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(仮題)異世界に里帰り  作者: 吉田 修二
2章 駆け出し冒険者
22/29

9 誰がための剣・2 キマイラ

前半ゆったり、後半急展開。


え、タイトルバレしてるって?

いやいやまさか、そんなことは。


 東の街道を、真っ直ぐに進む。

 このまま5、6時間も歩けば、俺がこの地に降り立った森に辿り着くけど、目的地の洞窟は、そこから更に北北東の方角にあるようだ。

 距離だけで考えれば、街道を無視して直進した方がいいんだけど、街道を外れると、途端に動きづらくなる。

 そんなところを旅することは想定されていないから、もちろん地面は踏み固められていないし、草木もかなり生い茂っている。

 辿り着いたときの疲労度も考えれば、可能な限り街道に沿った移動の方がいいだろう。


 ……しかし、ぜんぜん関係ないんだけど、草木が生い茂ってるって事は、ここの土地はわりと豊かなんだよな。

 開墾して農業でもやれば良いんじゃないか?

 オルグは他の街への移動が結構楽みたいだし、ここを穀倉地帯にすれば、それなりの利益が期待できるような気がするけど。

 ……ああ、その代わり、魔物の襲撃に備えないとダメか。

 護衛のために兵士を常駐させる必要があるし、規模が大きくなればなるほど必要な兵士の数も多くなるな。

 なら、冒険者を雇えば――って、パーティがいくつ必要なんだよって話だな。

 襲ってくる魔物の質も分からないし、あんまり現実的じゃないか。

 いや、屯田兵の制度を導入すれば――って、思考の寄り道が過ぎたな。

 まあ、何らかの理由があるんだろう。一冒険者が考えるような事じゃない。


 ところで、今の俺は左の腰に打刀を佩き、背中の右側にブロードソードを背負っている。

 二刀流はまだ稽古にさえ入ってないけど、いざというときのことを考えると、リュックに入れっぱなしでは話にならない。

 現状でも、とりあえず剣を振ることくらいは出来るから、右腕が使えなくなっても、左腕の剣で牽制し、その間に距離を取って右腕を治療し――といった戦い方も可能だ。

 また、それに伴い、打刀に宿っていたカタリナには、お願いしてブロードソードに移ってもらった。

 実は、彼女が宿った武器は損耗しないという特殊効果があったんだけど、打刀自体が損耗しないように作られてるから、今までその効果を実感できなかったんだよな。

 お願いすると、『タクミ様のお役に立てるなら』と喜んで移ってくれた。

 ……気立ての良い子だなぁ。


 ……とと、気がつけば街から大分離れてたようだ。

 ここから先は走って移動しよう。



 しばらく進むと、前方にうっすらと森が見えてきた。

 思えばあの場所から俺の冒険は始まったんだなぁ、と少しばかり感慨に浸っていたが、気を取り直し、記憶珠を取り出す。


 眼前に浮かび上がった地図を眺めると、街道はここから南東に折れ、港町ミルザへと続いている。

 つまり、ここからは街道を離れ、北北東へと進まなければならない。

 草が生い茂ってるから、地面に何が隠れているのか分からない。走るのは危険だろう。

 周囲に気を配りながら、街道を逸れる。



 草を踏みしめ、岩を迂回し、隠れていた石に何度も躓きそうになりながらも、歩を進める。

 着実に洞窟までの距離を詰めながらも思うのは、洞窟に目的の薬草があるのか、だ。

 ルファの話、そして俺が調べた結果でも、ピラル草は洞窟の奥に自生する、とだけ記載されていた。

 ごく一部の病気にのみ有効な薬草だから、需要が無く、あまり詳しい調査がされていないのは仕方の無いことだが……

 良くは知らないんだけど、洞窟と一口に言っても、いろんな種類があるだろう。

 洞窟の全長、内部の温度や湿度は関係ないのか?

 鉱石の採掘によって作られたような採掘跡には生えないのか?

 あるいは、運勢値が高ければ、生えないはずの場所でも生えてる、なんてこともありうるのか?


