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プリズン編第二章 信用という名の鎖

■ 自由時間 ― 密談


中庭の隅。

監視塔の影が一番長く伸びる場所に、俺たちは自然を装って集まった。


「で、いつやるんだ?」


フォックスが低い声で言う。

今すぐにでも壁を殴り破りそうな勢いだ。


「焦るな」


俺は周囲を一瞥してから言った。


「脱獄は力だけじゃ無理だ。失敗すれば終わりだ」


ファルコンが顎に手を当て、少し震えながらも口を開く。


「……なあ、俺、思ったんだ」


「何だ?」


「まずは看守たちに信用させたほうがいい。警備を薄くさせるんだ」


シャドウが眉を上げる。


「信用?」


「ああ。問題を起こさない“模範囚”になれば、巡回は減るし、目も鈍る」


フォックスが不満そうに鼻を鳴らした。


「従順になるってことか? 俺は嫌だね」


「一時的だ」


俺が即座に言う。


「鎖を緩めさせるための演技だ。噛み切るのは、その後だ」


ファルコンは少し安心したように頷いた。


「面倒な刑務作業、誰もやりたがらないやつを進んでやる。

それで“使える囚人”だと思わせる」


シャドウが小さく笑う。


「なるほど。信用は盗むものじゃなく、植え付けるものか」


「決まりだな」


俺たちは、静かに拳を合わせた。


■ 刑務作業 ― 誰も選ばない仕事


翌日。


作業割り当ての掲示板の前で、看守が怪訝そうな顔をした。


「……衣類管理室?」


そこは、ほぼ誰も希望しない場所だ。

古いミシン、埃、汗と洗剤の混じった匂い。

単調で地味、成果も目立たない。


「俺たちがやります」


俺が言うと、看守は一瞬だけ俺を見つめ、肩をすくめた。


「好きにしろ。逃げ場はないがな」


その言葉に、俺は内心で笑った。


■ 衣類刑務作業 ― 静かな場所


衣類管理室は、刑務所の中でも異様に静かだった。


布の擦れる音。

ミシンの単調なリズム。


フォックスは不満そうに針を持っている。


「なあハウンド、これ拷問だろ」


「声を抑えろ」


ファルコンは縫製台の配置を確認しながら囁く。


「ここ、監視カメラ少ないな……」


「倉庫扱いだからな」


シャドウはすでに棚の裏や床を確認している。


「古い施設だ。何かあるぞ」


その時だった。


俺は、布の山を運んでいる途中で、

違和感に気づいた。


壁の下部。

本来あるはずのない隙間。


近づいてみる。


――通気口。


しかも、


「……ボロボロだ」


金属は錆び、固定ボルトは半分外れかけている。

内部は暗いが、奥に空間が続いているのが分かる。


人一人。

いや、体を縮めれば――十分入れる。


俺の心臓が、嫌なほど強く鳴った。


「おい」


小声で三人を呼ぶ。


ファルコンが覗き込み、息を呑んだ。


「……本気か? これ」


シャドウが指で金属を押す。


「脆い。音を立てなければ外せる」


フォックスは歯を見せて笑った。


「最高じゃねぇか。ここから行ける」


俺は通気口の奥を見つめながら、静かに言った。


「まだだ」


三人が俺を見る。


「今は信用を積む段階だ。

だが――」


俺は拳を握りしめた。


「脱獄の“出口”は、見つけた」


この刑務所は無限の檻じゃない。

ただ、出口を隠しているだけだ。


そして俺たちは、

その隠された一つ目を、確かに見つけた。


――計画は、動き出した。

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