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リングリング  作者: 三国司


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35/36

35 同じ空の下で

 あれやこれやの騒動が一段落した後、詩織は結局クラストの屋敷に住むことになった。ロッシェと一つ屋根の下で寝泊まりする事を、クラストが決して、決して、許さなかったからである。

 詩織としても、ずっと店で生活しているとお互い仕事が忙しいせいでなかなかクラストに会えなくなるので、彼の家で一緒に夜を過ごせるのは嬉しかった。何だか日本での生活を思い出したりして。しかし詩織のワンルームマンションより、屋敷は随分と広かったが。


 店へは馬車で通勤して、帰りは時間が合えば時々クラストが迎えにきてくれる。ただしこの時、注意点が一つある。

 店でロッシェと仲良くお喋りしていたり、手取り足取り薬の調合を教えてもらっていたりすると、迎えに来たクラストが拗ねるということである。

 そうなると一緒に屋敷へ帰る馬車の中で、詩織はクラストの機嫌を直すために己の唇を犠牲にしなければならなくなるか、彼を安心させるために恥ずかしい愛の言葉を吐かなくてはいけなくなるので、クラストが迎えにくる時間帯は少し注意するようにしている。


 仕事の方は裏の商売を辞めたため一時は大きく売り上げが落ちたが、詩織が頑張って宣伝を続けると、路地裏の小さな店にも徐々に客が増えてきた。

 中には、この店の事を前から気になっていたという人もいたのだが、カウンターに座るロッシェの風貌に恐れをなして帰ってしまっていた場合もあった。しかし詩織のような普通の女性も働いているのなら、と、何人かを店につれてくる事に成功した。

 そういった地道な呼び込みを続けていくうちに、一度薬を使った客たちはその効果に感動し、口コミで段々と店の評判は上がっていったのだ。

 元々、表の客が少なかったのは、そんな事をしなくても裏の客が十分金を落としていってくれるからと、ロッシェが一切宣伝や客引きをしてこなかったせい。

 しかし逆に言えば、薬の質はいいので、宣伝さえすれば客は来るという事だ。


 ロッシェも商売の仕方を改めて、少しは真面目になったような気もする。シラバスに謝罪をして、もう一度彼から仕事を貰ってきた事には詩織も驚いた。

 ロッシェが失礼を詫びると、シラバスは快くそれを受け入れ、「前に買った薬がよく効いたから」と、改めて騎士団用に多くの薬を注文してくれたという。

 こうやって大口の注文を取ってくるあたり、さすがロッシェというか……転んでもただでは起きないというか……。

 そんなこんなの努力もあり、かなり寂しかったお給料の額も、前と変わらないくらいにまで戻ったのだ。


 日本へは一度戻って、両親に色々と説明をして帰ってきた。

 二ヶ月ほど行方のわからなかった娘が、クラストとガレルという派手な男二人を伴って突然実家に現れたのには、両親も度肝を抜かれたようだった。

 異世界の存在やトリップの事を信じてもらうのには時間がかかり、一時は精神病院につれていかれそうになったり、クラストとガレルが警察に突き出されそうになったりしたが、最後には両親も詩織の言葉と、クラストの誠実さを信用してくれたようだ。

 しかしたぶん、まだ異世界トリップの事は半信半疑のような気がする。コスプレ好きの外国人と付き合い始めた娘が、おちゃめな嘘をついているのではと。

 詩織はこれからもたまに里帰りするつもりなので、この世には科学では証明できない事があると、気長に説明していくしかない。



 +++



「年をとると、一年が早いなー……」


 おばあちゃんのようなセリフを呟きながら、詩織は頭上に広がる青空を眺めた。空の青さは、地球でもこちらでも同じで安心する。

 視線を前に戻すと、円形競技場の中心で、甲冑に身を包んだ二人の騎士が馬に乗って槍を持ち、真剣勝負を繰り広げていた。

 今日は年に一度の、騎士たちの晴れ舞台。騎馬試合の日だ。


(一年前は、私は失恋したと思い込んでたんだよね)


 パレードでクラストの姿を見て、彼に婚約者がいると知らされて……。

 その時の状況と今の状況を比べ、今の自分がどれだけ幸せであるかを実感する。


 今日、詩織はクラストの恋人として、彼の試合を応援しに来ていた。庶民は入れないという競技場にも、国王の招待で入る事ができた。

 王族が座っている貴賓席を見ると、国王と王妃、そして9歳になったカトレア王女と、王子を抱いた側妃が確認できた。

 英雄であるクラストの想い人であるという事と異世界から来たという事で、国王も詩織に興味があったらしく、今までに何度か城に呼ばれて話をした。

詩織の緊張をよそに、国王や王妃は優しく、カトレア王女はとても人懐っこく可愛らしかった。まるでおとぎ話をせがむかのように、詩織の異世界の話を喜んで聞きたがるのだ。


 本人は気づいていないが、今では詩織は一部の権力者たちの間でちょっとした有名人である。

 今まで恋人らしい恋人もいなかった英雄の心を奪った女性で、王女に気に入られていて、あの変わり者の魔術師の後見を得ていて、上級貴族でありエリート騎士であるシャイルや騎士団専属医師であるシラバスとも何故か親しく、しかし本人は貴族などではないという、得体の知れない存在になっていたのだ。


