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(仮題)異世界に里帰り  作者: 吉田 修二
1章 神界にて(チュートリアル)
6/29

4 戦女神と書いてバカと読む

ついに戦闘シーンです。

真剣勝負においては、だいたいこんな感じで書いていくことになるかと思います。

タイトルについては後半で。

 太陽は西に傾き始め、未だじりじりとした熱を伝えてくる。

 時折草原を渡る風が、火照った身体を僅かに慰めてくれていた。


 目の前には両腕をだらりと下げたツカサ。

 俺は右足を引き、身体を右斜めにして、木刀の先を右後方に引き、ツカサからは柄しか見えないようにする。剣道で言うところの「脇構」だ。

 じりじりと、つま先だけを使って距離を詰める。ツカサが気づいていないはずが無いが、俺の攻撃を待ってくれているんだろう。

 これまでの経験からか、どこに打ちかかっても防がれ、反撃を受けるイメージしか浮かばない。

 俺の動きを読んでいるのか、それとも反応速度が怪物じみているのか。

 いずれにしても、おそらくはこれが、「隙が無い」ってことなんだろう。


 でも、このままじゃ埒があかない。俺はじりじりと距離を詰め――不意に、つま先に当たった小石を蹴りあげた。

 ツカサは微かに笑み、迫り来る小石を右腕で払う。――今だ!


 勢いよく地面を蹴り、間合いを一気に詰める。

 木刀が届く間合いになったと確信すると、右後方に構えていた木刀を左上方に向かって振り上げる。

 だが、ツカサは当然のように、残った左腕で木刀を払う。

 小石を払ったままの右腕はその位置からぐるりと回り、掌打を放つ。

 木刀を払われ、体勢を崩していた俺は、しかし、逆に崩した方向に身体を傾け、左足を中心に一回転。ツカサの右肩に向かって斬り付ける。

 攻撃を躱され、同時に反撃を受けたツカサに、それを避ける術はない。

 木刀は真っ直ぐにツカサの右肩に吸い込まれ――その直前で、ツカサの左手によって捕まれた。

 まずい、と思う間もなく吹っ飛んだ。


 攻撃を受けたわけじゃない。反射的に木刀を引き戻そうとした俺に合わせ、ツカサは握っていた木刀を前に押し出したのだ。俺とツカサ、二人分の力を受けた俺の身体は、後方に吹き飛ぶことしか出来なかった。


 地面に叩き付けられ、肺から空気が絞り出される。

 衝撃と酸欠によって目の前が薄暗くなる俺の耳に、ツカサの声が届いた。


「なかなか、攻撃の組み立てがうまくなったな。特に、石を蹴りあげ、攻撃の機先を作ったのは良い発想だ」


「くっそー……今日こそは、一撃入れられると思ったのに……」


 ツカサが言うには、訓練の際、常に俺と同じ能力値にまで落としているらしい。

 つまり、単純に技量と経験のみで戦っているということだ。

 俺の技量が上がれば、一本取ることは不可能ではない。


「方法はあったのだぞ? 木刀を捕まれた際に、引くでも突くでもなく、それを捨て、無手にて立ち回れば良かったのだ」


「でも、実戦で武器を捨てるってのは、結構難しくないか? 素手だと牽制程度のダメージしか入れられないし」


「今のように無様に地を這うよりはマシであろう。

 それに、予備の武器――ナイフなり脇差なりがあれば、それを使えば良いだけのことだしな」


「刀は武士の魂じゃなかったのか? そう簡単に捨てていいの?」


「それは『武士』という職業の者の話だな。我らは『剣術家』であり、一本の刀にこだわる必要性はまるで無い。

 こと、生き死にのかかった実戦においては、なによりも生き残ることが重要だ。

 刀を持ち続けることで、逆に絶対的に不利な状況に陥ると分かっているならば、刀を捨てて活路を見出せ」


 頷くと、「ぴろん」と間の抜けた電子音が聞こえてきた。どうやら、今の稽古でレベルが上がったらしい。





IM   :レベルアップ(4→5)

