プリズン編第十七章 裁きの時
■ SHU制圧 ― 地獄の終わり
重い鉄扉が、
爆音と共に吹き飛んだ。
「制圧!」
特殊部隊が、
雪崩れ込む。
俺は、
その後ろから走った。
――SHU。
あの空気。
あの匂い。
だが、
もう違う。
怒号。
命令。
統制された動き。
暴力ではなく、制圧。
「対象確保!」
独房の扉が次々に開けられる。
衰弱した囚人たちが、
担架に乗せられていく。
その中で――
「……来るの、遅い」
かすれた声。
「シャドウ!」
俺は、
駆け寄った。
痩せていた。
傷もある。
だが――
目は、まだ死んでいなかった。
「……よく、耐えたな」
「当たり前だろ」
シャドウは、
薄く笑った。
「約束、
守っただけだ」
■ 管理者たち ― 引きずり出される“神”
SHUの奥。
今まで、
囚人が決して入れなかった区画。
そこに、
管理者たちはいた。
机の下に隠れていた者。
責任を部下に押し付ける者。
黙秘を叫ぶ者。
――全員、
引きずり出された。
手錠。
床に押さえつけられる。
あの男――
管理者室で俺と話した男も、
例外じゃない。
「これは……誤解だ」
震える声。
「必要な管理だった」
エリオットが、
一歩前に出た。
その瞬間、
空気が変わる。
「誤解?」
低い声。
「映像、音声、命令記録」
「全部、揃っている」
管理者の顔から、
血の気が引いた。
■ 公開 ― 消せなかった証拠
大型モニター。
そこに映されたのは――
SHU内部の映像。
暴力。
虐待。
指示書。
そして、
管理者の署名。
「……!」
管理者の一人が、
叫び声を上げた。
「違う!
私は命令しただけだ!」
エリオットは、
一切表情を変えない。
「命令した時点で、
実行犯だ」
■ 裁き ― 逃げ場はない
その場で、
正式な拘束が宣告される。
特別監察局
人権侵害
職権乱用
組織的隠蔽
管理者たちは、
即時逮捕。
刑務所の外へ――
囚人として連れ出されていく。
皮肉だ。
自分たちが作った檻に、
自分たちが入る。
管理者は、
最後に俺を見た。
「……君たちは、
勝ったと思っているのか?」
俺は、
はっきり答えた。
「いいや」
「取り戻しただけだ」
■ 外 ― 夜明け
夜が、
明け始めていた。
救急車。
報道。
騒然とする現場。
シャドウは、
毛布を肩にかけて歩いている。
ファルコンが、
声をかけた。
「……生きててよかった」
フォックスは、
何も言わず、
シャドウの肩を叩いた。
俺は、
エリオットの隣に立った。
「……終わったな」
エリオットは、
首を振る。
「いや」
「始まった」
「この刑務所だけじゃない」
「同じ構造は、
他にもある」
俺は、
空を見上げた。
朝日が、
刑務所の壁を照らす。
あの檻は、
もう――
機能していない。
⋯だが
世界には他にも同じような檻はある
そして
いつか檻は壊れる
必ず...
プリズン編
――完――