 今もこの競技場にいる貴族たちからの視線がちらちらと詩織を観察している。

 けれど詩織はそんな不躾な視線などどこ吹く風——というか、単に気づいていないだけなのだが。午前中はロッシェの店で働いてそのまま競技場に来たため、普段着のワンピース姿で着飾った貴族たちに混じり、試合を観戦していた。


 今、目の前で行われているのはトーナメントの最終試合、つまり決勝戦で、戦っているのはクラストとシャイルだった。

 最初の方の試合では、クラストが怪我をしたらどうしようと心配して見守っていた詩織だったが、決勝まで来た今は、そんな不安はほとんどなくなった。

 クラストは馬鹿みたいに強いのである。その彼に怪我を負わせられる者などいないと途中で悟った。

 今だってそう。シャイルも決して弱くはないのだろうが、素人の詩織が見てもその力量の差は明らかだった。クラストは競技場を馬で駆けながら、シャイルを打ち負かすタイミングを計っている。きっと次の攻撃で結果は決まるはずだ。


(もうちょっとハラハラドキドキしたかったんだけど……)


 詩織は贅沢な愚痴をこぼした。しかし余裕過ぎてつまらない試合を見る方が、クラストが怪我をするよりよっぽどいい。


 詩織は『つまらない』と評した試合だったが、周囲の評価は違うようだ。わぁぁ、という大きな歓声に包まれて、詩織は試合が終わったのだと知った。


「英雄の優勝だ!」

「素敵だわ!」

「いや、シャイル様もなかなかの腕前だったが、さすが英雄と言うべきか」


 周囲の人々がそれぞれの感想を口にする。

 クラストからの一撃をくらって馬から落ちたシャイルは、頭部を覆う仮面を脱ぎ捨て、悔しそうに、しかし心地いい疲労感に包まれた顔をして地面に横たわっている。


 隣の女性のクラストに対する「素敵だった」という感想には、詩織も心の中で頷いた。

 確かに彼はかっこよかった。銀色の甲冑に身を包んでいても、その精悍さや勇ましさは感じ取れた。

 あんな完璧な人が自分の恋人でいいのかと、改めて思う。


(今日は家に帰ったらお祝いしよう。クラストの好きなメニューを作って、デザートにエッグタルトを焼いて)


 そう思いながら席を立ち、帰る前にもう一度競技場のクラストへと視線を向ける。彼はシャイルに手を差し伸べ、その手を冷たく払われた後——シャイルの態度は相変わらずである——しかしそれを全く気にしていない様子で、今度はきょろきょろと観客席を見回し始めた。

 クラストが仮面を外し、軽く汗に濡れた髪を爽やかにかき上げると、隣の女性が頬を赤らめて悩ましげなため息をついた。

 詩織も思わず顔を赤らめてしまう。あの色気は凶器だ。


(誰かを探してるのかな)


 馬に乗ったまま、大勢の観客を見渡すクラスト。その視線は一所に定まる事はなく、せわしなく移動している。

 しかし目当ての人物はいつまで経っても見つからないらしく、初めは興奮で輝いていたクラストの瞳が、段々と落胆の色に染まっていく。

 がっかりしたような、傷ついたような顔。間違っても、騎馬試合で優勝した騎士のする表情ではない。


(もしかして、探してるのは私?)


 詩織はやっとその可能性に気づいた。気づくのが遅れたのは、あの完璧なクラストの恋人が自分であるという幸せな現実を、今も上手く呑み込めていないせいだ。

 勘違いだったら恥ずかしいと思いつつ、詩織は声を上げてクラストを呼んだ。


「クラストー!」


 しかしその声は、周りの大勢の観客の声援にあっという間にかき消されてしまった。競技場の中央にいるクラストとの距離は遠いし、聞こえるはずもない。

 と思ったのだが——



 詩織が名前を呼んだ瞬間に、反対方向を向いていたクラストはくるりと振り返り、真っ直ぐにこちらへ視線を向けた。

 場内はかなり盛り上がっていて騒がしいというのに、その中から詩織の声だけを確実に聞き取ったクラストに、一体どういう耳をしているんだと驚愕する。

 気づくはずがないと思いながら声を上げたので、振り向かれてビクッとしてしまった。


「クラスト」


 今度は小声で言って、周りの目を気にしながら小さく手を振ると、それまで悲しげな顔をしていたクラストは途端に表情を明るくした。

 どこか無邪気な、弾けるようなその笑顔に目を潰されそうになる詩織。いつも一緒にいるロッシェの、性格悪そうな何だか腹の立つ笑みに慣れてしまった弊害かもしれない。


 クラストは、詩織がここへ来て自分の試合を見ていた事が嬉しいらしく、馬を操ってこちらへと駆けてくる。

 初め、この騎馬試合の話を聞いてクラストから「見に来てほしい」と言われた時は、詩織は少し迷ったのだ。観客はみんな貴族や大商人だと知っていたから、自分がそんなところに行っていいのかと気後れして。

