の洋服に赤い上着を羽織っています。

「その服はちょっと古いわよ」

「は?」

「僕も思ってました。それたぶん、500年前くらいの偉い人の服ですよね」

「お前ら何歳・・・・・・多分その服が古いなんて誰も知らないだろう」

孫悟空が地味に落ち込みましたが、問題はないようです。

月夜は全身真っ黒の単色の服装です。

「黒すぎじゃねえか?髪のいろも珍しいよな」

「まぁ、たまにいるわよ、黒髪のひとも」

「あえて言うなら・・・・まぁ、いいか。大丈夫だろう」

咲は青の髪の美女です。服は少し露出が多いドレスを着ています。

「お前はどこの貴族なんだ」と桃太郎。

「いや、最近こういう服はやってるのよ。人間の間で」

「俺が封印されていた間に世界は変わったな」

「じゃあ、問題ないですね」


四人は町に入ることにしました。

門の前には人間たちの列がいくつもありました。

「これは?」

「人間が街に入るときに、そこに戸籍を登録するのよ。その時に一定の学力があることを認められれば、町にいる間選挙権が認められるわ」

「そんなシステムがあるのか。学力がない場合は選挙権が認められないのか?」

「不公平じゃねぇか」

「そんなことはないわ。民主主義国家で学力も情報力もない人ばかりが自分の欲望のままに立候補したり、投票したら国がめちゃくちゃになってしまうもの」

「それはそうだな。時に少し暮らしにくくなっても国が存続するために必要な法律もあるだろうし」と桃太郎。

咲と桃太郎はある程度の知識があるので、人間たちの中でも学力は高いほうです。

「・・・・月夜。意味わかったか?」

「わかりません」

二人は野山で生きてきたので民主制をよく知りません。

自分たちの番になりました。名前と年を書くように言われました。

桃太郎は苗字があったほうがいいだろうと桃野太郎と書きました。

桃太郎、咲、孫悟空はそのまま、奥の建物に案内されましたが、月夜は名前が書けなかったので、取り調べを受けることになりました。一定の教育を受けられることは一定の身分の証明でもあったのです。これはまずいと孫悟空は機転を利かせ、極小の分身を髪の毛から作り出し、月夜の髪に潜ませました。

「名前を書けないなら、この街には入れんぞ」と言われ、動けずにいる月夜。

しかし、髪の毛から悟空の声が聞こえるのに気が付きました。

「どうした、文字が書けねぇのか?」

「実はそうなんですよ」

「しゃあねぇ。お前一瞬消えろ」

「え?」

「俺が分身で一瞬で切り替わって代わりに試験受けてやるよ」

「そうか。ありがとう、悟空さん」

「おうよ」

「じゃあ、行きますよ、せーの!」

月夜は一瞬で体を透明に変え、悟空は一瞬で月夜に変化したので、誰も気が付きませんでした。

「おい、はやく」

「わかったよ。ほら」と悟空はすらすらと月夜 灯と書きました。

苗字があるのが普通かもしれないと考えたからです。

孫悟空の文字は達筆だったので、同じような字を書く二人に衛兵は疑いの目を向けましたが、仲間のようだし、そういうこともあるだろうと奥に進む許可を出しました。

ちなみに試験は計算問題と文字の読み書きが主で、20%ほど、政体についての問題でした。桃太郎は妖精ドライアドに教えてもらった知識で、雷鳥は事前に調べておいた知識で、孫悟空は極小の分身を使ってカンニングをフルに活用して、三人は相談に相談を重ね、結果三人(四人)とも満点を取ることができました。

