プリズン編第一章 終わらない檻の朝
登場人物
ハウンド⋯知能・体力ともに優れている。
フォックス⋯脳筋。パワーが全て的な考え。
ファルコン⋯頭脳系。IQだけは高い。
シャドウ⋯万引きなどの軽犯罪が得意。
――無期懲役。
それが、俺たちに言い渡された刑だった。
罪はない。
だが、この刑務所に真実など存在しない。
■ 起床
鉄格子越しに鳴り響くサイレンが、耳を引き裂くように響いた。
「起床。起床。全受刑者、五分以内に整列せよ」
俺はベッドから起き上がり、首を鳴らす。体の調子は悪くない。
この檻の中でも、鍛えることだけは欠かしていないからな。
隣のベッドから、ファルコンが小さく息を吐いた。
「……今日も生き延びたな、俺たち」
「まだ朝だぞ。気を抜くな」
向かいではフォックスが欠伸をしながら拳を握りしめている。
「朝から走りてぇな。壁ぶん殴りたい気分だ」
「やめろ、余計な注目を浴びる」
シャドウはすでに起きていて、鉄格子の鍵穴をじっと観察していた。
「……いつか開く。そう思わないとやってられないな」
全員、同じことを考えている。
――ここから出る。
■ 朝礼
中庭に整列させられ、番号で呼ばれる。
「B-317、前へ」
それが俺たちの番号だ。
四人一組。偶然か、それとも意図的か。
看守の目は冷たい。人を見ていない。
数を数えているだけだ。
「規律を守れ。違反者は独房行きだ」
独房。
あそこに入ったやつが、正気のまま戻ってきたのを見たことがない。
■ 朝食
金属トレイに乗った灰色のパンと、味のしないスープ。
フォックスが小声で言う。
「これ、栄養入ってんのか?」
「入ってたら奇跡だな」
ファルコンが周囲を警戒しながら囁く。
「看守の交代時間、朝食後が一番雑だ。覚えておけ」
「さすが頭脳派」
俺はそう言いながら、スプーンの角度、配膳の動線を頭に叩き込む。
脱獄は、観察から始まる。
■ 刑務作業
俺たちは金属加工場に回された。
重い鉄材、うるさい機械音、監視塔からの視線。
だが、ここは情報の宝庫でもある。
シャドウがわざと工具を落とし、拾うふりをして床を見る。
「……配線、露出してるな」
フォックスは鉄材を持ち上げながら笑う。
「俺ならこれ、投げれば壁壊せるぜ?」
「静かにしろ」
ファルコンは作業をしながら、看守の巡回ルートを数えていた。
全員、別々のことをしているようで、
同じ未来を見ている。
■ 昼食
朝よりはマシな食事。
それでも味はない。
「なぁハウンド」
ファルコンが俺を見る。
「もし脱獄できたら……何する?」
「まずは、真実を暴く」
即答だった。
フォックスは笑い、シャドウは黙って頷いた。
■ 自由時間
中庭。
空は高く、壁は高すぎる。
俺は懸垂バーで体を鍛えながら、壁の高さと死角を測る。
ファルコンはベンチでメモ代わりに地面に線を引き、
フォックスはケンカを売られない程度に威圧し、
シャドウは他の囚人から情報を盗む。
自由時間は、準備時間だ。
■ 夕食
一日の終わりが近づく。
「今日も何も起きなかったな」
「起きない方がいい。だが……」
俺は言葉を切る。
「その“何も起きない”が、一番危険だ」
三人とも黙った。
■ 収容房待機
鉄格子が閉まり、音が反響する。
この音を、俺は絶対に忘れない。
そして――いつか、破る。
シャドウが小声で言った。
「明日、東棟の警備が変わる」
ファルコンが目を見開く。
「本当か?」
「盗んだ」
さすがだ。
■ シャワー
決められた時間、決められた水量。
俺は床の排水口を見る。
小さな隙間も、希望に見える。
■ 就寝
消灯。
闇の中で、俺は思う。
――この刑務所は、無限に続く檻だ。
だが、俺たちは必ず逃げる。
無実の罪で縛られたまま、終わるつもりはない。