 ――まあ、最後のはさすがに無いだろう。

 俺自身がどれだけ幸運でも、世界のルールを歪めるほどでは無いはずだ。

 仮に運勢値が高かった場合、自生している洞窟の情報がそれとなく入ってくるとか、たまたま流通していたものを見つけるとか、その程度だろう。

 それに、今日の運勢は50%で、今更変更は出来ない。

 1日では辿り着かないだろうから、せめてもの慰めに、明日の朝はストックしてある運勢値を注ぎ込んでみよう。


 それに、ここが外れだったからと言って、諦めて良い理由にはならない。

 今回の依頼の成否は、俺の冒険者としての評価、違約金なんて小さな事には留まらない。

 人一人。それも、子供の命が懸かっている。

 ここがダメなら、次の洞窟。

 そこがダメなら、更に次の洞窟。

 最後の最後まで、諦めることだけはしてはならない。



 悪路に苦戦しながら進んでいくと、不意に草原の切れ間が見えた。

 不思議に思って記憶珠を使うと、現在位置はオルグの東北東方面。

 そう言えば、これまで西と東には行ったことがあるけど、北に行くのは初めてだったな。

 

 オルグの北にはクールーという街があり、その更に北には山岳地帯がある。

 山岳地帯には貴重な植物、鉱物があるが、そこを住処とする魔物は強力で、最低でもCランク以上で無ければ、討伐が難しい。

 山岳地帯の奥には迷宮があり、そこからあぶれた魔物が巣くっているのだそうだ。

 オルグ近辺に出現する魔物は、そこでの生存競争に敗れた者達だ。強さもそれほどでは無く、数も多くない。


 クールーには金と名声を求めた冒険者達が数多く集まっており、彼らを目的とした産業で賑わっている。

 栄えているクールーに対するオルグの立ち位置は、港町ミルザとの中継点。ミルザから仕入れた異国の品を運び入れ、多額の利益を上げている。

 そのため、依頼の多くは商隊の護衛、および街道の安全を乱す魔物の討伐となる。

 冒険者はオルグで実力を磨き、向上心のある者は、いずれはクールーに拠点を移し、迷宮に挑む。

 それがここ、イルス王国東部における冒険者のセオリーなのだそうだ。



 いつの間にか草原の終わりを越え、周囲には荒野が広がっている。

 まばらに草木が生えているが、土地が痩せているのか、草原、森らしきものは見当たらない。

 もしかしたら、山岳地帯にあるという迷宮が原因かもしれない。

 魔物は『負の想念』を核としているそうだけど、その身体を形作っているのは、おそらくは周囲のマナそのものだろう。

 魔物を生み出すため、迷宮が周囲のマナを吸い上げ、それが動植物の生育に悪影響を与えている可能性がある。

 ――今度の礼拝で、エルミナに聞いてみよう。



 道中、森狼の親戚らしい、茶色い毛皮の狼の群れに襲われた。

 【初級鑑定】してみると『ワイルドウルフ』という名前で、平均レベルが5程度だった。

 せっかくだからと、左腕でブロードソードを使ってみる。

 武器そのものは少なくとも木刀より強力だし、それを使う俺自身の基礎能力が落ちたってことも無い。

 それでも、刀とは違ってまだ慣れない武器、慣れない左腕だから、一匹一匹を慎重に仕留め、剣を盾代わりとして攻撃を避ける。

 時間は掛かったが、結果だけ見れば、傷ひとつなく全滅させることが出来た。



 気がつけば、太陽が西の空に沈もうとしている。

 近くに水場は無いけど、今日のところはこの辺で野営することにしよう。


 10m四方程度に結界石を起動させ、携帯食料と水筒の水で簡単に食事を済ませる。

 剣と刀の素振りを行い、ほどよく疲れたところで終了。

 布きれに水を含ませ、ざっと身体を拭き終えると、下着を替えてテントで休む。





 翌日は、朝日と共に目が覚めた。

 今日の運勢予報は60%。

 残っていたストックが20%あるそうなので、すべて注ぎ込む。


 懐中時計を見ると、5時30分少し。

 ストレッチで身体をほぐし、簡単に食事を済ませ、野営の跡を片付ける。

 火を使わなかったから、後始末も楽だ。

 6時頃には出発する。



 昨日は結局1度しか魔物と遭遇しなかったが、今日はかなり遭遇率が高い。

 どうやら、運勢の高さは遭遇率には影響しないようだ。

 ……なら、一体何の役に立つんだ?

