僕は目覚まし係です
大好きな隼くんと、もっと一緒にいたい雪。
隼くんが学校に行ってしまうと淋しい、そんな雪は考えた隼くんともっと仲良くなるために、友達になろう!
お母さんの焼く『玉子焼き』の香りに誘われてキッチンへと行くと、お母さんと目があった。
「雪、きょうも早起きね」
そう言いながらも手を止めずに朝ご飯の準備をしている、お母さん。
隼くんは、まだ起きていないのか姿は見えなかった。
僕がお母さんを見上げると、目尻をさげて頭を撫でてくれた。
「雪は、お母さんの考えている事が分かるのかな?それでは……ゆきにお願いします、お兄ちゃんを起こしてきてくれるかな?」
僕は、まかせてと頷くと隼くんの部屋へと向かった。
ベッドの上の布団が規則的にゆるやかに上下に動いている。
まだ夢の中にいる隼くんを起こすにはコツがある事を僕は知っている。
隼くんの部屋のドアを全開にすると、僕は助走をつけ全力で隼くんに向かってダイブする。
グアッッッ
声にならない唸り声を出した隼くんは、僕に気付くと涙目で、雪もう少し優しく起こしてと言う。
そんな隼くんを見ても、僕はこの起こしかた以外は意味がないと知っているんだ。
この起こしかたが、すぐに起きて僕を隼くんの瞳に映してくれるって知ってからは、僕はこの起こしかた以外はしないと決めた。
僕が隼くんのベッドに座っていると、隼くんは制服へと着替えながら目を細めた。
「雪も大きくなったから、全力でダイブされると大変だw」
そうは言っても、嫌がっている感じはしないから次からも僕は同じ方法で起こすね。
「……ドヤ顔の雪も可愛いけどね」
準備を終えた隼くんは、『雪』ご飯を食べに行こうと言った。
僕たちが階段を降りると、お母さんが暖かいうちに食べちゃってと言いながら忙しそうにしている。
そして僕の近くにくると、雪はお兄ちゃを起こす天才ねと笑っていた。
食事が終わって、洗面室で支度をしている隼くんを見えていると鏡越しに目があった。
にこりと笑ってくれたけど、あっと言う間に家から出ていってしまう。
高校生になった隼くんは、部活の朝練があるから今までよりも早く家を出ることになったのが寂しくて仕方ない。
いってきます
僕は、この言葉が嫌いだ……
この言葉の後、隼くんはしばらく帰ってこない……
小学校の頃は、たくさん一緒にいれた。
中学校の時は、今よりはたくさん遊んでくれた。
高校は、部活があるし友達と遊んで来るから帰りが遅いのよと、お母さんは言う。
大丈夫、ちゃんと帰ってくるよ。
お母さんが、僕を慰めようとしているのは分かるけど。
でも、ぼくは凄く淋しい……
僕たちが家族になった、あの日。
凄く嬉しくて、このままずっとこの楽しさが続けばいいと願ってた。
隼くんは、家族より友達の方が好きなのかな……
そんな僕の寂しくて気持ちを察してくれたのか、僕が1番かわいく見える洋服を用意してニコニコな笑顔を向けた、お母さんが口を開く。
「雪!おでかけしよう!」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。