プリズン編第十六章 鉄檻の崩壊
■ 外 ― 作戦開始
夜明け前。
空が、
不自然なほど静かだった。
――ドン。
低く、腹に響く音。
次の瞬間、
刑務所の外壁に光が走る。
「始まったな」
俺の隣で、
フォックスが言った。
俺たちは、
エリオットの指示で
外部待機。
“釈放された元囚人”として、
公式には関与していない。
だが――
無線は、
俺の耳に届いていた。
「第一班、侵入成功」
「看守拠点、制圧開始」
エリオットの声。
冷静で、
迷いがない。
■ 看守拠点 ― 崩壊
数分も経たないうちに、
刑務所内部が騒然となる。
警報。
だが、
統制が取れていない。
「看守拠点、完全制圧」
「指揮系統、遮断完了」
俺は、
思わず息を吐いた。
「……速すぎる」
ファルコンが呟く。
「内部構造、
全部把握してたんだな」
――俺たちが集めた情報だ。
監視拠点。
通気口。
セクター間の導線。
全てが、
今この瞬間に繋がっている。
■ セクター制圧 ― ドミノ倒し
無線は、
止まらない。
「セクターD、制圧」
「抵抗なし、囚人保護完了」
「セクターC、制圧完了」
「管理者権限、無効化」
「セクターB、制圧完了」
「全囚人、安全確保」
俺の脳裏に、
あの廊下が浮かぶ。
ボロボロの通気口。
衣類作業場。
監視モニター。
全部――
この刑務所の“弱点”だった。
フォックスが、
歯を見せて笑う。
「ほらな」
「檻ってのは、
中から壊れる」
■ セクターA ― 静かな終わり
最後に、
セクターA。
「セクターA、制圧完了」
「管理者は――」
一瞬、
無線が途切れる。
俺の心拍が、
一段上がった。
「……管理者、
逃走を試みるも確保」
ファルコンが、
小さく息を吐いた。
「終わった……?」
俺は、
首を振る。
「まだだ」
■ 残された場所 ― SHU
無線が、
再び鳴る。
「残存区画――
SHU」
その一言で、
全身が熱くなった。
床に寝かされていた囚人。
消えかけた声。
血の跡。
そして――
シャドウ。
「SHUは、
構造上、強固」
「内部抵抗あり」
エリオットの声が、
一段低くなる。
「最終段階に移行する」
俺は、
拳を握った。
「行くぞ」
フォックスが頷く。
「迎えに行くんだろ」
ファルコンも、
静かに言った。
「……あいつを」
■ ハウンドの確信
全セクター制圧。
残るは、
地獄の中心。
だが、
もう分かっている。
SHUは、
“最強の檻”じゃない。
一番、
外に繋がっていない場所だ。
そして――
外と繋がらない檻は、
必ず壊れる。
「待ってろ、シャドウ」
俺は、
闇の向こうを睨んだ。
「今度は、
全員で帰る」