 やっぱり数字だけで、実は効果が無いとか?


 ワイルドウルフを初めとして、ゴブリン、オーク、それに、ほぼ人間と同じサイズの蟻、ジャイアントアントなんて魔物とも遭遇した。

 どれも3~5匹の群れだったので、それほどの脅威では無かったが、巨大蟻には少々手間取った。


 昆虫だけあって外殻が堅く、攻撃しても大きく怯まない。

 だが、何よりも脅威なのは、彼らの連係攻撃だ。

 正面で俺の攻撃を食い止める者、背後に回って攻撃を加えようとする者、中距離から蟻酸を飛ばす者と、完全に役割が分担されていた。

 剣だけでは無理だと判断し、攻撃魔術で牽制しながら戦う。

 刀だったら外殻の隙間を狙って両断していただろうけど、剣なので正面から攻撃してみる。

 一度では多少外殻を凹ませた程度だったけど、二度、三度と攻撃を繰り返すと、やがて外殻が爆ぜ割れ、中身の柔らかい部分に剣先が届いた。

 幸い、3匹だったからほとんど無傷で終わらせたが、これがもっと数多くなると面倒そうだ。



 携帯食料で昼食を済ませ、更にしばらく歩くと、岩山が目に入る。

 更に進むと、岩山の中心に、ぽっかりと洞窟が開いているのが見えた。


 中は薄暗く、ひんやりとしている。

 光の初級魔術、【ライト】を使う。頭上に光の玉が生まれ、周囲をぼんやりと照らし出した。


 所々で僅かに草木が生えているが、ピラル草ではない。


 ちなみに、ピラル草の見た目はバジルに似ている。

 本物のバジルなら、確か寒さに弱かったと思ったから、見た目が似ているだけの別の植物なんだろう。



 半ば予想はしていたけど、洞窟の中にも魔物は居た。

 まずはブラッドサッカー。見た目コウモリそっくりだ。

 天井で岩肌に擬態し、獲物が通り過ぎたところを襲う。

 まあ、【初級察知】で居ることは分かってたし、警戒心MAXだったから、羽音で気づいたけどね。

 難なく躱し、剣を一閃。あっさりと両断された。


 続いてはケイブスネーク。直訳すると洞窟蛇。

 全長は2m弱。蛇が苦手な人だと凍りつく大きさだな。

 洞窟の中で生きることに特化した魔物なのか、目が存在しないのが一層不気味だ。

 身体の色や模様がほとんど洞窟の地面そのもので、じっとしているとまったく区別できない。

 タイミング次第では、不意打ちを受けて毒状態にでもなっていたのかもしれない。

 【初級察知】があって助かった。

 ちなみに、こいつのドロップ品は肉だった。……え、蒲焼きにでもして食えと?



 魔物達を殲滅しながら進んでいくと、真っ直ぐだった道がやや左に折れていた。

 そして、その折れた先から魔物の気配。

 顔だけ出して覗いてみると、そこには眠る獅子の顔。

 ……いや、獅子だけじゃ無い?

 よくよく観察すると、獅子の顔の上には山羊の顔があり、背中には鷲の翼らしきものまで生えている。

 そして、足元にはとぐろを巻く蛇。


 そう言えばそんな伝承あったよな、と思いながら【初級鑑定】する。



種族名:レッサーキマイラ

分類 :魔物

LV :24

経験値:36,212/39,810

状態 :睡眠(軽)

HP :781/781

MP :321/321

SP :261/261

ATK:94.2

DEF:53.2



 ああ……やっぱりキマイラなのね。

 でも『レッサー』ってことは、下位種なのかな。

 攻撃方法が不明だから不安と言えば不安だが……見た限りでは、勝てない相手ではなさそうだ。


 ……ところで、ここで戦闘しても大丈夫なのか?

