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序ノ四  オープンヨアマイン!ヘッヘ!

倉永は急に近づいてきた目つきの悪い女にひるんだ様だった。退屈そうにぶらぶらさせていた足がぴたりと止まり、離れた席に座る秀にもわかるほど背中を緊張させている。


「久しぶりだね、倉永さん。二学期からは学校来れるの?」


倫にしては優しい笑み。しかし、第三者から見ればずいぶんと獰猛な色をした笑顔に見えるだろう。


「えっ、あぁ、あっあの、うん」


倉永は下を向いたまま答える。肩をすくめた姿は叱られた子どもの様に見えるが、この反応は倫を満足させたようだった。クラスのおせっかい焼き女子が横目で二人の様子をうかがっている。


その後、二人は二言三言言葉を交わしていた。倉永がうつむいたまま何か言うたびに倫の表情はどんどん上機嫌になっていく。


倫はまだ倉永と話をしていたかったが、かわいそうなくらい縮こまった倉永の肩を見て早々に会話を切り上げることにした。こんどこそ文句なしの満面の笑みを浮かべる。


「あたし、伊藤倫ね。倉永さんのこと気に入っちゃったから、困ったことあったらなんでも相談してよ。じゃあね」


「うん」


結局一度も顔をあげないまま、倉永は答えた。秀の席からは角度が悪くよく見えないが、さらさらの髪で隠れた顔はずいぶん赤くなっているようだ。おせっかい焼きの女子も安心した様子で、なぜか倫に礼を言った。倫もいいってことよ、と笑って返す。




「いやー、あの子ホントかわいいわ。見た?もじもじしちゃってさ。あたしあの子と仲良くするからな!」


「傍から見ればいじめてるようにも見えたけどな。かわいかったけど」


戻ってきた倫は実に満足げだった。窓から差し込む夏の日差しに倫の八重歯が反射してまぶしい。


「なんかさ、夏休みの間変わったことあった?まぁあたしら割と頻繁に会ってたけど」


「ん~、あぁそういえば今朝でいいならさ、そこの郵便局のとこにコンビニあるじゃん、あそこで外人が―――」


40日間ぶりのチャイムが鳴る。クーラーの壊れた職員室から這い出してきた担任の清田がドロリとした足取りで教室に入ってきて、いよいよカビ臭く薄暗い秀の二学期が始まる。




一応今回で序章はおしまいになるつもりです。

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