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第69話「海③」

 ひかりんの「温泉!」の一声で、みんな一斉に立ち上がった。


 わたしたちは浴衣に着替え、館内の廊下をペタペタ歩く。足元には畳の感触、どこからか漂う硫黄の香りが鼻をくすぐる。


「しおりん、帯の位置ずれてるよ」


 かおりんが後ろからトントン直してくれる。顔が近い。……やばい、なんかドキドキして赤くなる。


「はい、正しい姿勢で!」


 そう言って、かおりんはわたしの背中をピンと押す。


「座道部は温泉でも姿勢キープ!」とニヤニヤ。

 いや、温泉はリラックスするところだってば。



 脱衣所の扉を開けると、ほわっと湯気が広がった。

 籐のカゴに浴衣を入れ、髪をまとめる。鏡越しに、かおりんが髪を高い位置で結い直している姿が見える。後ろ首のラインが白くて、思わず目が釘付けになる。


 (昔に比べたら大きくなったけど、おしりもかわいい。)


「しおりん、見すぎ」

「み、見てない!」


 かおりんの頬がふくれるが、その顔もかわいい。


「わたしも見る。じ――――――ほうほう」


 奈々りんはスポーティな動きでサッと浴衣を脱ぎ、タオルを肩に掛ける。その自然体が妙に色っぽい。


 ゆはりんは恥ずかしそうに、タオルを大きい胸から下にぎゅっと巻いている。その仕草が反則級にかわいい。


 ひかりんはと言えば、「さ、全員いくわよ!」と、身体をまったく隠さずに、リーダー感全開でタオルを翻す。ジャングル。



 温泉の湯面は、オレンジ色の間接照明を反射してキラキラしている。

 窓の外には波の音。…まるで海とお風呂がひとつになっているみたい。


「はぁぁ~~~……」


 肩まで浸かると、体中の力が一気に抜けた。潮風が頬を撫でて、心まで溶けそうになる。


 隣に座ったゆはりんが、ぽすっと肩にもたれてきた。


「しおりん、あったかいね……」


 う、近い。頬にかかる髪の香りと、温泉の香りが混ざって、妙に胸がくすぐったい。湯面からは良く見えないお胸も大きいし、柔らかそう。先端は、すこし埋もれて……


「しおりん、肩凝ってる?」

と、ちっちゃい手で肩をモミモミ。…う、柔らかい指が! 理性、落ち着け!


「こら、ゆはりん! 座道部は温泉でも姿勢を――」

と、かおりんがふくれっ面のまま桶でパシャっとお湯をかけてくる。


「ひゃっ! 冷たい!」


 奈々りんが驚いて立ち上がると、スポーツ雑誌みたいなシルエットが一瞬だけ湯けむりの中に浮かび上がった。


「かおりん! 反撃だ!」


 奈々りんがかおりんにお湯をかけ返すと、二人でバシャバシャ合戦に突入。


 ひかりんはというと、湯船の端で優雅に半身浴をしながら、スマホを防水ケースに入れて「この光景、最高のインスタ映えだわ」とカシャカシャ撮っている。



 結局、温泉はまるでプールみたいに遊び場になってしまい、のぼせるまで笑いっぱなしだった。

 湯上がりには、脱衣所でみんな冷たい牛乳を一気飲み。


「ぷはー! これぞ日本の夜!」


 かおりんが腰に手を当てて言うと、全員大爆笑。

 夜風が廊下を抜けて、火照った肌に心地よい。


 そのあと和室に戻ると、ゆはりんが「しおりんの隣がいい」と言って布団を並べてくる。

 ああ、今夜は眠れそうにない。

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