 もしここにピラル草があったら、巻き込まれてぼろぼろになりかねない。


 ――注意深く観察するが、どうやらキマイラの周囲には生えていないようだ。


 次いで、周囲の地形を確認する。

 頭上には大きな竪穴があり、そこから日の光が差し込んでいる。

 どうやら、ここから出入りしているようだ。


 キマイラが眠る背後には、更に奥へと続く穴がある。

 ピラル草が生えてるとすればその先かな。

 ……というか、そうだと期待したい。


 となると、どうにかしてあいつを退かす必要があるわけだ。



「――【グロウ・パワー】、【グロウ・シールド】、【スピアー】×5」


 起句に応え、俺の眼前に5本の槍が現れる。

 中級に上がったことで、複数本の制御が可能になった。最大数は5本。

 ただし、その分多くのMPを消費する。


「――【シュート】」


 発動の言葉と共に、5本の槍が直進する。

 途中で微妙に軌道を変化させ、5本の槍は狙いどおり、獅子、山羊の両目、とぐろを巻いていた蛇の頭部を貫いた。


 苦悶の絶叫を上げるキマイラに構わず地面を駆けて肉薄し、まずは蛇の尾を寸断する。

 同時に【飛燕】を発動させ、胴体を剣で斬り上げ、斬り下ろし、更に【クロススラッシュ】。

 よし、次は――と思っていると、キマイラはひときわ大きな絶叫を上げ、やがて地面に倒れ伏した。


 死んだふりか、と距離を取って様子を見守ると、やがてその身体は宙に溶けるようにして消えていった。

 ぴろん、と電子音が響く。

 どうやら、レベルが上がったらしい。って――


「……え。もう終わり?」


 呆気に取られて呟きながら、ドロップ品を回収する。

 爪と毛皮。爪は換金用、毛皮は加工すれば防具としても使えるらしい。


 まあ、寝てるところに不意打ちで、両目を潰させてもらったから、これも当然の成り行きか。

 ……しかし、よく考えたら、不意打ちでの攻撃は結構多い気がするな。

 いつのまにか『暗殺者』のクラスを取得してたらどうしよう……。


 一抹の不安を抱えながら、洞窟を更に奥へと進む。



「……あった!」


 進むことしばし、ついにピラル草を発見した。

 壁際にひっそりと生えていたから、危うく見落とすところだった。

 【初級鑑定】でも確認したし、間違いない。


 洞窟はまだ奥に続いているようだけど、探索は後回しだ。

 今は一刻も早く帰って、キーンを治してやらないとな。


 そして洞窟の奥へと背を向け、入口へと向かって歩き出した。





**********



 一方その頃、キマイラ討伐の依頼を受けたアスタは、まさに戦闘中だった。


 剣を構え、睨む相手はキマイラ。彼我の距離は10m弱。

 下位種(レッサー)ではなく、上位種(グレーター)である。

 鑑定系のスキルが無いアスタに知る由は無かったが、このグレーターキマイラのレベルは40、HPは2000弱。

 これほどの強敵を倒すには、レベル20以上の冒険者が最低でも6人は必要だ。

 しかもそれは最低ラインで、犠牲者無く倒すためには、平均レベルが25以上、出来れば30以上は欲しい。

 どれだけレベルが高くとも、1人で挑むような魔物では無い。


 だが、たった1人で相対するアナスタシアの顔には、恐れはおろか、焦りさえも無い。

 ただ冷静に、冷徹に、キマイラの動向を観察している。


 不意に、キマイラの右肩から生える山羊が大きく息を吸う。

 それを認め、ほぼ同時に、アスタは地面を駆ける。


 山羊の口から、放射状の炎が吹き出される。半端な回避など無意味なほどの広範囲だ。