 クラストも詩織が進んで来たがらなかったのを知っているから、今日、本当に見に来ているのか不安だったのかもしれない。

 けれどあの嬉しそうな顔を見たら、やはり応援しに来てよかったと詩織は思う。こちらまで何だか嬉しくなってしまって、自然とほほ笑みを返した。


 しかし詩織が余裕だったのもそこまでだ。

 馬に乗ったままこちらに駆けてきたクラストが、観客席の中程に座っていた詩織の方を見上げ、


「詩織!」


 と声をかけ、手を伸ばしてきたからだ。

 競技場中の視線が、一気に詩織に集まる。歓声が止んで、代わりにどよめきが起きた。

 固まる詩織をよそに、クラストの手は「こちらへ来い」と言うように伸ばされたまま……。


(この状況で、私にクラストの元へ行けと?)


 注目を浴びている恥ずかしさから、詩織は身を縮こませた。クラストは目立つ事に慣れているから何とも思わないのかもしれないが、英雄でも何でもなく、普通に生きてきた詩織にとって、こんな大勢の人の注目の的になるのは遠慮したい事だった。羞恥と緊張で冷や汗が流れる。

 クラストの手を無視してこの場から逃げたくなったが、しかしそれではあまりに彼が可哀想だ。期待を込めてこちらを見つめてくるあの瞳にも、抗えそうにない。

 詩織は覚悟を決めて立ち上がった。


 階段を使い、観客席の一番下まで降りていく。慌てて降りると踏み外しそうだったので、ゆっくりと。

 観客席の柵の高さは、馬に乗って競技場にいるクラストの顔の高さとほぼ同じだった。彼の方が低い位置にいるので、必然的に見下ろす形になる。

 周囲からの視線に顔をまっ赤にしながらも、詩織はクラストの手を取ってぎこちなく笑い、彼の勝利を祝福した。


「おめでと」


 その瞬間、クラストはまた嬉しそうに顔をほころばせて、ぐいっと詩織の手を引く。


「わっ……!?」


 落ちる——と思って目をつぶった時にはもう、詩織はクラストの腕の中にいた。

 クラストがきちんと受け止めてくれたおかげで詩織に衝撃はなかったが、急に人ひとり分の重さが加わって、馬は多少驚いたらしい。前足を軽く上げていななくと、競技場の土を蹴って駆け出した。


 馬に乗り慣れない詩織は悲鳴を上げてクラストに抱きついたが、クラストの方は手綱を上手く操りつつ、余裕の態度で愛馬と詩織をなだめている。

 馬はすぐに落ち着きを取り戻し、クラストの指示に従って、緩いスピードで競技場をぐるりと回るように走り出した。

 しかし詩織の方はまだ動揺したままだ。


「わ、私、こっちに降りてもいいの? っていうか、すごい注目を浴びてるんですけど……」


 小心者の詩織は、どうしても周りの観客の視線ばかりが気になってしまう。恥ずかしくて、クラストの陰に隠れるように、その体にぴったりと身を寄せた。横座りしている不安定な状態なので、落馬するのも恐ろしい。

 クラストはそんな詩織の恐怖と恥ずかしさを理解していないのか、はたまた何もかも解っていて利用しているのか、自分に縋り付いてくる詩織を片手で抱きしめたまま、鼻歌でも歌い出しそうなくらい上機嫌だった。


「何がそんなに嬉しいの?」


 詩織が顔を上げて訊くと、クラストは一瞬ムッと顔をしかめた。


「忘れたとは言わせない。俺がこの大会で優勝すれば、結婚してくれる約束だ」

「あ……あー」


 忘れてた、とは言えなかった。

 けれど詩織は、それがどうでもいい事だから忘れていた訳ではない。クラストが惨敗したって彼を嫌いになる事はないし、優勝するしないに関わらず結婚するつもりでいたから、あまり気にしていなかったのだ。

 一ヶ月ほど前にプロポーズされて——実は求婚自体は再会した直後からされていたのだが、薬屋の方が軌道に乗るまで待っていてもらった——、素直に「はい」と言うのが何だか恥ずかしくなり、軽い気持ちで「じゃあ、一ヶ月後の騎馬試合で優勝したらね」などと言ってしまった結果がこれだ。


