3-24 使うモノ、使われる者
リオンの救出、障害となる〈知核人機〉のカスタム機である〈白銀〉と〈紅刃〉の排除を完遂。
プログラムされた機械が役目を終えて動きを止めるように、俺の体が止まる。
最初に禄ノ星神による能力妨害を受けた時みたく、等間隔に激痛と肉体の自由を奪う感覚の麻痺が襲いかかってくる。
体はろくに動かない。だが、長く戦場に身を置いた体は否応なく反射を示す。
血塗れの愛刀が俺の喉元めがけて迫る、蛇の牙にも似た奇妙な刀剣の刃を切り裂いていた。眼前で切っ先が砂のように崩れ落ちる。
「……まさか、この創造星鉄剣まで容易に裂く、とは」
鼓膜を震わすのは驚愕だけに染まったハルの声。
それも、もう遠い。ふらつき、膝を着く。
肉体的疲労も、流した血液の量も限界を超えている。
杖を突くように刀を床に突き刺し、何とか直立状態を保つ。
ふわり、と俺の肩が浮いた。
「なんで……そんな、ぼろぼろになってまで力使ってるの、よ」
「リオン、お前」
「大丈夫か、なんて聞かないで。危ないのは亮の方なんだから」
力強く俺を担いで支えるのは死にかけていたリオンだった。
何故、と思い顔をあげる。
改めて対峙するハルと千影。
千影は俺達を守るように背を向けて、黒刀・鎖天桜花を構えていた。
視線を移す。ハルの体を包む甲鉄の一部が歪んでいる。
否、俺が〈紅刃〉と戦っていた時に見た隔壁の状態に似ていた。
まるで水を裂くように、切り開かれた箇所が何事もなかったように閉じていく。
切っても裂けぬ水面を割る無意味な所作。ハルが〈灼煌の魔眼〉でも破壊できない、と言っていた意味が分かった気がする。
「なるほど、な」
納得したように呟いて、千影が疾風となった。
立て続けに起きた事柄に動揺したハルの間隙を突いた一撃。
黒刀が滑るように甲鉄を切り裂く。が、すぐに傷跡が揺らいで消え失せた。
最初から何事もなかたかのように、元通りの静かな湖面のごとき荘厳さを見せる。
千影の動きは冴えていた。心なしか、神経を蝕む波長も感じなくなっている。
「どうして、こうも次々と見抜かれていく、のだ」
「貴様が浅いだけだ。垢抜けぬ、夢見た少女が」
「……誰がッ」
ハルが刃を振るう。刀身が伸びに伸びて、空中で蛇腹剣のように捩れ舞い踊る。
千影は受け止めるのではく、黒刀で軌道を逸らすだけ。しなった刃は引き戻されることなく、質量を失ったかのように掻き消えた。
予測していたように千影が刃を縦に構えると、粉砕せんと大槌が叩きつけられる。
受け止めるも、踏ん張らずに反動を利用して転がっていく。
寸前にいた場所を射抜くように無数の刃が空を切っていた。
それらも床に着弾する前に消え失せる。まるで幻術でも見せられてるように。
次々と形状を変えて攻め立てる変幻自在の刃。その正体は――
「不定形の刀身は、さながら核を基点とする砂の剣といったところか。そして、この空間を隔てる壁も、貴様が余裕を持って体を隠す隠れ蓑も同じもので作られている」
「……破られるはずはない。不確定要素は全て排除したはずだ。私にない人外の筋力も、世界の法則を捻じ曲げる奇怪な能力も、あつらえた霊剣なる専用武具もっ!」
「ああ。だからこそ貴様は最も安全なところに隠した。往々にして人間の精神性は
変わらぬな。一番大切なものは、どうしても自分の体から離すことができない」
「だからといって、もう保つまい。〈紅〉は余りに血を流しすぎた」
理解が及ぶ。恐らく、無我夢中で放った斬撃は空を走ってハルをも傷つけた。
正確には禄ノ星神を制御する核となるものを。