      筋力+1、体力+1、敏捷+1、器用さ+1、知力+1、魔力+1

      「運命神の加護」により、能力値追加上昇

      体力+1、敏捷+1、魔力+1

LV   :5

経験値  :217/375

状態   :健康

クラス  :初級魔術師 Lv.4、見習い剣術家 Lv.5

信仰   :運命神の加護 Lv.1、斬神の加護 Lv.1、知識神の加護 Lv.1

称号   :《斬》を目指す者

HP   :32/144

MP   :26/145

SP   :56/127

ATK  :81.5

DEF  :21.5

スキル  :雷流・見習い(P)、俯瞰(P)、先の後(A:5)、旋舞(A:10)

魔術   :初級地魔術、初級水魔術、初級火魔術、初級風魔術、

      初級光魔術、初級闇魔術、初級無魔術、初級精霊魔術

装備   :木刀(ATK+5)、布の服(DEF+2)、布のパンツ(DEF+2)

残ポイント:31





 あらためてステータスを見てみると、多少は強くなったかな、と思える。



 ……しかし、「実際的な授業」に入った途端、なぜか毎回全能力が上がるようになったな。


 ツカサが言うには、「能力値上昇に必要な経験値が、他の者よりも少ないのだろう」とのことだ。

 通常は、筋力が上がりやすい人は知力が上がりにくい、などの制限がある。

 つまり、戦士系の人が魔術を習得し、主に魔術でレベルを上げても、知力、魔力を上げるために必要な経験値が得られていなければ、レベルを上げても何の能力値も上がらない、ということもあり得る。

 それを判断するのはレベル1時の初期能力値で、その能力の偏りによって進むべき道を決めるのが一般的だという。

 幸か不幸か、俺はすべての能力値が10だった。

 つまり、すべての能力値は、同じ割合で成長する可能性がある、ということのようだ。

 要するに剣術と魔術をバランス良く使ってレベルを上げれば、全能力が上がるってことだな。

 まあ、実戦でバランスを意識するのは難しいから、いつかは崩れていくんだろうけど。



 ところで、いくつかスキルを習得してるけど、ツカサの宣言どおり、BPは消費していない。

 日々の訓練によって、単なる動作が技に昇華し、スキルと認められたのだ。


 ちなみに、各スキルの詳細は、



 雷流・見習い(P):雷流の技を使うことができる。

 俯瞰(P):目の前の敵に集中しながらも、五感のすべてを使い、周囲の情報を読み取ることが出来る。

 先の後(A:5):攻撃後の隙が少なくなり、敵の反撃を避けやすくなる。また、次の攻撃につなげることが出来る。

 旋舞(A:10):攻撃後の反動を、次の攻撃に上乗せできる。発動後、さらに発動することにより、攻撃力が累積する。



 となる。ちなみに(P)はパッシブの略、つまり常時発動のスキルで、SPは消費しない。

 (A)はアクティブの略、つまり明示的に使用することで効果を得る。こちらは(A:○○)の、○○の数値分、SPを消費する。


 さっきの訓練でも、もちろんスキルは使っている。

 ツカサに対峙しながらも【俯瞰】で小石の存在に気付き、初撃の直前に【先の後】を使い、【旋舞】で二撃目を繰り出した。

 木刀を掴まれたことで攻撃が中断したが、もしも弾かれていた場合、【旋舞】を上乗せすれば、さらに強力な攻撃を繰り出せたんだが……まあ、今のままじゃ、威力以前の問題だな。