こうして四人は町に入ることに成功したのです。


「さて、ここからどうするんだ?」と孫悟空。

「とりあえず、政治家になる」

「え?本気で言ってるの?」

「冗談は嫌いだ」と桃太郎。

「桃太郎さん、政治家ってどうやったらなれるんですか?」

「そうだな、この国は議会制民主主義だから、おそらく、選挙をやっているだろう。ちょうどいいことに来月選挙があるらしいから、それを見に行こう」

「それまで何をするんだ?」

「金稼ぎだ」


桃太郎一行は冒険者ギルドに向かいました。

ギルドで自分たちを登録するためです。

受付に並び自分の番が来たので登録をしたいと伝えました。

「わかりました。ここにお名前とご職業をお書きください」

「ここはなんでもいいのか?」

「はい、仮に虚偽の内容であっても問題はありません」

桃太郎は政治家と書き込みました。

「せ、政治ですか?」

「ああ。問題ないだろう?」

「はい、規約的にはそうですが・・・」

「では登録頼む」と桃太郎が言うと、桃太郎の描いた紙を鉄の機械に入れました。

すると蒸気がしゅーーーと吹き出し、機械が勝手に動いて鉄の板が出てきました。

「これが冒険者カードです。これをなくすと20000円の罰金と再発行量10000円がかかります」

「結構高いな」

「はい。証明書代わりにもなりますし、これらを売買されるとギルドの信用にもかかわるので」

「なるほどな。理解した」

「わかっていただけて良かったです。では、ギルドの説明をさせていただきます」

魔物というのはちゃんと妊娠、出産の手順を踏んで生まれる生物です。彼らは魔力というのを取り込みやすい性質をしており、そのため、食事を必要としないのですが、その代わりに、取り込みすぎたそれらを定期的に放出しなくてはなりません。そのせいで、森や人間の住処に被害を与えることもしばしばです。また、かれらは総じて人間を見ると襲おうとします。なぜなら、人間を食べることで魔力の過剰な取り込みを抑制できることを本能的に知っているからです。

また、出産でも魔力を放出できるので、彼らはとても早い感覚で妊娠出産を繰り返します。そのため、魔物は異常発生を繰り返し、増えすぎると魔物たちは町や村を群を成して襲います。

そこで、魔物の間引きに国が依頼をする機関が冒険者ギルドというわけです。

しかし、当初は魔物と積極的に戦おうとする人はいませんでした。そこで、国が取り入れてのがランク制度と優待制度です。冒険者ギルドに登録すれば、冒険者カードという一枚の鉄の板がもらえます。これは討伐した魔物の強さ、数によってランクが上がり、色が変化していきます。鉄→白→黄色→緑→青→紫→黒→赤→銀→金というように。

これらが上がっていくにつれて、家や物を買うときに国からの補助金が付きます。また、黒からは家が支給され、定期的に正式な国からの依頼を受ける国家指定冒険者となることができるのです。金ともなると豪邸と大臣に相当するような給料が渡されるため、冒険者はそれを夢見て必死に依頼を受けるというシステムなのです。ただ、やはり上に行くにつれて人数は減っていき、銀は1人、金は今のところ0人だそうです。

ちなみに金の依頼は龍や地雷狼、天風虎といった災害といってもいいほどの魔物たちなので、誰も受けられず、しかし、対処はせねばいけないので、ほかの国の冒険者に依頼したり、大損害覚悟で国の軍隊を派遣したり、運が良ければ伝説の猿軍団に依頼できたりするらしいのです。ちなみにその猿というのはおそらく、孫悟空の配下たちではないか・・・・・と思った四人ですが、彼らは自由気ままに旅をしており、めったに姿を現さないというので、気にしないことにしました。

四人とも登録が終わったので、依頼を受けることにしました。

紙に穴をあけ、本のように鉄のかなぐを通したファイルというものを渡され、その中で好きなものを破って持ってくるように言われたので、自分たちが受けれる一番高い金額の依頼の紙を破り、持っていきました。

