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町役場にて1




「えぇと……まずは住民登録だったっけ?」

「この時期は毎年やってるけど……。母さん、こういう事は本当にダメね」


 役場入口の扉を潜りながら、顎に手を添え呟く太陽(ひかり)

 そんな母に、苦笑して(むつみ)が答え。


「だぁって〜。書類作成とか、面倒くさいじゃないの〜」


 ぷっくり、頬を膨らませて文句をいう母に、やれやれと肩を竦める陸。

 可愛く文句を言われても、てんで違和感ないのに呆れているのだ。


 外見はショートの艶やかな黒髪に黒目で、薄黄色のシャツにデニムパンツという、実年齢からするとかぁな〜り若いコーディネートなのだが、それが似合ってしまうのだから、もう突っ込む事すらしなくなった。


 そんな母太陽とは対照的に、陸の格好はキチンとしたもので、白のブラウスに黒のタイトスカート、ストッキングをきっちりと穿き、足は黒のヒールという、スーツスタイルだった。真っ黒なストレートの黒髪が、白のブラウスに良く映える。


「……だからまずは、住民課に……」


 母の態度に呆れた時にズレた眼鏡を直しながら、そう告げる陸の言葉が途中で止まる。


「?」


 それに訝しげに小首を傾げ、太陽がそちらを振り仰ぐと。


 前方の廊下から、二人の人物が此方に向かって歩いて来ている所だった。


 スレンダーな眼鏡美人と、もう一人。


「……あら? もしかしなくても、秋ちゃんなの?」


 その声に気付いて立ち止まる眼鏡の女性。一瞬、驚いた顔をしてから声を上げる。


「……え? ……まさか、青空先輩……?」


 眼鏡の奥の目をぱちくりしている〈秋ちゃん〉に、太陽は駆け寄って行ってその肩を抱く。


「やだ、もう。本当に秋ちゃんなのね〜! 噂には聞いてたけど、もうばっちり秘書さんが板についてるじゃな〜い」


 きゃっきゃとはしゃぐ太陽だったが、その隣にいる人物にぴょこんと視線を移し、


「――って事は、新しい町長さんって貴方なのね? 前町長のお爺様から引き継いだんだぁ〜! 大〜出世じゃないの〜!」


「は、はぁ……」


 いきなり話を振られて驚いている、町長さんの肩をばっしばっしと叩く。


「ちょっ! 母さん恥ずかしいからっ!」


 母の態度にぎょっとして、はっと我に返った陸が叫ぶように言い、その首根っこをむんずと掴む。


「あ! ちょっとすみません! 住民課ってどこでしょうか?」


 そうして、調度通りかかった誠実そうな青年に声をかける。


「僕、住民課の職員なんで、よかったらご案内しますよ」


「ありがとうございます!」

「ちょ、やだもう! 陸ちゃんってばぁ〜〜」


 にっこりと微笑んで案内をかって出てくれたその青年にお礼を言って、陸は母親をずるずると引き摺ったまま後を追う。


「……なんだったんでしょう……?」

「……さぁ?」


 住民課の方へ去っていく青年と女性二人をぽかんとしながら見つめる二人。そんな二人に、


「おじさん〈始まりのキラキラ〉だね」


 可愛らしい、少女の声が響く。


『!』


 その声に驚いて二人が背後を振り返ると、そこに栗色のくるくるの髪に同色の大きな瞳をキラキラさせた、小さな少女が立っていた。汐だ。

 目が合い、驚く二人に満全の笑みを向ける。


「お姉さんは〈かっちりなキラキラ〉だね」


「……かっちり?」

「キラキラ……?」


 なんの事か分からないと小首を傾げ呟く二人に、にーっこりとだけ笑って汐は、スカートの裾を翻し、ぱたぱたと駆けていくのだった。


「……なんだったんでしょう……?」

「……さぁ?」


 それを見送り、二人はまた小首を傾げるのだった。



はい。汐ちゃんの、〈ある事〉の会でした(笑)


シュウ様の『うろな町』発展記録から町長、秋原さん、榊君をお借りしました


おかしな点等ありましたら、ご連絡頂けたらと思います

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