 だが、アスタは地面を蹴り、大きく跳躍してそれを避けていた。

 同時に大剣を振りかぶると、白光に包まれ、眩いばかりの光を放った。


「――ふっ!」


 すでにキマイラの頭上まで跳躍していたアスタは、短い呼気と共に、白光に包まれた大剣を振り下ろす。

 剣は見事に山羊頭を両断し、残った獅子頭が絶叫を上げる。

 苦し紛れに放たれた、強靱な爪による引っ掻きをステップで避け、襲い来る大蛇の攻撃を大剣を盾にして防ぐ。

 防ぐと同時、再びアスタの大剣は白光に包まれ、凄まじい速度で切り上げる。

 位置が悪く、両断するには至らなかったが、大剣はキマイラの右前足を深く傷つけた。


 ――ここまでで、おおよそ1/3ほどはHPを削ったか、とアスタは冷静に考える。


 レベルの差こそあれ、キマイラはアスタにとっては慣れた魔物だ。

 かつては素晴らしい仲間達と共に、グレーターの更に上位種である、ロードと死闘を繰り広げた。

 ならば、如何に上位種といえど、自分が負けるはずは無い。

 ――たとえ、今はたった1人で戦っているとしても。


 獅子の頭が大きく息を吸い込む。

 またブレスか、と身構えつつ、油断無く挙動を読む。


 やがて獅子の頭は、収束した火炎を吐き出した。


 ――自らの足元に。


「――なにっ!」


 瞬間、周囲が凄まじい砂埃に襲われる。

 大剣を盾にし、腕で目を庇いながらも、アスタは見た。

 傷ついたキマイラが羽ばたき、宙に浮いたその姿を。

 そしてキマイラはよろめきながら、東の空目指して飛んでいった。


「ちっ――逃げたか!」


 苛立たしげに舌打ちし、大剣を背中の鞘に戻すと、懐からスキルポーションを取り出し、一息に飲み干す。

 そして、その影を求め、街道を外れて東へと走っていった。





**********



 洞窟の往路で可能な限り魔物を殲滅した甲斐があり、復路は実に順調に進み、あっさりと入口まで戻ってきた。

 久しぶりの日の光に目を細め、大きく伸びをする。


 ――そうだ、レベルも上がったことだし、せっかくだからステータスを確認しよう。



LV   :18

経験値  :13,730/15,520

状態   :健康

クラス  :魔術師 Lv.1、剣術家 Lv.4、剣士 Lv.3

信仰   :運命神の加護 Lv.1、斬神の加護 Lv.1、知識神の加護 Lv.2、戦女神の加護 Lv.2、鋼精霊の祝福 Lv.1

称号   :知識神の寵児

HP   :311/311

MP   :241/281

SP   :254/293

ATK  :199.5

DEF  :58.9

スキル  :雷流(P)、俯瞰(P)、初級察知(P)、先の後(A:5)、後の先(A:5)、旋舞(A:10)、飛燕(A:20)、昇竜(A:25)、隼(A:30)

      スラッシュ(A:10)、チャージ(A:15)、クロススラッシュ(A:15)、リバース・エッジ(A:20)、ソニックブーム(A:25)

      初級鑑定(A:0)

魔術   :中級地魔術、中級水魔術、中級火魔術、中級風魔術、

      中級光魔術、中級闇魔術、中級無魔術、中級精霊魔術

装備   :打刀+2(ATK+30)、ブロードソード<+カタリナ>(ATK+20)、スチールアーマー<軽>(DEF+20)、レザーグローブ(DEF+2)、レザーブーツ(DEF+3)、神界の扉

残ポイント:68


筋力:35(+7)、体力:36(+7)、敏捷:36(+17)、

器用さ:35(+17)、知力:34(+10)、魔力:34(+10)