神経を犯す不快感がなくなったのは効力が失われたからだ。
だが、もう能力を行使し切れるだけの体力は残っていない。
愛刀の朧月が持つ能力を発揮したまでが限界。そして、立つのもまた。
支えられているにも関わらず、直立することすらままならずに滑る。
慌ててリオンが俺の体を掴もうとするが、血に濡れて止められず。
床に落ちた肉体。それでも、視線は二人の切り合いから離さない。
「千影、お前は身をもって理解しているはずだ。ただの刃では傷一つ付けられぬと」
「そのようだ、なっ!」
「……くっ、無益な」
ハルが振るう大剣状の刃と自らの黒刀を打ち鳴らし、鉄の悲鳴を発させる。
右上段からの振り下ろされる一撃を受け止め、弾く。刀身が崩れて別の形を形成する前に一太刀。また新たに作り直された剣を刀の腹で弾いて距離を取り、上半身のバネだけで突きを放って一撃。
ハルの甲鉄にしつこく攻撃を加えるも、全てが吸い込まれるように阻まれる。
水面というよりも粘性を持つ底なし沼と向き合っているに等しい。
確かに攻撃そのものは通るが、通ったところで刃も切っ先も肉体そのものに到達せず、肉体どころか体を覆い隠す装甲ですら損傷させることができない。
「……ふん」
鼻息荒く、悪態をついて千影がハルの下薙ぎを跳躍で回避してそのまま距離を取る。
負けはないと信じたい。だが、勝ちもまたなさそうだ。
千影が簡単に殺されるとは思えない。
思えないが、〈知核人機〉を作り出したハルは自身も同等以上に改良しているだろう。
――いいや、嘘偽りはない。私の肉体はたった一つ限りなのだから
ハルの言葉を思い出す。あれは、何を意味するのか。
鞭のように鋭く千影が声を張り上げる。
「娘ッ! 貴様も動けるならば手伝え」
「で、でも……私は、パパとママを殺した、王を……」
「ああ、そうだったな。殺したいんだったな」
ハルと千影が剣戟を響かせる。鳴り止まぬ鋼のメロディを奏で続ける。
言葉通りだとすれば、どちらもいつかは体力を消耗し疲労で倒れてしまう。
全身を甲鉄で守るハルと違って千影は生身の肉体を晒している。
ただの消耗戦になれば不利なのは千影の方だ。
踊るように千影の靴が床を叩き、跳ねる。
黒刀を横に寝かせ、平突きを放つ。
ハルは横薙ぎの変形を警戒して受けずに勢いごと流す。
予測済みであったように千影は上半身を捻り、左上段から刃を振り下ろす。
反応しきれず、鎧に吸い込まれていく。
が、チェーンソーと軋れるように火花とやかましい音を鳴らして弾かれた。
「……いつまでも、調子に乗るな」
「ハッ、反応の鈍いご主人様と違って優秀だな。それも売り出すのか?」
「新たな衝撃吸収機構として、車両に組み込む予定はあるが武器転用するつもりはない」
「なるほど、そっちは賢王たる判断というわけだ」
「いつだって、私は正しい判断しか下していないッ!」
投げやり気味にハルが剣を振るう。
散弾のように切っ先から刀身が飛び散って巨大な鉄球へと変化した。
千影は受け止めずに大きく後ろへ跳躍し、俺達の傍まで来た。
轟音。軽々と床を破砕し、また大きなクレーターが生まれた。
巻き上げられる砂埃で視界が歪む。
千影が俺達を見ずに口を開く。
「見た通りだ。奴に物理攻撃はほぼ効かないと見ていい」
「……亮の、その、朧月による斬撃が通ったのは?」
「霊剣特性によって奴の鎧が持つ機能よりも早く、攻撃を通した結果だな」
「……私には、何も」
「ああ。仮に血を媒介にできるとしても、ろくな武器は作れないだろうな」
貴様は殺すのか、生かすのか。
