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プリズン編第九章 偽りの自由

■ 呼び出し ― 決定


「B-317、管理区画へ」


その呼び出しで、

俺たちはすぐに察した。


――来た。


管理区画の部屋には、

見覚えのある看守と、

一段階“上”の立場の人間が座っていた。


「短く言う」


管理官が書類を閉じる。


「お前たちは、

セクターCからセクターBへ昇格だ」


一瞬、

空気が止まる。


「成績良好。規律遵守。

現時点で問題なし」


フォックスが口を開きかけるのを、

俺は視線で止めた。


「ただし」


管理官の声が低くなる。


「期待を裏切れば、

即時降格。

理解しているな?」


「はい」


俺は、感情を一切乗せずに答えた。


■ セクターB ― 想像以上の部屋


扉が開いた瞬間、

俺は一瞬、言葉を失った。


広い。


四人房なのに、

明らかに余裕がある。


通常のベッド


机と椅子


小さな棚


壁掛けのテレビ


窓(格子付きだが、光が入る)


「……ここ、刑務所だよな?」


フォックスが思わず呟く。


「下手なアパートよりマシだぞ」


ファルコンは部屋を一周し、

信じられないという顔をしている。


「狭さがない……

音も、響きにくい」


シャドウは窓を確認しながら言った。


「団地だな。

小さいが、ちゃんと“部屋”だ」


俺は、

ドアの厚み、

鍵の構造、

天井を確認する。


――快適すぎる。


■ 増えた自由時間


看守が淡々と告げる。


「セクターBでは、

自由時間は一日二時間だ」


二時間。


今までの倍以上。


「行動範囲も、多少広がる」


「ただし」


釘を刺すように言う。


「Bは“信頼”で成り立っている。

壊せば、すべて失う」


扉が閉まる。


■ 夜 ― 違和感


静かだ。


あまりにも。


ファルコンが小声で言う。


「……楽だな」


「楽すぎる」


俺は即答した。


フォックスはベッドに腰掛け、

天井を見上げる。


「ここで一生暮らせって言われたら、

耐えられるかもしれねぇ」


シャドウが、

静かに首を振る。


「それが罠だ」


「分かってる」


俺は言った。


「ここは、

逃げる意志を鈍らせる場所だ」


テレビ。

ベッド。

二時間の自由。


すべてが、

“もういいだろ”と囁いてくる。


■ 共有 ― 次の段階


俺たちは机を囲んだ。


「セクターBでやることは三つだ」


指を立てる。


「一つ。

疑われないこと」


「二つ。

管理者の目に映らない“抜け道”を探す」


「三つ」


俺は、少しだけ間を置いた。


「ここをゴールにしない」


ファルコンが深く頷く。


「油断したら、

ここで終わるな」


フォックスが笑う。


「二時間も自由あるなら、

準備はいくらでもできる」


シャドウが静かに言った。


「Bは、

Cより“人の出入り”が多い」


「情報も増える」


俺は窓の向こうを見る。


外は、

まだ遠い。


だが――


「檻は、

確実に広がっている」


セクターB。


快適な檻。

甘い檻。


ここで眠ったら、

二度と目は覚めない。


俺たちは、

まだ歩き続ける。


本当の自由へ。

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