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プリズン編第十章 鍵と血縁

■ 自由時間 ― 境目へ


二時間の自由時間。

セクターBに上がったことで、行動の“幅”が一気に広がった。


「今だな」


俺の一言で、四人は自然に動いた。


目的は一つ。

セクターBとセクターCの境目にある、あのボロボロのトイレ。


人の出入りが少ない時間帯。

清掃ルートと重なる場所。


ファルコンが小声で言う。


「監視、来ない。

少なくとも十分は空く」


「十分あれば足りる」


俺はトイレの扉を静かに閉めた。


■ ボロボロトイレ ― 隠し通路


中は、噂通りだった。


使われていない。

水は止まり、床にはひび割れ。

便器の裏――


「……ここだ」


ファルコンが示した場所を押すと、

鈍い音が返ってきた。


空洞。


シャドウが周囲を確認し、

手際よくパネルを外す。


――開いた。


人一人が、横向きで入れるほどの隙間。


「行けるな」


フォックスが息を殺して言う。


俺が先に入った。


■ 隠し通路 ― 忘れられた場所


中は暗い。

埃の匂い。

古い配線。


通路の先に、

崩れかけた部屋があった。


「……看守室だ」


机、椅子、壊れたモニター。

使われなくなった、旧警備拠点。


「放棄された場所だな」


シャドウが棚を探る。


その時――


「ハウンド」


ファルコンが低く言った。


机の引き出し。

そこに――


キーカード。


少し傷んでいるが、

識別番号は読める。


「……生きてる」


シャドウがカードを軽く拭く。


「有効だ。

少なくとも、内部区画用」


俺は、カードを手に取った。


冷たい。

だが、確かな重み。


「鍵は、手に入った」


■ 退却


長居はできない。


俺たちは痕跡を最低限に抑え、

元のトイレへ戻った。


誰にも見られていない。

完璧だ。


――その時点では。


■ 呼び出し ― 面会


部屋に戻って間もなく、

看守が来た。


「B-317。

面会希望者がいる」


一瞬、全員が固まる。


「誰だ?」


「名前は――

エリオット」


その名を聞いた瞬間、

俺の呼吸が止まった。


■ 面会室 ― 再会


ガラス越しの部屋。


制服姿の男が立っている。


……間違いない。


「兄貴」


その声で、確信した。


「……エリオット」


俺の弟。

警察官。


少し大人びた顔。

だが、目は変わっていない。


「無事でよかった」


「そっちこそ、

こんなところに来て大丈夫なのか」


エリオットは、

一瞬だけ周囲を確認し、低い声で言った。


「俺は……

兄貴たちが無実だって知ってる」


ファルコンたちが、息を呑む。


「今、証拠を集めてる。

でも――」


エリオットは歯を食いしばった。


「内部から邪魔が入ってる」


――管理者。


俺は、全てを理解した。


■ 協力 ― 内と外


「俺たちも、

ここがまともじゃないことは分かってる」


俺は静かに言った。


「SHU。

虐待。

管理者の介入」


エリオットの目が、鋭くなる。


「……やっぱりか」


「協力できるか?」


俺が聞くと、

弟は迷わず頷いた。


「ああ」


「俺は外から。

兄貴たちは中から」


「真実を繋ぐ」


短い沈黙。


そして、俺たちは同時に言った。


「生きて、ここを出る」


エリオットは、

拳を胸に当てた。


「必ず迎えに来る」


「いや」


俺は首を振る。


「迎えに来させる状況を、作る」


面会終了の合図。


立ち上がる前、

エリオットが小さく言った。


「……気をつけろ。

この刑務所、

“優等生”が一番消される」


「知ってる」


俺は答えた。


■ 夜 ― 新たな段階


部屋に戻り、

俺はキーカードを机に置いた。


「鍵、入手」


「外部協力者、確保」


フォックスが笑った。


「一気に進んだな」


シャドウが静かに言う。


「……後戻りはできない」


「最初から、する気はない」


俺はキーカードを握りしめた。


内と外。

血縁と仲間。


脱獄は、

もう“逃げ”じゃない。


これは、反撃だ。

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