11/16 町案内、という名のWデート? 移動中の
前回から引き続き、ラヴぃ回!(笑)
て、言っても途中までなんですが^^;
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話
11月16日逢引?中です(汐ちゃんと:謎の配達人)
このダイジェスト回とリンクりますー
また、10月11日訃報中です
この回も少し被ってます
「結構いっぱい買っちゃったね〜」
「ふふっそうですね。ミニツリーとかリースとか、可愛くてつい」
手提げの袋をカサリとさせて。上機嫌の笑顔で前を行く二人の、その後ろで。
「どー見ても買いすぎだっつーの。後で太陽さんに怒られても、知らね〜ぞ俺様は」
伝票の山を見てやれやれと、肩を竦めるフィルに振り返って汐。
「あれは汐の気持ちだもん。それにフィル、来年頭くらいまでは(うろなに)いるんでしょ〜? だったら届けてもらえないんだし」
「……あのなぁ。俺様が届けんのは手紙なんだよ。クリスマスのプレゼントじゃねぇ〜の」
「ラタリアお兄ちゃんには汐からの、ちゃんと届けてくれたのに?」
「ラタの奴にゃ、俺様じゃねぇと無理だろが。……じゃなくてだなぁ、量を考えろ量を! 院の子供どもの分だけで、一体どんだけあると思ってんだよっ!」
「だあってぇ。初めて(まともな)クリスマスプレゼント出来るんだよ〜? ちゃんと、気に入ってもらえるのがよかったんだもん」
言い合う汐とフィルの傍らでは、雪姫と賀川が穏やかに話し合う。
「袋持つよ。ユキさんは結局何を買ったの?」
「ありがとうございます。えっと、クリスマスリースを。森のお家の玄関に飾ったら、可愛いかなぁって」
「じゃあ、今度一緒につけようか。こっちの袋の方は?」
「あっ、えっとそれは……可愛いのがあったので。……でも、今はまだヒミツです」
「そっか。リース壊したらいけないし、荷物になるから、そこのコンビニで出してくるよ。賀川急便で届けさせるから。汐ちゃんもその荷物、壊れたらもったいないから貸して?」
そう言われふと賀川を見上げてから、汐は自分の手の袋を見やり。にっこりしてから告げる。
「汐も一緒に行く〜♪」
「そう? じゃあ一緒に行こうか。ユキさんちょっと待ってて」
そうユキに言いながら、賀川の黒の瞳が一瞬だけちらりと、傍らにいるフィルに向けられる。それに視線だけでフィルが頷いたのを確認してから、賀川は汐と共にコンビニへと歩いていき。
暫しして荷物がなくなり身軽になって戻ってきた二人と合流して。
さて、と気を入れ直したフィルが、
「――ルド!」
側の木にとまらせていたルドを呼び寄せる。
その意図に気付いた汐が、慌てて声をあげる。
「またルドで飛んでくの〜!?」
「いいんじゃね〜? 雪姫楽しそうだったし、汐(お前)だって楽しんでたろ? 賀川も、まんざらじゃあねぇみてーだったしよ。なんか問題あったかぁ?」
騒ぎになんねぇよーに雲の上飛んだし、降りる際の確認は怠ってねーよ? とつけ足すフィルにん〜、と顎に指添え首を傾げて汐。
「町案内、なんだよねこれ?」
「だから、最初っからそーだって言ってんだろ〜が」
「じゃあ、ここからは電車かバスにしよ? ルドに乗って上から眺めてるだけなんだったら、町案内する意味ないと思うの」
「あー。……ま、言われてみりゃ〜それもそーか」
汐のその提案に、フィルは納得したように頷いて。腕に留まらせていたルドを飛び立たせながら告げる。
「先にホテル戻って、人数増えたって、陸に伝えといてくれ。後、ちょっと遅くなるかもしんねーってさ」
フィルのその言葉に、ククッとひと鳴きしてから頭上を旋回し、ルドはブルー・スカイに向けて飛び立たっていった。
「……伝書鳩紛いの事まで出来るのか、あの鳥」
ルドが飛び去って行った方を見ながら、呆れたように呟く賀川。その傍らで雪姫は「行っちゃいました……」と少し残念そうに呟いた。
そんな中、フィルを見つめて汐が訊ねる。
「なんで連絡? 朝出る時渚お姉ちゃん居たからわかってるよね? それに人数増えたって……」
「昼、家で食うって言っちまってたんだよ。だから。あ、お前らもそれでいーだろー?」
汐に答えてから、後方を振り返って訊ねるフィル。確認としてではなく、既に決定事項としてだろうが。
「えぇっ!? そ、そこまでして頂くわけには……」
それに驚く雪姫の隣で、苦笑混じりに呟く賀川。
「あの鳥が正確に伝えれるとは思わないけど……。俺達に選択肢はなさそうだよ、ユキさん。ほら」
いいのでしょうかと思いながら、賀川が見つめる方を雪姫が見やると。
その瞳をキラキラと輝かせている、汐のその目と目が合った。
フィルの周到すぎる事の訝しさより、雪姫と賀川と(ついでにフィルと)一緒にお昼が食べれるという、嬉しさの方に傾いたのだ。
「一緒にお昼?」
首を傾げて呟いて。キラキラした瞳で此方を見つめる汐に。
