プリズン編第十一章 地獄の証明
■ 夜 ― エリオットからの依頼
消灯後。
セクターBの部屋は静かだった。
その静けさを、
俺の耳元に残る言葉が破った。
――エリオット。
面会の最後、
ごく自然な動作で渡された紙片。
数字と、短い文章。
依頼
SHUの内部調査
可能であれば
コントロールルーム、もしくは監視拠点の特定
俺は、紙を指で丸めた。
「来たな」
ファルコンが低く言う。
「……本命だ」
「まずはSHUだ」
俺はキーカードを机に置いた。
「証拠が必要だ。
噂じゃ、外は動かない」
フォックスが拳を鳴らす。
「行くなら、今しかねぇ」
シャドウはすでに立っていた。
「痕跡は残さない。
入った事実も、消す」
■ 侵入 ― SHU区画
深夜の移動。
セクターBの“信頼”が、
看守の目を鈍らせている。
問題なく、
SHU区画の手前まで辿り着いた。
「……空気が違う」
ファルコンが呟く。
重い扉。
警告表示。
俺は、
キーカードを差し込んだ。
――ピッ。
短い電子音。
「……開いた」
鍵は、まだ生きていた。
■ SHU内部 ― 本当の姿
中に入った瞬間、
匂いが襲ってきた。
血。
汗。
消毒薬。
そして――
「……声」
低く、かすれた呻き声。
独房。
狭い。
明かりは常時点灯。
床に、
人がいた。
服は汚れ、
顔には痣。
手首には拘束具。
「……水……」
俺の胸が、
嫌な音を立てる。
「……これが」
ファルコンの声が震える。
「SHU……」
別の房。
壁に、
血の跡。
「殴ってるな」
シャドウが歯を食いしばる。
「“反省”の域じゃない」
フォックスが、
壁を殴りそうになるのを、
俺は腕で止めた。
「耐えろ」
「証拠を掴む」
■ 目撃 ― 管理者の命令
通路の奥。
半開きの部屋。
中で、
二人の看守が話していた。
「……もう限界だろ」
「でも、上が“続けろ”って」
「管理者が?」
「そうだ。
“声を奪え”ってな」
俺の背中に、
怒りが走る。
「……人間じゃねぇ」
■ 退却 ― 痕跡の操作
警報は鳴らなかった。
だが、
長居はできない。
戻る途中、
俺はわざと
独房の一つの鍵を半開きにした。
「何してる」
「後で、
“誰かが騒いだ”ことにする」
フォックスが理解した。
「侵入は、
別の囚人のせいにするわけか」
「そうだ」
翌朝、
きっとこうなる。
SHUで問題行動発生
一部の囚人が暴れた可能性
俺たちの名前は、
そこに出ない。
■ 共有 ― 目的の更新
部屋に戻る。
誰も、
すぐには口を開かなかった。
「……確定だな」
シャドウが言う。
「噂じゃない。
事実だ」
「これで、
エリオットは動ける」
ファルコンが言った。
「次は?」
俺は、
ゆっくりと言った。
「コントロールルーム」
「監視拠点だ」
フォックスが歯を見せる。
「そこ押さえりゃ、
全部見える」
「SHUを指示してる“目”を潰す」
俺は、
天井を見上げた。
SHUは、
管理者の暴力の“結果”だ。
なら、
次にやるべきことは一つ。
「誰が、どこで、見ているか」
それを突き止める。
脱獄のためじゃない。
生き残るためでもない。
これは、証明だ。
この刑務所が、
腐っているという証明。