 俺をじっと見つめていたツカサは、おそらく、俺のステータスを見ていたんだろう。感慨深げに頷いた。


「……主がここに来て2週間。ついにLVが5に上がったか」


「2週間か。成長速度的にはどうなんだろ?」


「一月で辿り着くことを想定しておったから、かなり早いと言うべきだな」


「……レベル上げるのって、かなり大変なんだな」


「然り。されど、主にはサクラの加護があるからな。一般の冒険者よりは苦になるまいよ。

 もっとも、レベルで上がるのは身体能力のみだ。技量と経験次第では、レベルの差など容易に覆せる。

 決して奢らず、諦めるな」


 頷く。自分の方が圧倒的にレベルが高かったとしても、舐めてかかれば敗北することもある。

 その逆に、相手のレベルが高かったとしても、それだけで絶望する理由にはならない、と言うことだろう。


「でも、やっぱまだまだ差があるなあ。ツカサの強さの底が見えないぜ」


「昨日今日刀を握ったばかりで何を言うか」


 苦笑するツカサに、俺もまた苦笑を返す。


 ――さて、そろそろ体力も回復した頃か。

 立ち上がり、頭を下げる。


「もう一本、お願いします」


「うむ。先の注意を忘れぬようにな」


 はい、と答え、俺は再び構えを取る。今度は奇を衒わず、正眼に木刀を構える。

 再び、じりじりと間合いを詰める。力を溜めに溜め、やがて一気に吐き出す――


「その勝負、待ったーっ!」


 文字通りに気勢を削がれ、思わずよろめく。

 ツカサに意識の大半を向けたまま、声のする方向――俺から見て右手奥、ツカサの背後に視線を向ける。


 そこにいたのは、金髪碧眼の美女だった。

 年の頃は二十代前半ほど。ぱっちりとした目に宿る鋭い光、凜とした雰囲気、隙の無い物腰は、容易に武人であることを連想できる。

 身長はおそらく170前後。俺よりも拳ひとつぶんくらいは高い。

 体付きはすらりと細く、しなやかだが、胸にそびえる二つの巨峰は、まさに女性であることを主張していた。


 ツカサはやれやれとため息を吐き、手振りで訓練の中断を伝えると、見知らぬ美女に向き直った。


「――オルフェリア。何の用だ?」


「聞けばこの者を一人前にするべく、ツカサどの御自身が鍛えておるとか。

 そんな面白そうなことを私に黙っているなんて、ズルいですぞ!」


「……狡い、と言われてもな。――見てのとおり、タクミはあまり体格に恵まれておるとは言えぬ。

 筋力を重視する『剣』よりも、速度と器用さを主体とする『刀』の方が向いておると思ったのだ。

 となれば、剣しか教えられぬ主を呼んでも仕方があるまい」


「しかし、ラフィール大陸では剣が主流! と言うか剣術家など居りませぬ!

