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プリズン編第十二章 最上階への片道切符

■ 夜 ― 偶然という名の必然


SHUから戻った翌夜。

俺たちは、動かなければならなかった。


「次は監視拠点だ」


そう言った時、

誰も反対しなかった。


廊下の清掃ルート。

セクターBの外周。


ファルコンが、

ふと足を止めた。


「……ここ」


天井の端。

照明の影に隠れるように――


通気口。


だが、今まで見たものとは違う。


新しい。

だが、開閉痕がある。


「使われてるな」


シャドウが低く言う。


「監視用だ。

人の出入りは想定してない」


俺は、

金属の縁に指をかけた。


「だからこそ、

誰も気にしない」


■ 潜入 ― 監視拠点


中は狭く、

埃と熱がこもっている。


通気口を進むと、

下に光が見えた。


覗き込む。


――部屋。


壁一面のモニター。

点滅するランプ。

複数の椅子。


「……ここが」


ファルコンが息を呑む。


「監視拠点だ」


看守はいない。

夜間は自動監視。


モニターには、


セクターD


セクターC


セクターB


そして――SHU


俺は、

SHUの映像を見つめた。


そこには、

昼間よりもひどい光景が映っていた。


「……記録は?」


シャドウが端末を確認する。


「保存されてる。

消されてない」


「つまり」


フォックスが言う。


「ここが、

“消す前”の場所だ」


俺は、

位置関係を頭に叩き込んだ。


通気口。

階層。

隣接区画。


「これでいい」


「場所さえ分かれば、

外は動ける」


エリオットに、

位置を伝えるだけ。


それで――

一気に形勢は変わる。


■ 退却 ― 目前のゴール


部屋に戻り、

俺は息を吐いた。


「明日の面会で、

全部伝える」


ファルコンが頷く。


「SHU、監視拠点、

管理者の関与」


「一気に表に出るな」


フォックスが笑った。


「やっと、

外と繋がる」


その時だった。


――ガチャ。


扉が開く音。


■ 突然の通達


「B-317」


看守の声。


だが、

いつもと違う。


形式ばっている。


「移動命令だ」


「……どこへ?」


俺が聞くと、

看守は一瞬だけ視線を逸らした。


「セクターA」


空気が、

凍った。


ファルコンが小さく息を吸う。


フォックスが眉をひそめる。


シャドウは、

何も言わなかった。


■ セクターA ― 完成された檻


移動は、

異様なほど丁寧だった。


案内。

説明。

“歓迎”。


部屋は――


広い。

清潔。

完全に、生活空間。


小さな団地。

キッチン設備。

鍵付きの個室。


「……ここまで来たか」


フォックスが呟く。


看守は言った。


「模範囚として、

評価された結果だ」


「ここでは、

ほぼ自由だ」


「無期懲役でも、

釈放の可能性がある」


扉が閉まる。


■ 違和感 ― 最も危険な場所


誰も、

すぐに喜ばなかった。


「……罠だな」


ファルコンが言う。


「間違いない」


俺は、

部屋を見回した。


「ここは、逃げる必要がない場所に見せる檻だ」


シャドウが低く言う。


「しかも、

隔離しやすい」


フォックスが歯を鳴らす。


「面会は?」


「制限される可能性がある」


俺は、

拳を握った。


――タイミングが良すぎる。


監視拠点を見つけた直後。

エリオットに伝える前。


「……気づかれたな」


誰かが、

俺たちの“位置”に近づいている。


■ 決意


俺は、

三人を見た。


「ここが、

最終関門だ」


「セクターAは、

ゴールじゃない」


「口を塞ぐための、天国だ」


エリオットに、

情報を渡す前に――


管理者は、

俺たちを“静かに”した。


だが、

まだ終わっていない。


「必ず、

外に繋ぐ」


俺は、

静かに言った。


最上階に上げられた囚人は、

一番深く監視される。


だが同時に――

一番、落とした時の音が大きい。

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