「俺の妻を見せびらかしたい」


 クラストはとてもいい笑顔でそう言って、詩織を抱いたまま競技場を駆け続ける。

 調子にのって「優勝したら」などと言わなければよかった。求婚を断る気なんてなかったんだから、あの場で素直に応じておけばよかった。詩織は心から後悔した。そうすればクラストの喜びもあの場で収まり、今日のこんな羞恥プレイは避けられただろう。


 詩織はそろそろと観客席を見回した。彼らの反応は様々だ。前から詩織の噂を知っていた者も多いだろうが、それでもいつもは冷静で仕事熱心な英雄が、ひとりの女性へ甘いほほ笑みを向けている事に、驚いたように目を丸くしていた。

 そんな中でも一部の人々は歓声を上げて熱い二人をはやし立てたし、また、若い女性からは嫉妬の視線を投げつけられたりもした。


(こんな事なら、私もドレス着てくればよかったかも)


 詩織は心の中で呟いた。ワンピースとはいえ、一応清楚で綺麗めのものを選んできたつもりだが、周りの女性は皆ドレスで、頭にはお花のついた帽子をかぶっている人が多い。

 クラストは服装なんて何でもいいと言っていたし、別にドレスコードは無いようだが、もう少し着飾ってくるべきだったかとちょっぴり後悔した。

 貧相な格好をしていて自分が周りにどう見られようと構わないが、クラストにまで迷惑をかけたくないのだ。

 英雄は恋人にドレスの一着すら贈る甲斐性もないのか、などと思われていなければいいが。


 人間は中身だ、とはいえ、これからはもっと身なりに気を遣おうと詩織は思った。

 クラストは貴族でもあるし、この国の英雄でもある。詩織にも『オーフェルト夫人』だとか、『英雄の妻』だという肩書きがついてまわる。彼の妻になれば、ただの薬師の一般庶民という訳にもいかなくなるし、着飾って出かけなければならない機会は嫌でも増えるだろう。

 少しわずらわしいなと思うけれども、しかしクラストに相応しい女性であるためなら、そして彼に恥をかかさないためなら、動きにくいドレスと苦しいコルセットの束縛くらい耐えてみせる。

 幸いというか何というか、クローゼットには甲斐性のありすぎるクラストから贈られたドレスや装身具がたくさん眠っているのだ。それを活用すればいい。


 詩織がそんな事を考えている間にも、「妻を見せびらかしたい」という先ほどの言葉通り、クラストは新妻と自分との仲を見せつけるように、広い競技場を観客席に沿うように走り続けている。

 馬上の振動にも慣れてきたところで詩織がふと貴賓席を見てみると、国王がこっちを見て豪快に笑っていた。遠いので笑い声までは聞こえないが、大きく口を開けて白い歯が覗いている。

 そしてその隣では、カトレア王女がこちらを指差しながら王妃に何かを言っているようだ。「シオリがいるわ!」とでも訴えているのかもしれない。


 さらにその王族たちの背後には、全身紅い衣装に身を包んだ魔術師の姿も発見できた。先ほどまでは観客席にいなかったと思うのだが、ガレルはいつも神出鬼没なので急に現れたのだとしても驚かない。

 彼の首や耳につけられた宝飾品は陽光を反射してキラキラと輝いており、周囲の着飾った女性たちよりもよっぽど派手だった。

 彼は満足げな笑みを浮かべ、クラストを見守っている。

 

 そしてそれとは対照的に不満顔をしているのが、先ほどまでクラストと戦っていたシャイルだ。今はもう立ち上がっていて、槍を持ってじっとこちらを——というかクラストをねめつけている。

 クラストがあまり調子に乗ってはしゃぐようなら、馬から突き落としてやるとでも思っているのだろうか。

 だけど今日ぐらい、はしゃがせてあげてほしい。詩織はそう思った。クラストはただ優勝の喜びに浸っているだけではないのだ。——自分と同じく。


「幸せだ」


 生き生きとした表情で手綱を操りながらクラストが言う。詩織が見上げると、クラストの頭上には抜けるような青空が広がっていて、それが彼の喜びを表現しているかのようだった。

 一点の曇りもない、晴れ渡った空。

 詩織も思わず笑顔になった。


「私も幸せ」


 朝起きれば隣にクラストがいる幸せ。

 同じ空気を吸って、同じ空の下で、同じ世界で生きている幸せ。

 そしてそれがこれからもずっと続くという幸せ。

 

 詩織はクラストの体に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。


 ——きっと二度と、ふたりが離れる事はない。


 クラストの体温と頬を撫でていく柔らかな風を感じながら、詩織は幸せをかみしめるように目を細めた。


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