 この者には刀の方が向いている、というツカサどののご意見はご尤もなれど、剣士との戦い方を学ぶことは、決して無意味ではありませぬ!」


「……相変わらず、戦のこととなれば頭が回るな」


 小さくため息を吐くと、ツカサは俺に向き直った。


「――紹介がまだであったな。この者の名はオルフェリア。エルガイアにおける、闘争の女神だ」


「よろしく頼むぞっ!」


 紹介された金髪の美女は、満面に笑みを浮かべた。一点の曇りもないその笑顔に気圧されながら、俺は頭を下げる。


「は、はあ、どうも。斎城拓巳……タクミ・サイジョーです」


「サイジョー・タクミ……タクミ・サイジョー……サミーと呼んでも?」


「やめてください。タクミで。タクミでお願いします」


 パチスロメーカーっぽい愛称を付けられそうになった俺は、速攻で否定した。

 だが、俺が嫌がっていることなんてまったく意にも介さず、オルフェリアは大笑する。


「はっはっは、そんなに照れなくてもいいぞサミー! 私のことはルファでいいからな!」


「いや、照れてるんじゃなくて嫌がってんですけどね。あの、聞いてます?」


「さあ、自己紹介もつつがなく終わったことだし! いよいよ実戦に入ろうか!」


 言うなり、オルフェリアはどこからともなく大剣を取り出し、ぶんぶんと景気よく振り回し始める。

 彼女の身長ほどもあるそれは、光の反射具合と言い、重い風切り音と言い、間違いなく真剣だ。


「うわーダメだこの人、人の話聞かない人だー。って、ツカサも黙って見てないで、なんとか言ってくれよ!」


「うむ」と重々しく頷いたツカサは、素振りを続けるオルフェリアに話しかける。


「オルフェリア。真剣ではなく木剣を使え。これは実戦ではなく、訓練なのだからな」


「そうそう、真剣は当たると死んじゃうからね――って、やり合うの確定なの!?」


「あれはたしかに阿呆だが、戦においては一流だ。あれの剣に慣れれば、そこらの剣士にはそうそう遅れを取るまいよ」


「……まあ、一理有るっちゃあ有るか」


 しぶしぶと納得する俺。だが、当のオルフェリアは不満そうな顔だ。


「しかし、実戦に勝る訓練はありませぬ! 命を掛けた闘いの先にこそ成長がある!」


「戯け。仮にも戦女神と呼ばれた主相手に、駆け出し未満が実戦を挑んだところで、むざむざ命を落とすだけであろう。

 それに、そんな弱者を一刀のもとに斬り捨てたところで、主は満足できるのか?」


「……むう。それは、確かに……」


「それよりも、訓練で鍛えて送りだし、エルガイアの地で実戦を積ませれば、いずれは主と全力で戦えるようになるかも知れぬ。

 そちらの方が良いとは思わぬか?」


「おお! なるほど!」


 目を輝かせ、持っていた大剣を、無造作にぽいと放り捨てるオルフェリア。

 ……な、なんか雲行きが怪しくなってきたような? このままだと、いずれ神様と戦わなきゃならないのか?


「それではサミーどの! 右手……はすでに塞がっているな。では、左手を出してくれ!」


 唐突にそんなことを言い始めるオルフェリア。

 きっと彼女を理解することは出来ないんだろう、とある意味悟った俺は、何も考えずに左手を差し出す。

 オルフェリアは両手で包み込むようにして握り、手の甲を上に向ける。


「――我が名は闘争の神、オルフェリア。その名の下に、汝、タクミ・サイジョーに加護を与える」


 そう告げると、彼女は俺の手の甲に口付けた。


 ――え、何の前触れもなく加護を!?


 なんて驚く俺を余所に、エルミナらのときと同じように、身体から光があふれ出す。

 やがて光は左手の甲に収束し、交差する剣に似た痣が刻まれた。


「私の加護は、全クラスの成長率が5%上昇し、取得経験値が10%上昇するぞ! まさに戦士のための加護だな!」


「ありがたいけど……サクラの加護で経験値50%上昇があるんだよな。この場合ってどうなるんだ?」


 単純に上昇値が増えるのか。大きな上昇値のみが有効とされるのか。前者ならいいが、後者ならまったくの無意味だ。

 悩んでいると、ツカサがあっさりと答えを口にした。


「単純に50+10%で60%増加だ。クラス成長率についても同様だな」


「なるほど。そりゃありがたい」


「そうだろうそうだろう!」


 褒められたと思ったのか、満足げに何度も頷くオルフェリア。

 そして、今度はどこからともなく、木で出来た大剣を取り出してきた。


「準備も整ったことだし! さあ、訓練を始めようか!」


 ……何という脳筋。本当に戦うことしか考えてないのか。

 見た目は清楚な金髪美女なのになんて残念な……


 俺は溜息を一つ付くと、地面に転がっていた木刀を手に取る。


 構えは――基本中の基本、正眼でいいか。なんだかんだ言って、大剣を相手取るのは初めてだしな。

 攻防に優れた正眼なら、ある程度の対処は可能だろう。


 オルフェリアはにっこりと微笑むと、無造作に踏み込み、上段から大剣を振り下ろした。

 木剣のはずなのに、振り下ろされる剣には淡い金色の光が宿っている。――これが剣スキルか!


