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呪い子ちびっこ令嬢は王家に囲われルート驀進中!  作者: かのん


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33話

 そう告げた瞬間、一瞬の間があく。


「……え? 死者……それは……つまり……」


「あたちには……ロード神父様に寄り添う、コポル神父様が、見えるのでしゅ」


「……父が? 私の……傍に?」


 ロード神父様は困惑していた。


「人は死んだならば天に召されるはずです。死者の魂は地上にはとどまらず……天へ召される。それが……この世界の理でございます」


 困惑したままそう告げてくるロード神父様に、私は言った。


「お父様から伝言れしゅ」


「……父……が?」


「“自分の夢を大切にしなさい。私は、お前のおかげで、父になるという幸せな夢を叶えてもらった。ここからは、お前の生きたい人生を、どうか、どうか送っておくれ”」


 その言葉に、ロード神父の目は揺れ、そして大粒の涙が、流れ落ちていく。


「え? ……本当に、本当に、父が? 父からの、言葉なのですか?」


 信じたい。


 けれど、そんなわけがない。


 けれど……。


 そんな思いが、ロード神父様の中で交錯しているかのようだった。


 そして、ロード神父様は、唇を震わせながら、信じる道を選んだ。


「父に、父にお願いします。伝えてください。ごめんなさいと。ごめんなさい、許してください。私が、私がいたから、私のせいで、父は神父の道を歩み続けられなかった」


 ボロボロと泣き崩れるロード神父様の手を、ぎゅっと握る。


「コポル神父様も、泣いてましゅ。“お前を愛している。だから、どうか、責めないで。お前の幸せが、私の幸せなのだから”って、言ってましゅ」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁ。神よ。神よ。あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。父さん……許してくれて……いたのですね。あぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 その場に泣き崩れるロード神父様の背中を、コポル神父様が優しく撫でる。


 私はそれをじっと見つめ、そしてコポル神父様の言葉を聞く。


『どうか、この子に、無理に神父を続ける必要はないと、伝えてください。この子の小さい時の夢は、学校の先生だったんだ。自分の夢を、自分のために、どうか叶えてほしい。私の夢の代わりに神父になる必要なんて、ないんだ……よかった。この子が、罪を犯す前に、君に出会ってくれて。ありがとう。本当に、ありがとう』


 きっとずっとロード神父様のことを案じていたのだろうな。


 私は素敵な親子だなと思いながらうなずいた。


「ロード神父様にお伝えしましゅ」


『ありがとう。では、光の向こうへ行くよ。本当に、ありがとう。君に神の祝福があらんことを』


 キラキラと光る向こうへと、コポル神父様が消えた瞬間、先ほどまで、手を置いていた肩口に、ロード神父様が自分の手を当てた。


「父は……行ってしまったのですね」


 私はうなずく。


「自分の夢をどうか叶えてほしいって、先生になるのが、ロード神父様の夢だったのでしょうって」


 ロード神父様は、ふふふっと笑みをこぼした。


「よく、覚えていたなぁ……言ったのは、一回だけだったのに……」


 懐かしむように、そう呟くと、ロード神父様は涙などをハンカチで拭った。


 そして、私の方を向き直ると、頭を下げる。


「ココレット様……本当に、ありがとうございます」


「信じて、いただけまちたか?」


「はい。父が亡くなったのは、もうかなり昔のことで、それを三歳の貴方が調べるなんてことは、到底無理でしょうから……それに……父のぬくもりを、感じました」


 すっきりとした顔でロード神父様はそう言うと姿勢を正した。


 そして真面目な顔で、口を開く。


「ココレット様、死者が見えることを誰かに言ったことはありますか?」


「ふぇーっと、リヤン、私の執事は知っていましゅ」


「その方は信頼のおける方で?」


「もちろんれしゅ」


 すると、うなずき、ロード神父様は口を開いた。


「呪い子の能力が、そもそも履き違えられていたということですね。……ココレット様、先ほど、御神体のことを聞かれましたが、それはなぜです?」


 いきなりぐいぐい聞いてくるロード神父様に、私は答えた。


「協力してくれるなら、話しましゅ」


「協力します。貴方には恩があります。ぜひ、恩を返させていただきたい」


 前のめりなロード神父様に、私は少し引く。


 瞳がキラキラとしている。


 そんなロード神父様に、告げるのが忍びない。


「あの御神体、恨みつらみ妬みの集合体みたいなもので……悪霊……つまり、悪に染まった悪い死者を集めるものなんれしゅ。あれを祓い清めないと……危ない。ミーナが祝福したため、今、危険な状況なんでしゅ」


 なんだか、言葉にするとすごく、あれだ。


 うさんくさい。


 そうだというのに、ロード神父様の瞳のきらめきは消えない。


「御神体に祝福をしてはいかなったなんて……わかりました。その悪霊を祓うために、必要な物があるのですね。まかせてください。ご協力いたします!」


「おっふ……圧がしゅごい」


「ココレット様は私の恩人様。なんでもいたします」


「……たすかりましゅ。けど圧がすごい」


 助かるのだけれど、そのキラキラとした瞳を閉まってほしい!


 私、大したことしていないのに!


 信じてほしかっただけなのに、恩とか、そんなのないんです。


 ただ……協力してほしいことがたくさんあるので、そうは言えない私であった。

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