当然いきなり青のランクの魔物の討伐は危険だと念を押されたが、大丈夫だと伝え、パーティー申請をしました。

ぱーてぃーとは共同で依頼を受けたいときに作れる組織のことです。名前はモモ組となずけ、モモ組は初めての依頼に向かいました。

彼らの受けた依頼は町の街道沿いの林に現れたという豚の魔物です。大きな鉄の鍬を操り、力が強くて女好きだといいます。町や村に単体で乗り込み、被害を与えるなど、並みの魔物の強さでなく、知性もあるといいます。

本来青のランクの依頼だったのですが、誰も受けないので、鉄のランクまで下げられていたのです。

自分のランクより上のランクだった依頼を成功すれば飛び級でランクを上げることもできると聞いた四人はうってつけだと依頼を受けたのです。

「変態豚怪人はどこにいるんだろうなぁ」と孫悟空。

「林だから、ここのはずなんだけど」

「面倒ですねぇ」

「・・・・悟空。咲。頼む」

「おうよ」と孫悟空は筋斗雲を呼び出し咲は背中から翼のみを生やして空から探しに行きます。

「一応、俺も探しておこう」と桃太郎は腕からモモの枝をはやしてモモを実らせます。

モモが一瞬光ると目と四つの枝が生え、地面に桃太郎の体を伝って降りていきます。

「豚の魔物を探せ。人柄だ」と伝えるとモモの生き物はクモのように地面を伝って走っていきました。

「気持ち悪いですね。トゥレントですか?」と月夜。

「ああ。作れるんだよ。かりそめの命だからすぐに枯れるけどな」と桃太郎は枯れ木に座ります。

二人でしばらく待っていると桃太郎は急に立ち上がり、ついてこいと言い残して歩き始めました。

「どうしました?」と月夜は桃太郎に尋ねます。

「目を共有してるから見ているものがわかるんだが、あいつら、豚と戦ってるぞ」

「え、ずるい」

「急ぐぞ」

二人が走って行きます。桃太郎も月夜も目にもとまらぬ速さで走ることができるのであっという間に孫悟空たちのもとにたどり着きました。

そこではおいおいと泣きながら孫悟空と咲に命乞いする豚がおりました。

「あ、もう見つけたのかよ。やっぱり何か索敵してやがったな」

「私たちに探させておいて・・・・もう」

「で、その豚はなぜ殺さない?」

「なんかこの豚、天の水軍の将軍だったらしいんだよ。でも、女癖の悪さをとがめられて下界に落とされたらしいんだが、間違えて豚の体に入っちまってこんな姿になったらしいんだよな」

「可哀そうね。別に殺さなくてもいいんじゃないかしら」

「同情したのか?」

「ええ。もう女を襲ったりせずにまっとうに生きるって言ってるし」

「そうか。なら・・もういい。放っておけ」

「本当ですか???」と笑顔になる豚の魔物。

「ただし、」と桃太郎がモモの種を豚に放りました。

「これを食え」

「え?」

「早くしろ」

「は、はい」と豚がモモを食べました。

「じゃあ、いくぞ。ここから即刻はなれて、人里はなれた場所に行くように」

桃太郎は来た道を戻り始めました。

「よかったな」

「まっとうに生きるのよ。約束だからね」と孫悟空と咲は頭を撫でました。


昔々、天の川に天蓬元帥という水軍の将がおりました。彼は女癖の悪さで知られ、ある時、月に住む嫦娥という月の神様に強引に言い寄った罪で刑罰をうけ、さらに地上に落とされたといいます。地上ではまっとうに生きようと思っていたが、あやまって豚の体内に宿り、黒豚の魔物として生まれてしまったといいます。魔物として人を食ったり、女を襲ったり、欲望のままに生きていました。あるとき、天竺にお経を取りに行く人物を探していた菩薩を襲ってしまい、相手が菩薩であることを知って、改心し、慈悲を乞いました。菩薩は彼に猪悟能という名前を与え、彼は人食いをやめ、精進料理のみを食すようになりました。しかし、それに飽きて暴れまわるようになってしまいました。