「しましょう!」
雪姫は即答したのだった。
悩んだ末、電車で移動するという事となり。
東うろな駅から、海浜公園駅まで移動する。
この時期に海側に行く者はそうはいないだろうと踏んでの事だったが、海浜公園駅は線が交わる駅である上に、休日の昼時というのもあって結構、混み合っていた。
「しくった、んじゃねーの、コレ……」
車内でむぎゅりと人に挟まれながらボソリとフィル。それに同じく、むぎゅっとなりながら苦笑して汐。
「あはは。秋シーズンは催し多いもんね〜。調度紅葉が見ごろなのかも〜」
休日昼時の、乗車率をナメてはいけなかった。
「ひと駅分だし、大丈夫だよ」
苦笑しつつ言う汐だが、子供にこのぎゅう詰め状態は結構キツい。
ガタン、揺らいだ車体によって出来たその隙間に、手を引いて汐を滑り込ませるフィル。
人波から一時解放され、扉に背を預けてほぅと一息つき。にっこりして。
「ありがと〜」
「いーって。にしても毎度こんなんとか、気がしれね〜。俺様、堪えれねぇわ絶対」
「フィル、乗り物要らずだもんね〜」
言葉をかわす中、車体が揺れ。それに合わせて人波が流れ。
扉に手をついた状態であるとはいえ、その波にそうそう抗える筈もなく。
自然現象であるかのようにフィルと汐は、互いに密着するハメになった。
「っと、悪りぃ。もーちょいだけ辛抱、な」
「……っ、う、うん……」
至近距離。上から降ってきたその声に、汐はなんとか声を返すが、顔は上げれず俯いてしまう。
いきなり身体が密着した所為で、思い出してしまったのだ。
フィルを微妙に避けている理由。
少し前から、怖い夢を見るようになって。
それを見ないようにする為の、フィルとの添い寝が続いていて。
その時は怖さから逃れたくて、少しでも早く安心したくて、気になってはいないんだけれど。
後からよくよく考えると、もの凄く恥ずかしい事を、しているかのようで。
それに、泣き顔を見られてばっかりなのだけでも充分恥ずかしいというのに、添い寝(そんな事)をしている今、二人っきりでなんて、いられる訳がなかった。
それなのにまさかこんな場所で、くっつき合う事になるとは。
「…………っ」
勝手に回る思考に昨夜の事を思い出して恥ずかしくなり、赤いだろう顔を隠すかのように汐は俯いたまま微動だにせず、靴の先を見つめ続けた。
「ユキさんこっち」
「はい」
乗車してすぐ、手を引いて背もたれと扉の間に雪姫を立たせ、その雪姫を庇うようにして側に並び立つ賀川。
その側は続けて乗車して来た人達で、すぐに埋まってしまう。
フィルと汐とは扉の端と端とで、僅かに離れていて。
緩やかに走り出した電車に揺られる。
「やっぱり、休日の今頃は混み合いますね」
「でもまぁ、ひと駅分だしね」
「はい……っ!?」
ガタン、揺れた拍子に。
ぽふり、賀川の胸に倒れ込んでしまう雪姫。慌てて謝ろうとするが、
「っ、す、すみませ」
ん、を言う前に。再びの振動によって今度は、反対側へと身体が傾ぐ。
移動時の振動は僅かとはいえ、全くないという訳ではなく。
賀川に、逆に壁際に押さえ付けられるような形になってしまう雪姫。
二人の身体が自然と密着し。
「っ!」
雪姫のその白い頬に朱がはしる。
密閉空間である上に人目の多いこんな場所で、まるで抱き合っているかのように身体を密着させているだなんて、考えただけでも恥ずかしい。
それに前月半ばに電車に乗った際、不意に体が焼けるような感覚に襲われ具合が悪くなり。その時彼の体に抱きつき、縋った記憶が瞬時にフラッシュバックして。羞恥心までもが上り詰める。
「ユキさん大丈夫? 何処か打ったりとかしなかった? ちょっとだけ我慢して。もうすぐ着く筈だから」
「……は、はい……」
そんな中耳元側で囁かれたその声に、雪姫は顔を真っ赤にしたまま、小さく声を返す事しか出来なかった。
何処か打ったりしなかったと聞いてきたわりに、賀川のその手はしっかりと、そうならないように雪姫の頭と背に添えられていて。
背に添えられた左手の、抱き寄せる力が思いのほか強かった事に、自然とそうされているのが嬉しいのに恥ずかしくて、雪姫はドキドキと煩い心臓を押さえるので精一杯だった。
海浜公園駅へと向けて緩やかに走る、その電車の車内で。
乙女二人が、早く次の駅に着きますように、と願っていたのは言うまでもない。
お買い物して楽しかったんだけど
電車の中で各々密着状態故の…
桜月りま様のうろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話より
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賀川さん、雪姫ちゃん
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