そう言い残して、また千影が戦場へと戻っていく。
鉄球からまた大剣へと形状変化させた刃をハルが振るい、千影が受ける。
攻撃を通せないのは千影も同じはず。それでも矢面に立つのは〈灰絶機関〉の長たる務めからか、単純な悪に対する根絶の意志か。
「リオン、お前は……」
「亮は黙ってて。喋っていい体じゃないでしょ」
「だ、が」
「うるさいッ」
沈黙する。倒れた俺の体を、血に濡れるのも構わず膝に抱くリオン。
潤んだ赤褐色の瞳に見つめられる。揺れる色合いに憎悪や憤怒は見えなかった。
「私は……分かっていなかったよ。亮のことも、晴明さんの言葉も」
「いい、んだ。お前は、殺さなかった。それで」
「ううん。殺せなかったの。やっぱり、私には誰かを殺すことなんて、できなかった」
どう、言葉にすればいいのか。言語化すれば伝わるのか。
戦場の最中にあって、純粋で透明な涙を流すリオンを前にして何も言えなかった。
否、言葉を紡ぎ出す気力すら失いかけていた。
寒い。床に接する部分から急激に冷えて、体温を奪われていく感覚。
やがて触覚がなくなった。肌の暖かさも血の感触も戦場の空気も全てが遠く高くへ。
かすれて消失しそうな視界で、毅然と微笑むリオンを捉える。
「亮は、助かる。私が絶対に助けるから」
ああ、血が命が流れ出していく。とめどなく、どこまでもあてなどなく。
思い返せば〈白銀〉と〈紅刃〉を倒せたことさえ奇跡に近かった。
遣り残したことはある。ハルを倒すこと、〈知核人機〉量産化の阻止。
下部メンバーであり、クラスメイトだった加賀見 鏡華の弔いと刃助や遥姫への事情説明。そして、リオンのこと。小百合のこと。
ゆっくりと、全てを抱え込むように瞼を閉じる。
体が熱い。ハンモックの上でくつろいでいるかのような、奇妙な浮遊感と心地よさ。
天に召される時はこんなものなのか。天使に連れられて運ばれていくのか。
「眠ってる場合じゃないでしょ」
声が聞こえている。まだ聴覚だけが生きている。
暖かい。と、いうよりも暑い。体の内側、あらゆる細胞が熱を持っているかのように。
触覚が戻る。床は冷たく固い。だが血塗れた感触は失われている。
瞼を開く。
「……まだ、生きてる、のか」
「私が治療してあげたの。〈蒼の死神〉の、力で」
「有難う」
五指を開いて、握る。痛みはない。
起き上がって自らの目で確かめる。
後を考えず引き裂いた左手すら元通りに完治していた。
「一体、どんな理屈でこんな――」
「ちょ、ちょっと余り動かないでよねっ」
起き上がろうと力を入れようとするも、体は言うことを聞かずにずれ落ちる。
慌てた様子のリオンが抱きかかえるように俺の体を支えた。
頭の後ろでは薄くも確かな存在感を持つ女の肉。
思わずびくりと体を跳ねさせる。
「だ、か、ら! 大人しくしてなさいっ」
「いいから動かないで。私だってギリギリなんだから」
「お前の怪我は、いいのか」
「当然。でも〝足りなかった〟から応急処置。言ってみれば
ぬいぐるみの表層だけ繕って中はスッカスカの状態。流石の亮も、
もう戦えないよ。アンタ自身が一番よく分かっていると思うけど」
「…………ああ」
口惜しいが、もう能力を行使することはできそうにない。
仮にできたとしてもハルの鎧を打ち破れる威力を発揮できるかどうか。
千影とハルは互いの得物を打ち鳴らし、どちらも引くことなく斬撃を放つ。
形状を自在に変化できるとはいえ、ある程度パターン化してきた。
広い板状の刃に大槌。軽く床を粉砕する巨大鉄球に大剣、日本刀、武器折りの短刀。
だが、どんな武器に変えても千影は瞬時に応じて受け流す。