 剣の軌跡は目で追うのがやっと、という尋常ならざる速度だ。だが逆に言えば、目で追うことはかろうじて可能だ。


 ぎりぎりで避け、弾いて体勢を崩し、【旋舞】で連続攻撃をかける。


 そんな流れが一瞬で頭に浮かぶが、直後、小手先の戦術は恐怖一色に塗り潰された。

 恐怖に従い、大きく右に跳ぶ。

 余裕が有り過ぎるほど余裕で回避されたオルフェリアの剣は、地面へとぶつかり――直後、爆音と共に空中にいる俺の身体は吹っ飛んだ。


 無様に地面に叩き付けられるのだけは避け、受け身を取り、転がって間合いを離す。


 見ると、剣の触れた地面は、直径一メートルほどのクレーターと化していた。


「ちょっ――な、なんだその威力は!」


「よくぞ避けた! 今のは剣の基本スキル、【スラッシュ】だ! 最終ダメージに筋力×10%のボーナスが入るぞ!」


「おいおいどこが基本スキルなんだよ! 地面抉れとるやないけ!」


「今の私の筋力値は5000オーバーだからな!」


「アホか! ボーナス分だけで4回は死ねるわ!」


 現在の俺の最大HPは144です。


「むう、これでもだいぶ落としているのだが……主に筋力値以外を」


「いやいや、むしろ筋力値を真っ先に落としてくれよ! 擦ったら死ぬとか、それ、もう訓練じゃないからね!」


 本気で食ってかかっていると、ツカサが深々とため息を吐く。


「戯け。目的をはき違えて何とする。主の信徒に、筋力値が5000を超えた者が居るのか?」


「はっはっは、さすがにそこまでの者はいませんな! 最も高い者でも200程度でしょうか!」


「ならば100程度まで落とせ、阿呆。今のままでは訓練以前の問題だ」


「なんと……! それでは敵に勝てぬではありませぬか!」


「倒して何とする。何度も言うが、これはタクミを成長させるための訓練だ。

 ――同意できぬのならば、とっとと()ね」


 無表情ながら、ツカサの目がぎらりと光る。

 眼光をまともに浴びたオルフェリアは、顔色を真っ青にし、直立不動になった。


「わ、わかりました! 申し訳ありません!」


 ツカサはため息を吐くと、俺に向かって手を振った。

 爆撃を受け、少なからず減っていたHPが、それだけで最大値まで回復する。


「さんきゅー。……しかし、筋力値5000とかのバケモノでも、おまえには頭が上がらないのな」


「地方神と概念神にはそれだけの差がある。どれだけ強くとも、蟻では象に勝てぬであろう」


 まさに強さの次元が違う――ってことか。まあ、それは俺とオルフェリアにも言えるんだろうけど。


 ……あれ。それじゃあ、俺がどれだけ実戦で経験積んでも、オルフェリアには届かなくね?


「神とは完成されたモノだ。故に劣化はせぬが、成長もせぬ。

 だが、ヒトは不完全なモノだ。故に努力を怠れば劣化し、努力を続ければ成長する。

 確かに不可能にも等しい可能性ではあるが、ヒトが神をも超える成長をすることはあり得る」


「なるほど、一理あるな……って、LVを5000程上げろと?」


 って言うか上がるのかそんなに。普通のRPGだと限界は99だぞ?


「安心しろ! 気合いと根性さえあれば限界なんて簡単に超えられるぞ!」


「………………。いやー、それはちょっとどうかなー。

 ……ちなみに、オルフェリアの信徒で一番レベルが高い人って?」


「タラール帝国の英雄、狼の獣人族である双剣のオルナック・ラスタビートだ! 物心付いた頃より戦場に立ち、今ではレベルは203だぞ!

 そしてサミー、私のことはルファと呼べ!」


「あー、そういえばそんなこと言ってたっけ……分かったよ、ルファ。

 それで、どうせならその人を鍛えたら? 俺なんてまだレベル5だよ?」


「残念ながらもうじき200才で、さすがに戦場には立てんのだ!」


「……そりゃ無理は言えんわなー。って言うか、獣人って長生きなのな」


 200才って。

 しかもオルフェリア――ルファの話しぶりからして、たぶん、引退するまではずっと戦場に立ち続けてたんだろうな。それでレベル203か。

 俺はさすがに普通の人間だから、戦場に立てるのは、いいとこ50までだろう。

 オルナックさんが150才くらいまで現役だったと仮定すれば、俺が得られるであろう経験値の4倍は取得してるわけだ。

 ということは、俺の予想最高レベルは50くらい?

 サクラやルファの加護もあるけど、それでもいいとこ100くらいが限界だろう。

 とは思ったけど――


「……まあ、頑張ってみるよ」


「ああ! 期待しているぞ!」


 目をきらきらさせながら微笑むルファ。

 ……不覚。ちょっと可愛いとか思ってしまった。





「さあ、それでは明日のために! これから死ぬ気で訓練だ!」


「いやいやいやいや、さすがに訓練で死ぬつもりはないからな!」



本話終了時の能力値は、

筋力:18(+7)、体力:18(+7)、敏捷:18(+12)、

器用さ:15(+12)、知力:17(+10)、魔力:16(+10)

となります。

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