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底辺からの異世界転生、その幼女無自覚に世界の理を覆す  作者: かのん


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4話

 久しぶりの感覚に、私は呼吸をゆっくりと整えていく。


 ゆらりと、現れたのは、先ほど神父様の後ろにいた悪霊達だ。


 私の様子を見て、すぐにでも憑りつき殺せる相手と見られたのであろう。


 リヤンはにっと笑みを浮かべながら言った。


「お前、死ぬぞ。大人しく健やかに俺に喰われたほうがいいんじゃないか」

「ふへへ。あたちの実力みせちゅけてあげるわ!」

「実力?」

「あたち、天才祓い師って呼ばれていたのよ」


 私に滅せないものはない。


 前世では、そう自負していたし、そう認められていた。


 私は手で印を結ぶ。


 久しぶりの感覚だ。


 前世では祓い方をいくつも試し、考案し、訓練し……祓い師への道を歩んだものだ。


 最終的に、某制服姿の戦士の技が私に一番しっくりと来た。


 前世で天才祓い師と謳われた私の実力、見せてやんよ!


「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前、滅ちゃれやがれ!」


 まぁ、若干恥ずかしい。だが、これが効くから仕方ない。


 次の瞬間青白い炎が上がり、悪霊達を包み込む。


―――――ギャァァァァァッ!


 悲鳴を上げた悪霊達は、最初の内は苦悶の表情に歪んでいた。だが次第にその表情はやわらぎ、光に包まれると、消えていった。


 私は、ふぅと息をつくとリヤンにどや顔を向けた。


「どんなもんだい」

「嘘だろ……お前、何者だよ」


 何者か。と問われるとどう答えたらいいのだろうか。


 とりあえず名前を名乗ろうと、私は胸を張って言った。


「あたちの名前は、トトレット……うぅぅ。違う。トト! あぁもう! むきぃ!」


 うまくココというのが発音できなくて地団太を踏むと、リヤンが笑った。


「ははは。トトか。変わった名前だな。それで? さっきのなんだよ」


 私の先ほどのポーズの真似をしながらそう呟くリヤン。


 得体が知れない存在なのにもかかわらず、こちらに敵意を向ける様子もない。


 自分で言うのもなんだが、前世では負けなしの超一流祓い師として活躍していた。


 貞男だって、着信なしだってなんでもどんとこいだった。


 近畿地方の南の方だって行ったことがある。


 でも私が滅するのは、悪霊や人に危害を加える存在だけである。


 大抵の幽霊とは対話しそして無念を晴らすことで天へと送っていた。


 私が見たところ、リヤンはただの幽霊だ。


 悪霊というわけではない。


 それなのにもかかわらず、得体が知れない恐ろしさが、ある。


 その時、視界がぐらつき、世界がぐるぐると回るような感覚に陥り、私は膝をついた。


「ぇ? なんだろ……ふぇ?」


 そのまま倒れ込み、天井を見つめる。


 天井がぐるぐると回り続けている。


 次の瞬間、突然、頭が締め付けられるように痛みはじめ、全身には悪寒が走っていく。


体温が一気に上がっていくのを感じる。


「うぅぅぅ。うぉぉぉぉ! なんこれ! しゃ、しゃむい! しゃむい! これはやヴぁあい!……はぁ、はぁ、はぁ」


 私がのたうち回る様子に、リヤンは珍妙な物を見つめるような視線を向けてきた。


「おかしな奴だな」


 自分でもおかしな状況になっているのは分かる。


「うう……うぐ、うぐぅぅ……うぉぉぉじぬぬぬうううう」


 これは、あれだ。器と能力との不一致。


 私の体はまだ三歳の器。そこに前世で鍛え上げた霊力が前世を思い出すと同時に解放され、器に対して霊力があり余り過ぎた状況なのだ。


 つまり、体が拒絶反応を起こしているのだと思う。


「ううううう。くるじぃ。うぅぅ。うえぇぇ……じぬじぬじぬ!」


 涙が溢れてくる。


 ここで死ぬのだろうか。


 痛みから涙やら鼻水やらが混ざり合い、私は喚き声をあげた。


「いやだぁ……ひとりで、ちにたくない……」


 そう。私は、一人で死にたくない。


 前世でどうやって自分が死んだのかは分からない。けれど、おそらく孤独で死んだ。


 誰にも見てもらえず、ただ、一人で死んだ。


 その感覚だけは残っていて、それが怖くて怖くて仕方がないのだ。


 私が叫ぶようにそう言うと、リヤンがにっと笑みを浮かべた。


「なら、そのわけわからない力、俺が喰ってやるよ」


 天使のような微笑みで、悪魔のような提案だった。


「……え?」


「ははは。まぁ……全部喰っちまうかもしれねぇけどな」


 それは死ぬということでは?


 霊力は魂の根源だ。つまり、全部喰われれば死ぬ。


 唇が弧を描いた次の瞬間、黒い何かがわたしを包み込んだ。


 それは今までに対峙たことのない程の巨大な闇。


 私の中に溢れて体に悲鳴を上げさせていた霊力が、少しずつ喰われていく。


 まるで氷をかみ砕くようなその音に、背筋が寒くなった。


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