流した力を応用して突きを放ち、横に薙いでは返す刃で切り下ろす。
そもそもハルには真っ当な剣術の素養はなかったのかもしれない。
阻む者を全て撃滅した今、はっきりと傍観者として分析できる。
違う。今の俺とリオンにできることは、もうそれだけだった。
千影が首元に迫る蛇腹剣の切っ先を黒刀で弾いて、優雅な笑みを唇に乗せる。
「さて、十分時間は稼がせてもらった。貴様の玩具がつけた傷も完治させたよ」
「……稀有な回復能力。よもや、扱えるだけの精神が残っていたとは」
「禄ノ星神はいい機構だよ。か弱き只人である貴様が考え付くにしては、な。だが、結局貴様は誰一人として殺せなかった。殺せない奴が救世者など笑わせてくれる」
「……お前とて、私の鎧を打ち破る術を持たない。そんな身で時間稼ぎを
して何になる! また手駒を道具として使い潰し私を殺すというのかッ」
「連中の無事を確かめたかったのは事実だ。もう一つは、
考えていたのだよ。どうすれば貴様の鎧を打ち破れるのか……な」
ハルが剣を振るう。連結された刃が分離し、それぞれが空を切って突き進む。
苦無のような飛来物は千影を捉えることなく、床に突き立ってまた砂へと戻る。
攻防は続く。どちらかが力尽き、集中を切らして負傷するまで。
だがハルの鎧には隙がない。
縦横の斬撃は当然として、急な薙ぎ払いも瞬発的な刺突も全て自動で防がれてしまう。
相変わらず表情は分からないが、ハルの感情はくぐもった声が放つ怒気で分かる。
「いい加減に諦めろ。お前に私を倒す術はない」
「ああ、そうだろうな。あらゆる攻撃は貴様の鎧によって無効化される」
「分かっていながら、何故無用な攻撃を繰り返す」
「貴様こそ大口を叩いておきながら、誰も殺せない惨状をどうする気だ」
「……まだ、聞かねばならぬ。何故、霊剣が使える。
〈紅〉にあんな力があるとは、聞いていないぞ」
「ハッ……当然だ。教えていないのだからな」
「なっ」
続く言葉を失うハル。その心中は俺と、恐らくリオンの抱えるものと一緒だろう。
千影は今回の一件でハルと袂を分かつ決断を下したはず。
推測の域を出ないが、千影がクラッドチルドレン達のデータを提供し〈知核人機〉を作り上げる一端を担ったのは事実だろう。
これまでアルメリア王国が率いる闇の殲滅機関として数多くの罪を根幹である人命ごと殺してきた。数え切れない命を刈り取り、それらは必要な犠牲だと断定してきた。
「思えば長きに渡って殺し続けてきた。幼少期から精神を鍛えると偽り、その実各国へ提供する暗殺者を仕立て上げてきた父親。殺しても殺しても沸いて出てくる強欲な為政者共、飽きもせず法律の境界を飛び越える屑粕共。そして私達を利用しようとする愚者共」
「共犯者だよ、千影。私とお前は、共に悪なるものを絶滅させるために協定を結んだ」
「その通りだ。私が各国のクラッドチルドレンを集め、鍛え上げて戦力とする。
貴様は各国から情報を収集し、技術を磨いて提供する。時に失態をもみ消す」
「どこに不満がある。何に不満がある。互いに全てを打ち明けていたはずだ。私の
素性も話したはずだ。ロスシアの軍部とお前を繋ぐパイプを作ってやったのも――」
「貴様だな。だが、どうやってその地位を手に入れたんだ。まぁ、大体察しはつくがな」
千影はフリーランスとして各地を転戦し、クラッドチルドレンを集めていた。
資金繰りに難を覚えてロスシアに身を寄せたものの、本質は変わらない。
悪があれば断ち切り、無用の争いを引き起こす存在は消滅させる。
