表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/373

7/19 夕方 始まりの音




 トンカン、トンカン、トンカンカン


 小雨の降る中、浜辺に軽快に釘を打つ音が響く。


 明日のオープンに向けての、最後の仕上げに取りかかっているのだ。


 塩害で傷んだ壁は綺麗に修復され、一年使われていなかった海の家は、ピッカピカに磨き上げられていて、もう何時でもお客さんを迎えられる状態になっていた。

 皆で頑張った成果である。


 料理の方も、危機からは脱したのか、何処からか帰ってきた(あみ)お姉ちゃんの顔は晴々としていて、いつもの倍の速度でメニューが決まっていった程だった。


 だけど、忘れちゃいけないのが最後の大トリ。

 これがなくっちゃ、〈海の家ARIKAアリカ〉は始まらない。


「そっち押さえて〜」

「あいよ〜♪」

「…………曲がってる」

「えぇっ!?」

「あら本当。もう少し、右斜め上……かしら?」


 釘を打つ音に混じって、ワイワイとした皆の声が聞こえる。


 盛り上がった白浜の上にちょこんと座り、その音と声に耳を傾けながら、(うしお)はにっこりと頬を緩ませる。


 始まりを告げる、この瞬間がとっても好きだ。


 何かが始まる直前は、もうワクワクが止まらない。


 楽しくて嬉しくて、走り出して行ってしまいそうで。


 これから始まる、目も回るような忙しさの事を思うと、ちょっと憂鬱になるかもしれないけど。


 その忙しさすら、楽しいのだから仕方がない。


 まだ、母親や姉達程は、忙しい訳ではないけれど。


 忙しく働いてる、お母さんを見るのが好き。


 口煩く注意しながらも、さりげなくフォロー出来る(むつみ)お姉ちゃんが好き。


 しんどいーと言いながらも、きちっとやりきっちゃう海お姉ちゃんが好き。


 いつも笑顔でお客さん達をテキパキと捌いていく、(そら)お姉ちゃんが好き。


 海で、そして気付かれない所で頑張る、(なぎさ)お姉ちゃんが好き。


 キラキラを振り撒いて、働くお母さんやお姉ちゃん達は、とっても素敵。


 早く自分も、そうなりたいと思う。

 でもまだ、そんな皆を傍らでただ見ていたい、と思う自分もいる。


 皆と居られて、素敵な皆を見ていられるのが、とっても好きなのだ。


「――っしゃ! こんなモン、かなっ♪」


 と、最後にひとつ、力強いひと打ちが響き渡り。


 完成の余韻が、周囲を満たす。


「わぁっ!」


 汐はそれを、くりくりの栗色の瞳をキラキラさせて見上げる。


 何もなかった海の家に、大きな大きな看板が掲げられていた。


 海の家ARIKA〜アリカ〜


 大好きな人の名を背負った、大事な大事な看板が。


「出来た、ね」

「…………うん」

「完成ね」

「やーっぱり、コレがないとねぇ〜♪」


「さぁーてと! 明日から、いそがっしくなるわよぅ〜?」


 感慨にふける子供達に、母太陽(ひかり)が悪戯っぽくにやりと告げる。


 しかし、それに子供達は「望むところ!」としっかり頷いて。


 手を差し出し組み上げて、六人で円陣を作ると、


「それじゃあ明日に向けて――、頑張るぞ――!!」


『お――――っ!!』


 太陽の掛け声に促され、声を上げて、皆で一斉に手を頭上へと振り上げた――……




 海の家ARIKA〜アリカ〜

 二十日朝九時、開店です!



チラシ配りあんまりしてませんが、(苦笑)たぶん皆来てくれるハズ!


皆さん遊びに来てやってください♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