プリズン編第四章 増える選択
「選択肢が増える檻」
■ 呼び出し
「B-317、前へ」
その声は、朝礼の終わりに響いた。
四人同時。
それだけで、空気が変わる。
看守に連れられ、管理区画へ向かう廊下を歩く。
扉は厚く、床はやけに綺麗だった。
――セクターの境目だ。
無言のまま通された部屋で、制服の違う男が書類をめくる。
「最近の態度、作業成績、規律遵守率……問題なし」
男は顔を上げた。
「本日付で、貴様らをセクターDからセクターCへ昇格させる」
フォックスが思わず息を呑む。
「……マジか」
「静かにしろ」
だが、俺の胸も確かに高鳴っていた。
■ セクターC ― 新しい檻
移動した収容区画は、明らかに違っていた。
壁は少し明るく、監視の間隔も広い。
息苦しさが、ほんのわずかに薄れている。
「だが勘違いするな」
看守が言う。
「ここはご褒美の場所じゃない。
期待を裏切れば、即Dに戻す」
俺は頷いた。
「理解している」
■ 選べる刑務作業
次に提示されたのは、作業選択だった。
「セクターCの囚人には、
ある程度の自由が与えられる」
掲示板に、四つの項目が並ぶ。
清掃
看守一人が常時監視。
だが、ほぼ全区画を自由に回れる。
――刑務所の構造を掴む最大のチャンス。
土木作業
木製の日用品の製作。
道具に触れる機会が多い。
――盗めば脱獄に使える。
ショップ経営
新聞、軽食の販売。
囚人、看守と話す機会が多い。
――情報の宝庫。
衣類作業
重労働だが、その分給料が高い。
「給料も支払われる」
看守が淡々と言う。
「多くはないが、
軽食や新聞くらいは買える」
俺たちは視線を交わした。
■ 役割分担
「俺は土木だ」
即座に俺が言った。
「道具が必要になる」
ファルコンが続く。
「俺は清掃。
構造を全部覚える」
フォックスはニヤリと笑った。
「ショップだな。
喋るのは得意だ」
シャドウは少し考え、頷く。
「衣類。
金は多いほうがいい」
完璧な分担だった。
看守は興味なさそうに書類へ記録した。
■ 収容房 ― 四人部屋
そして、もう一つの“昇格”。
「お前たちは、同一収容房だ」
扉が開く。
四つのベッド。
狭いが、話せる距離だ。
「……やっとだな」
ファルコンが小さく言う。
夜。
消灯後、俺たちは声を抑えて向き合った。
「今日から、情報はここで共有する」
俺が言う。
「細かいことでもいい。
通路、鍵、看守の癖、全部だ」
フォックスが拳を鳴らす。
「ショップで聞き出してやる」
「俺は清掃で地図を作る」
ファルコンは床を指でなぞった。
シャドウは静かに言う。
「衣類管理室の通気口も、忘れるな」
「分かってる」
俺は天井を見上げた。
セクターC。
自由が増えた分、罠も増える。
だが――
「確実に、檻は緩んでいる」
四人で同じ部屋。
同じ目的。
同じ出口。
脱獄計画は、次の段階へ進んだ。




