表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エタ  作者: ling-mei
19/21

第19話

 森の上を一気に飛び越えた。エタは、枯れ木が倒れていく瞬間を何度も目の当たりにした。生き物の朽ち行く臭いも、度々鼻をついた。鷹は翼を鳴らしながら、空気の隙間をぬって飛んでいくようだった。

「見えてきた」

 鷹がつぶやいた。エタは、鷹の頭の前方にあるものに目を凝らした。立派な石造りの城が見えた。鷹は、ぐんぐんとその城に近づいていく。

「女王様が危ない」

 急に、鷹は飛ぶ角度を変えた。急降下を始めた。エタは、息を吸うのが困難なほどだった。鷹はおかまいなしに城へと降りていく。城が大きくなってくる。

「ぶつかるわ!」

 エタが叫んだ。鷹は城の門を目指した。門が迫る。エタは、ぶつかると思って目をぎゅっとつむった。鷹は、ひゅんと音をたて、門をくぐった。

「大丈夫。 女王のもとへ連れて行ってやる」

 門を通り越すと、大きな扉があった。扉はがっちりと閉まっている。鷹はそのままのスピードで突っ込んでいった。扉が、ガタンと音をたてて開いた。鷹のくちばしが折れているのが、エタに見えた。それでも鷹はひるまず進んだ。

「まるで勇者ね」

 エタがぼそりと言うと、鷹は高らかに笑って言った。

「勇者? この汚らしい鷹を、勇者と呼んでくれるのか?」

「ええ、そうよ」

「それはありがとうよ、譲ちゃん」

 鷹は、ますます勢いをあげた。赤い絨毯の道が広がった。もうすぐだと、エタは思った。確か、この先には、大きな扉があって、ティナが手を差し込むと開いたはずだった。ところが、その扉は閉まっていなかった。ばかんと開き、向こう側までを見渡すことが出来た。

「どうして扉が開いているのかしら」

「女王の力が弱まっているから、この城も壊れだしているんだ」

 鷹は、絨毯の表面を、這うようにして飛んだ。とうとう、大きな女王のベッドが現れた。カーテンはしっかりしまっている。

 エタは、鷹に下ろすように頼み、背中から飛び降りた。急いでベッドに駆け寄ると、ベッドの横に、白い服の少女がうつぶせになっていた。ティナだった。

「ティナ? 私、薬を持ってきたわ。 ねぇ、ティナ」

 ティナは返事をしなかった。エタは何度も名前を呼んだ。

「いやよ」

 エタは叫ぶように泣き崩れた。ベッドの周りのカーテンに触れてみた。今日は、この前のように黄金のライオンが飛び掛ってこない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