ある時、空から雲に乗った猿と美しい鳥女ハービーが降りてきました。すぐに女を襲おうとしましたが、彼らはあまりに強く、猪悟能は情けを乞いました。すると後から、モモのにおいがする金髪の美しい青年と黒髪の少年が現れ、命を助けるといいました。猪悟能は喜び、青年がモモの種を食べろといった時も少し違和感を持ちながらも簡単に食べてしまいました。みんなが去った後、一週間は八戒をたち、性欲も抑えていました。しかし、どうにも我慢ができなくなり、人里に降りようとしたとき、腕に木の枝が絡まっていました。何だろうとはがそうとしましたが、はがれず、腕がいたくて抜けません。よく見ると、その枝は腕から生えていたのです。この枝にモモが実り、ぱっくりと割れて口の形になりました。「おい、裏切ろうとしたな豚。一回目は許してやろう。豚のくせに一回で守れるとは思ってなかったからな。しかし、つぎ、お前がよからぬことを考えれば・・・・・・」突然実がはじけ、種が口の中に入ってきました。のどに種が詰まり、息ができなくなりうずくまります。しばらく苦しんでいると突然種も枝も消えてしまいました。種はのどを通り、枝は土になったのです。手にはびっしりと根が張った後がありましたが、根は簡単に抜くことができました。

「おい」「ひっ」

突然破裂したモモに再び口ができました。

「いつも見ているからな、次は殺す」といって口は消えました。

猪悟能はその後、敬虔な仏教信者になったそうです。


桃太郎たち「モモ組」はギルドで依頼解決報告をしました。間引きの依頼なら証拠の部位を、今回のような特殊な個体の場合はあとで調査隊が向かうそうです。


「では、もし元の場所に豚の場合が見つかれば、違約金400000円を払っていただきます。よろしいですね」

「はい」

「では、今回の報奨金200000円です」と女が渡してくる。

本来は冒険者とは割に合わない仕事だ。危険を冒して、普通の八百屋や魚やに努めたほうがよっぽど稼げるのだから。今回、青の依頼を受けたが、青の依頼を受けれる冒険者はかなり少ない。かなり少ない冒険者の依頼で報奨金がこれなのだから。しかし、ランクがもっと上がれば話は別だ。黒のランクに上がれば、生活の保障と多額の給料が支給されるのだから。

「では、次の依頼を受けます」

「え?休養はいらないのですか?」

「はい。まったく」

「では、わかりました。先にランクを上げますので、少し待っていてくださいね」

受付嬢が機械に四人のカードと依頼の紙に達成の判子を押して差し込む。するとシューと蒸気を出して機械の歯車が動く。出てきたからの透明の瓶を取り出し、受付嬢が青の液体の入った瓶を入れる。するとまた機会が動き出す。しばらくして、四人の青くなったカードを取り出した。

「これで、皆さまのランクを青にさせていただきました」

「おお。意外と簡単なんだな」

「こんなに簡単にランクがあがるのね」

「いえ、簡単ではありません。今回はユニーク個体であり、青の依頼でした。それが鉄のランクの方が受けられるなんて本来はありませんし、そもそもこんな額で青の依頼など、わりにあいませんから」

「やはりそうか。依頼達成率を見たときにそうだろうとはおもったが」

依頼達成率とはギルド紙に記載される月ごとの依頼達成者の割合である。

「青ランク以上は5割以上が達成できていなかったからな。黒以上なら違約金が場合によって減額されるってのもあるだろが、青ランクは死亡率も違約金も高い。ユニーク個体でこんな額になるなんてどうもおかしい」

「そうなんです。実は依頼を出したのが国ではなく、近くの町で」

「ああ。そういうことか」

「では、次の依頼を」と受付嬢がファイルを取り出しました。

ファイルを見てみるとやはり高額なだけに結構強い魔物が多く、面倒だなぁと桃太郎は思いました。

しかし、金があれば、選挙もなんとかなるだろうと、一番高額の依頼を受け、町を出ました。






























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