 はて、ATKがやけに高いが……。

 ……ああ、そうか。打刀を装備した場合のATKが表示されてるのか。

 ブロードソードの場合は打刀よりもATKが低いから、少なくともこの値より10は下がるな。


 それはそれとして、称号は『知識神の寵児』のままだったか。

 まあ、魔術で先制したから、消費を抑えるって意味でも無意味じゃ無いけど、どうやらオルグ北部は全体的に魔物が強いみたいだな。

 念のために、『戦女神の弟子』に変えておこう。


 そうそう、せっかくBPがあることだし、習得可能だから、剣技も少し覚えてみた。

 それぞれの効果は、



 クロススラッシュ(A:15):スラッシュを2回連続で放つ。


 リバース・エッジ(A:20):攻撃後に発動。攻撃前以上の速度で斬撃を放つ。

                速度は筋力、敏捷の能力値に依存。


 ソニックブーム(A:25):空気を斬り裂き、飛翔する斬撃を放つ。(風属性)

               威力は筋力に依存、有効距離は敏捷に依存、距離による威力減衰あり。

               器用さの能力値により、減衰率が低下する。



 と言うわけで、俺の左腕をへし折ってくれたのは、【リバース・エッジ】でしたとさ。

 ……おっさん、レベル高いだけあって能力値は高いんだよなぁ。

 おかげさまであの一撃はどうしても避けきれなかった。


 【隼】が刀による一撃を重視するスキルなのに対し、【ソニックブーム】は、斬撃を飛ばすことを主眼に置いたスキルだな。

 予想はしてたけど、飛ばされた斬撃の威力では【ソニックブーム】の方が上になる。

 まあ、俺が避けられたように、隙が無いスキルってわけでもないから、【隼】との差別化はされてるな。


 ……しかしこうして見ると、剣士ってあんまりスキル覚えないのな。

 同じ段階の『剣術家』は、初級の段階でかなりのスキルを取得できたんだけど。

 ……まあ、それ以降は足踏みしてるけどな。

 それか、剣術家で取得したと思ってたスキルは、実は剣士と被ってたとか?



 さて、そうこうしている間に、多少はMPとSPが回復したみたいだ。

 早くオルグに戻って、ピラル草を渡して来よう。



 足早にその場を離れようとした俺だが、不意に足元を大きな影が横切るのを認め、頭上を振り仰ぐ。


 ――大きな、大きな影が、空を横切っていた。


 しかも影はみるみるうちに大きくなる。

 ――どう考えても、俺の近くに降りてくるようだ。


 やがて、それは地面に降り立った。


 獅子の頭と胴体。右肩には何らかの動物の首らしきものがついているが、中途から鋭い切り口で切り離されている。

 右の前足も負傷しており、それぞれの傷口からは、今も血が滴り落ちている。

 見るからに、誰かとの戦闘中に逃れてきた様子だ。


 その姿は、先ほど倒したキマイラに酷似している。

 だが、二回り以上大きいし、感じるプレッシャーは、先ほど倒したそれの比では無い。


 恐る恐る、【初級鑑定】する。



種族名:グレーターキマイラ

分類 :魔物

LV :40

経験値:210,367/229,455

状態 :健康(睡眠、毒、麻痺無効)

HP :1,192/1,915

MP :760/806

SP :638/638

ATK:133.8

DEF:84.8



 ……おいおい、こいつって、どう見てもボスじゃね?


 凍りつく俺を睨み、キマイラは、ただ低く唸って観察していた。



ボスを倒したと思ったら雑魚だった上、更にボスが現れたでござるの巻。


キマイラ(獅子)「レッサーがやられたようだな」

キマイラ(山羊)「ククク……奴はキマイラの中でも最弱……」

キマイラ(大蛇)「人間ごときに負けるとはキマイラの面汚しよ……」

アスタ「……一匹で何をほざいている?」

キマイラ「グアアアアア」


なんて展開はありませんのでご安心下さい。



銀熊を上回る強敵を前に、凍りつくタクミ君。

果たしてアスタさんは間に合うのか?

それとも上位種も意外とあっさり倒してしまうのか?

そして、作者は果たして定時に帰宅し、次話の執筆ができるのか?


上司「吉田君、お客様からクレーム入ってるから。すぐ行ってきて」(定時5分前)

吉田「もうやめて! とっくに吉田のライフはゼロよ!」


一部実話を含みつつ、次回に続く!


※(10/6)誤字訂正

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