ウルルグゥにおけるロスシアと忠国の抗争においても一歩も怯むことなく壊滅させた。
そして日露事変。旧日本の財を貪る権力層を殲滅した、たった一人による侵略。
率いてたハルが、いかにしてロスシアでその立場を手に入れたのか。
「貴様は元々ロスシアの出ではないな。亮達から伝え聞いた情報が真実だとすれば、
本来の出自はウランジェシカ……それも、ベリアル・ロスフロクトの元にいた」
「また、戯言の続きか」
「いいや。妄想でも推測でもない。確信を持って問い質してる。
貴様の目的は、確かに罪の根幹を断ち切ることだろう。
戦争を生み出す道具を作り、戦いを先導する……
もっとも生かしておいてはならない愚図共だ」
「理解しておきながら、何故否定する。ウランジェシカこそ、諸悪の根源だ」
「それは、ウランジェシカを統治しているのが貴様の旧知の仲であり、
恋敵でもあったブリズ・アムル・ウランジェシカだから、か」
沈黙。ハルは何も答えない。
ベリアルの元でハルとブリズが共に過ごしていた、という情報はあくまでリオンの記憶の中にあるもので、真偽は誰にも分かりはしない。
植えつけられた記憶である可能性はゼロではないし、また全てを信用する根拠もない。
ただ、千影はもっとも分かりやすい指針を基点にしているだけだ。
かつての俺がそうだったように、リオンが突き動かされたように。
セラとクレスが対立し合うのも、その裏側でどちらとも歩み寄りまた終わりを求めていることも。全てが人間が人間であり、ヒトが存在する限り抱え続ける原罪を起源とする。
「貴様は真実を語らない。故に私も真実を隠した。霊剣が持ちうる力、その本質をな」
「…………私は、何も隠していない。ただ一つ、悪を根絶する意志をもって――」
「違うな。貴様は人間が石器を削っていた時代からある感情に従っているだけだ。
恨み、怒り、悲しみ、憎しみ……否定はせんよ。負の力は紛れもなく強き力の指針だ」
「見るな。全てを見透かしているような瞳で、私を見るなッ!」
ハルが剣を振るう。
また連結された刃がしなり、蛇が噛み付くような動きで千影を襲う。
迫る白刃を受け止めるのは黒刀。ただ、受け止めるだけ。
「貴様が喋らぬのならば、私が全てを暴いてやろう。全ての情報は揃った。
後は貴様の言動、行動……そして精神の揺らぎが勝手に物語ってくれる」
「何が、分かる。お前なんぞに、私の何がぁぁァァァァッ」
三度、同じ軌道で蛇腹剣が千影に襲いかかる。
悲しげに微笑んで、千影は小さく言霊を紡いだ。
「悪食を晒せ、鎖天桜花」
息を呑む。いや、物理的に首を絞められているように喉元が詰まった。
それも一瞬だけ。開放され魚が酸素を求めるように激しく呼吸を繰り返す。
「…………何を、した」
極限まで隠した、だが漏れ出した精神の揺らぎ。
ハルが振るった蛇腹剣は半ばから消失していた。
砂に返り散ったのではなく、文字通りこの世界から失われている。
残ったハルの創造星鉄剣が、失われた部分を探し求めるように振動していた。
切り裂いたであろう千影の鎖天桜花も打ち震えるかのごとく刀身を震動させている。
「さて、解答編だ。霊剣が持つ力の本質を教えてやろう」
「聞いていない。私は、何をしたのかと聞いているんだ!」
「霊剣は、人間が使う道具じゃない。霊剣が、人間が持ちうる力を吸い取って
持ちうる能力を行使するのだよ。それが禄ノ星神の影響下でも能力を使えた
理由であり、私のような既に〈死神〉の力を失った者が最強であれる要因だ」
ハルと会話することなく、千影は淡々と霊剣という存在が抱える真実を暴露した。




